ヌマンタの書斎

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上場廃止の作法

2010-12-28 13:21:00 | 経済・金融・税制

経済界における今年最大のニュースの一つは、日本航空(JAL)の倒産であろう。

上場会社である以上に、国策会社でもあるJALが倒産するなんて、誰が予想したでしょう。いや、そう従業員も経営者も、そして株主も倒産なんかするわけないと思い込んでいたからこそ、抜本的な経営建て直しが出来ずに倒産に至ったのだと思います。

しかし平成22年2月20日に上場廃止となり、資本金の100%減資による会社更生手続きとなりました。

さて、上場廃止までにJAL株を売ってしまえれば、売却損が出せて、申告をしておけば3年間繰り越して、他の株の売却益と通算できます。

しかし、上場廃止時までJAL株を持っていた場合、100%減資により無価値となります。つまり株主大損!

それではあんまりだと云うので、今回は救済措置が設けられています。ただし、一定の条件があります。まず、JAL株が上場廃止前までに証券会社の特定口座に入っていること。そして、上場廃止前までに特定管理口座が開設されていることです。

この条件を満たしていれば、証券会社は「価値喪失株式に係る証明書」を発行してくれるので、これを添付して確定申告をすれば、このJAL株の損失額を「非上場株の譲渡損失」とみなしてくれます。その結果、平成22年中の他の株式の売却益と通算することができ、節税になります。ただし、三年間の繰越控除は適用できません。

実はこのような形で上場廃止株の損失が税制上、救済されるケースはあまり多くありません。私自身、仕事上で手がけたことはなく、多分今回が初めてになるはずです。

なにせ、JAL株の保有者はきわめて多いので、おそらく来年の確定申告時期になると、上記の証明書を実際に目にすることになりそうです。

もちろん、上場廃止になった株式は、これまでも幾つもありました。しかし、上記の「価値喪失株式に係る証明書」が発行されることは稀でした。

なぜかというと、証券会社に特定管理口座を設けるには少なからぬ費用がかかり、多くの破綻企業はその費用が払えず、株主は泣き寝入りで終わっていたからです。

今回、JALは数多の株主対策の意味もあって、金を捻出しての「特定管理口座」設置に至ったようですが、識者の話では、破綻企業のうち、ここまでやってくれるのは2割に満たないとか。

つまり8割がたの上場倒産企業の株式は、売り抜けた場合を除けばゴミ屑化しているわけです。株式を証券市場に上場させた企業は、かなりの経済的メリットを収受してきたわけですから、破産時に株主に迷惑をかける以上、ある程度積み立てておいて「特定管理口座」を設けられるように準備しておくべきではないでしょうか。

法人株主は、破綻株式を損失に落とせるから、株の法人の持合が主流だった過去は問題なかったのでしょう。でも、これまで個人株主は倒産会社の株はゴミ箱に捨てるしかなかった。本当に個人株主を重視しているのなら、この程度の準備は当然だと思うのですがね。でも、私の知る限り、特定管理口座のための準備をしている企業はないです。

企業による株式の持合をやめて、個人株主重視の意向を打ち出した企業は数多あります。でも破綻時の保険として、特定管理口座のための資金くらい、別口で設けておくべきではないでしょうかね。

今回、JALの破綻があって初めて、私は「価値喪失株式に係る証明書」の存在を知りました。こんなんで、いいのでしょうかねぇ・・・

コメント
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