ヌマンタの書斎

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木を観て森を観ず

2010-12-14 14:12:00 | 経済・金融・税制
時として素人は性質が悪い。

なにがって、民主党の税制改革プランのことだ。毎年12月になると、予算と合わせて税制改革論議が噴出してくるのだが、今年はちょっと性質が悪い。

まず驚かされたのが、繰越欠損金の算入制限だ。これは過去7年間に累積した赤字を、黒字の期に充当する制度である。7年の期間制限こそあるが、ようやく赤字を脱した企業にとってはありがたいというか、当然のものだ。この過去の赤字の使用に制限をかけたいという。弱い者いじめもいい加減にして欲しいものである。

そして、未だにバタバタしている配偶者控除に関する改正だ。いずれにせよ、子供手当ての支給のためだけに財源をひねくりだそうとした挙句のドタバタであることが透けて見えるから情けない。

私は配偶者控除及び扶養控除の見直しは必要だと思うが、それは子供手当てのためではない。まず控除額の中味の問題がある。これらの控除は、人的控除とも称され、人間が一年間で必要とされる最低限の支出を賄えるはずとの前提で作られたものだ。

で、考えて欲しい。配偶者控除にせよ扶養控除のせよ基本は38万円だ。一人頭38万円で一年間を過ごせと言うのか。これは基礎控除も同様な理屈である。ちなみに一月あたり3万1666円である。生活保護よりも低いぞ。

以前、税制委員会で議員から38万円の妥当性を問われた財務省は、この38万円に給与所得の控除額65万円を足した103万円が、国民が憲法で保障された健全な生活を営むに足りうる数字だと答弁したことがある。これなら一月あたり8万5833円であり、生活保護の一月当たりの最低補償額に等しくなる。

もっとも生活保護費は、その世帯の状況に応じて加算されるから、条件次第では月20万を越すこともあるようだ。いったい我が日本政府は、国民一人が生活するのに、いくら金がかかると考えているのか。

税法における人的控除の基本は、最低生活費にこそある。配偶者や扶養家族一人当たり年間38万円だと、何時まで強弁するつもりなのだろう。

本当に税制を抜本的に考えるのならば、この根幹から改めるべきだ。それを子供手当て支給のための方便で変えるなんざ、ふざけているにもほどが在る。いや、ふざけているわけではなく、善意の仮面を被っているからこそ性質が悪い。

私は難解とされる税法に、素人の発想や一般市民の思いが反映されることは、そう悪いことではないと考えている。税金は、国民一人一人に関係するものであり、それをお役所の一方的な考えだけで徴収されていいことだとは思わない。

だが、民主党の税に対する態度は、あまりに不謹慎だ。民主党が善人面するための資金ではないぞ、税金は。
コメント (1)
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