前回に引き続き野沢温泉の外湯を巡ります。今回は秋葉地区の共同浴場「秋葉の湯」。実にわかりやすいストレートなネーミングですね。地区内の秋葉神社がその地名の由来であることに間違いは無く、秋葉神社といえば全国共通で火除けの神様でありますが、そんな神様の名誉を毀損してはならないという配慮が働いたのか、パッと見は破風の屋根が典型的和風建築を思わせますが、実際のところ、伝統的な湯屋建築が多い野沢の外湯にあっては少数派のコンクリ造(ALCかな)となっており、もしかしたらこれによって難燃性を図っているのかもしれません。ま、秋葉神社と湯屋の建築方法を無理やり関連付けようとする私の愚かな深読みなので、どうかこんな愚考を真に受けませんよう…。
勢至菩薩が見守る玄関に括り付けられた寸志箱に気持ちを納めて中に入ると、内部で男女別浴室の入口が分かれていました。木板に筆書きされた分析表はてっきり骨董品クラスの古いものかと思いきや、日付を見たら昭和50年のものですから、まだ不惑にもいってません。
野沢の外湯は、脱衣室と浴室が一体化している昔ながらの構造が多いのですが、こちらはそんな伝統様式を採用しておらず、一般的な公衆浴場のようにガラスサッシによって両室をセパレートされていました。
タイル張りの浴室は4人サイズの浴槽がひとつあるだけの至ってシンプルなスタイルで、洗い場に用意されている桶の数が妙に多くて不思議です。水栓関係は水道の蛇口が3つあるだけですから、掛け湯などをする場合は桶で湯船のお湯を汲むことになります。
四角い浴槽に注がれる源泉は大釜から引いているもので、薄っすらと貝汁濁りを帯びているようにも見えますがほぼ無色透明と言って差し支えなく、トロミのあるお湯からはキシキシとした浴感が得られ、湯中では白灰色の綿屑のような湯の華が浮遊していました。また芒硝の知覚がはっきりと現れており、軟式テニスボールのようなゴム的硫黄臭も感じられました。なお、館内表示によれば、お湯の濃度を希釈させないよう、温度調整に際しては単に加水するのではなく、冷たい温泉を水の代わりに用いているんだそうです。そんな面倒な方法を採用してまでお湯のクオリティを維持しようとする湯仲間の皆さんの心意気には敬服するばかりですね。ありがとうございます。
建物の外観といい内部の造りといい、野沢の他の外湯に比べるとやや風情に欠ける実用的な佇まいですが、それゆえに地元の生活感に触れることができ、しかも湯使いにこだわった温泉が提供されているのですから、そんなお風呂を外来者にも開放してくださっている地元の方には感謝の気持ちでいっぱいです。スキーシーズンなどの混雑時にはお湯が鈍ってしまうことがありますので、タイミングを見計らってお湯の状態の良い時に利用したいものですね。
大釜
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 83.2℃ pH8.7 溶存物質1029.7mg/kg 成分総計1029.9mg/kg
Na+:198.2mg(64.23mval%), Ca++:88.5mg(32.94mval%),
Cl-:88.3mg(18.18mval%), HS-:8.8mg(1.97mval%), SO4--:487.3mg(74.08mval%),
H2SiO3:114.4mg, H2S:0.2mg,
熱い温泉に冷たい温泉を水の代わりに使用
JR飯山線・戸狩野沢温泉駅よりのざわ温泉交通の野沢温泉行路線バスで野沢温泉下車、徒歩1分
(野沢温泉バス停ではなく、その次の真湯(終点)で下車すると便利)
長野県下高井郡野沢温泉村
野沢温泉観光協会ホームページ
(バスの時刻表も観光協会のHPを参照のこと)
4月~11月→5:00~23:00、12月~3月→6:00~23:00
寸志
貴重品用ロッカーあり(100円リターン式)、他備品類なし
私の好み:★★