誤解を解くのは難しい。
11月の末に風邪にやられ、鼻をかみすぎて鼻血が出やすくなった。これは20代の頃に大量服用した薬の副作用で、毛細血管がもろくなっているためなので、致し方ないと諦めている。
根本的には、風邪を治すことが先決だとの医者の言い分は、まったくもってその通りだと思う。風邪薬を多用するよりも、暖かくして寝るのが一番だと言われれば、たしかにそうだと思う。
しかし、師走の時期は忙しい。ゆっくりと風邪を治している余裕は無い。動き回らねば、財布の中身が軽くなるばかりなのだ。
そんな訳で、風邪は治りかけたり、再び発熱したりと忙しなく、小康状態が続き完治とは程遠い。おかげで鼻血も週に3回は出る始末である。まァ、大人しくしていれば治るので、あまり気にしないようにしている。
でも、鼻血を出すにも場所と状況を考えないと、とんでもない誤解を生む。
先月末のことだが、某繁華街で夜の蝶を侍らせたお店を経営するママさんから連絡があった。ママさんの誕生日に駆けつける予定であったが、どうしても仕事を抜けられず花を贈っておいたが、それではご不満な様子。
致し方なく、週末の夜、ママさんを連れて某高級焼肉店に行く羽目になった。この店はチェーン店ではあるが、肉の質は常にレベルが高く、お値段もそれなりだが満足のいく内容であった。
胸元が大きく開いたドレスをまとったママさんは、同世代とは思えないほど若々しい。後が怖いので手を出す気にはなれないが、目の保養になることは間違いない。
さて、一通り焼肉を食べて、締めにクッパを頂いているときだ。ふと気がつくとテーブルに赤い血痕が・・・ありゃりゃ、またも鼻血が出てしまった。
慌ててティッシュを鼻に詰めて止血する。我ながら手馴れたものである。服を汚さずに済んで良かったと安堵していると、向かいの席のママさんの目線が険しい。
「まァ、センセイ、ずいぶんとお溜まりですのね・・・お若いですわ」
あやうく吹き出しそうになった。ち、違う~~~
しどろもどろで、風邪のせいで鼻をかみすぎ、そのため鼻血が出やすくなった事情を説明するが、どうみても聞いていない。
その後、ママさんのお店で飲んだのだが、どうも若いホステスさんたちの目線が気になる。なんか、警戒されている気がする。この手の話は、あっというまに広まるので、きっと聞いているに違いない。
説明すればするほど言い訳めいた気がするので、黙ってグラスを傾けることにする。どうせ、薄い水割りだと思っていたが、どうも悪酔いした気がする。
ああ、なんで福沢先生を何人も浪費して、こんな目に遇わねばならんのだ?
憮然とした気持ちで、夜の街を後にした。早く風邪を治そう、それに限る。それにしても、たかが鼻血でこんな目に遇うとは思わなかったぞ。
ヤレヤレ・・・