温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

野沢温泉 十王堂の湯

2013年03月16日 | 長野県

伝統的な湯屋建築が多い野沢温泉の外湯にあって、「十王堂の湯」はまるで機械室か変電所を思わせるような、温泉風情の欠ける無機質で装飾性の無い外観をしていますが、その見た目とは裏腹に、そこで入れるお湯のクオリティは温泉ファンの間でも定評があります。


 
目の前には入母屋で銅葺き屋根の閻魔堂が建っています。閻魔などを対象にする十王信仰が「十王堂の湯」の名前の由来になったことは言わずもがなですが、扁額に揮毫された「勧善懲悪」の文字、そして堂内に鎮座する十王像の面々を目にしますと、子供の頃に見た血と炎で真っ赤に染まる地獄絵図が思い出され、畏怖のあまりに否応なく背筋がピンとしてしまいます。閻魔様、私の毎日は愚行や頓狂の繰り返しですが、認識に過ちがなければ人様を貶めるような蛮行は働いておりませんので、どうか没後のお裁きでは穏便にお取り計らい願いますよう…なんてね。


 
話を浴場の方へ戻しましょう。建物の1階には、野沢温泉おなじみの洗濯湯が。


 
洗濯湯のみならず、上画像のように温泉卵をつくるための槽があったり、組合員専用のお湯汲み場があったりと、入浴だけではなく生活のいろんなシーンで温泉と密着している、野沢のバラエティに富んだ温泉文化が、この一棟には凝縮されているのでした。


 
浴室は男女で階層が分かれており、男湯は階段を上がった2階。
中が見えない入口ドアを開ける時は、先客がどんな方か、混雑してるのか、外来者は断られてしまうのではないか、などこれまでの経験に基づいていろんな事態を想像してしまうため、どうしても緊張を強いられますね(これって小心者の私だけ?。



浴室は脱衣所と一体化している、いかにも共同浴場的なレイアウトですが、野沢の他の共同浴場と較べて、はるかに広い室内空間が確保されており、また天井も高くて大きな湯気抜きも設けられているため、冬でも湯気がこもりにくくて快適です。ただ、脱衣スペースと洗い場や浴槽が近接しており、脱衣スペースと洗い場の床を隔てる段も低いために、洗い場で乱暴に掛け湯する人がいる場合などは、どうしても脱衣スペースにまで飛沫が届いてしまう傾向にあるようです。
なお洗い場には湯と水が出るカランのペアが4組並んでいました。



野沢の外湯に標準装備されている湯もみ板。その背景には湯仲間一覧の一部が写っていますね。



お湯の清らかさを際立たせている明るい水色の槽内タイルと、引き締まった印象を与える黒い石材の縁が、明瞭なコントラストを生み出している浴槽。湯仲間の皆さんのご尽力により綺麗な状態が保たれていました。6~7人は同時に入れそうな容量です。


 
木組みの湯口から吐き出された激熱のお湯は、一旦直下のパイプに落とされてから浴槽へと流れてゆきます。その投入量は多く、浴槽の四隅からふんだんにオーバーフローしており、槽内のお湯は非常に新鮮な状態でした。なお源泉を注ぎっぱなしでは湯船が熱くなりすぎてしまうため、お湯を浴槽外へ逃すためのVU管が立てかけられていましたが、私の訪問時には使われていませんでした。

お湯は無色澄明で、真湯ほどではありませんが黒い羽根状の湯の華がたくさん浮遊しており、湯口直下の浴槽底は若干黒ずんでいます。湯口に置かれたコップで飲んでみますと、喉にこびりつくような苦味が少々と熱を通し過ぎたような茹で卵の味、芒硝味、そして微かな塩味が感じられました。また臭覚面では、茹でタマゴの卵黄臭(これまた茹で過ぎたような感あり)に焦げたようなゴム臭を嗅ぎ取ることができました。お湯の中に体を沈めてみると、肌にしっとりと馴染むような感覚と、それほど明瞭ではないもののスベスベとした浴感が得られ、お湯の鮮度も相俟ってとても気持ちよく湯浴みでき、体が茹で上がって出ようと思っても、お湯の気持ち良さから離れたくないという心情が後ろ髪を引っ張って、湯船から上がることを躊躇ってしまうほどでした。
お湯は清らかで硫黄感もはっきり出ており、お風呂自体も広くて綺麗。温泉ファンの皆さんが高評価するのも頷ける一湯ですね。


十王堂の湯(受湯槽)
単純硫黄温泉 72.7℃ pH8.6 溶存物質900mg/kg 成分総計902mg/kg
Na+:181.5mg(69.09mval%), Ca++:64.7mg(28.28mval%),
Cl-:76.5mg(18.64mval%), HS-:14.2mg(3.71mval%), SO4--:380.3mg(68.33mval%),
H2SiO3:113.0mg, H2S:0.4mg,
(平成19年6月29日)

JR飯山線・戸狩野沢温泉駅よりのざわ温泉交通の野沢温泉行路線バスで野沢温泉バス停下車
長野県下高井郡野沢温泉村
野沢温泉観光協会ホームページ
(バスの時刻表も観光協会のHPを参照のこと)

4月~11月→5:00~23:00、12月~3月→6:00~23:00
寸志
貴重品用ロッカーあり(100円リターン式)、他備品類なし

私の好み:★★★
コメント
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