ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

夏の日のUFO

2010-05-21 12:26:00 | 日記
子供の頃、母に連れられて茨城の国民宿舎に泊まったことがある。

小奇麗な宿舎ではあったが、飾り気がなく、そっけない印象が強かった。もちろん、夏の海水浴に行ったわけで、太平洋の荒波が打ち寄せる海岸は、伊豆や房総の海に比べて荒々しかった。

そのせいか、あまり砂浜で泳いだ記憶がない。ただ、どうしても忘れ難い思い出がある。あれは宿舎に泊まった夜のことだった。

母と妹たちはTVの前でなにやらお喋りをしていたようだが、私は一人ベランダに出て暗い海を眺めていた。星空と海の境目辺りに漁船の誘魚灯がキラキラと煌き、飽きもせずに眺めていた時だ。

なぜか誰かに見られている気がして辺りを見渡すが、別になにもない。だが、上を見上げると数十メートル上空に、なにやら暗い塊が浮いていることに気がついた。

気がついた瞬間、背筋がゾッとした。

おそらくは数分間、凍りついたように上空を眺めていたと思う。互いににらみ合っているような緊張感が、私の動きを奪った。すると背後の窓扉が開いて、妹がジュースがあるよと声をかけてきた。

振り返って妹の手からジュースを受け取り、改めて空を見上げると、そこには星空が広がるばかり。

気のせいか?いや、たしかになにかがあったはずだ。

だが証拠はなにもなく、口にするのもはばかれた。暢気な私は、その後風呂に入り、さっぱりして寝てしまい、翌朝にはすっかり忘れていた。ところが思い出さざる得ないこととなった。

翌日は、少し南下して犬吠崎近くの民宿に泊まった。少しボロい宿だが、賑やかであり、また海も泳ぎやすく、楽しい夏の一日を過ごせた。

その夜、皆で花火をやり、松の防風林がまばらな夜の砂浜を散歩して、民宿に戻った。交替で風呂に入り、湯上りのほてった身体を冷ますため、部屋のベランダから夜空を眺めていると、突如として妙な飛行物体が目に飛び込んできた。

数百メートル離れていたと思うが、その飛び方が妙だった。直線に飛んだと思うと、ユラユラと彷徨い、再び高速で飛び去る。私の視界から消えたと思いきや、ふと上空を見上げると、いつのまにやら遥か頭上に浮遊している。

すぐに昨夜の暗い塊を思い出したが、こちらは光を放っていた。なによりも緊張感がなかった。根拠はまったくなかったが、なぜか私はこの物体は敵ではないと感じていた。むしろ、私を見守っている印象さえあった。

多分、時間にすれば数分だと思う。私には何が起きているのか、さっぱり分らなかったが、昨夜の暗い塊と無縁だとは思えなかった。

すぐ後ろの部屋の中には、妹たちがお喋りをしているのが聴こえた。現実と非現実の間に佇むが如き、奇妙な感覚に包まれた。昨夜の塊はともかく、その夜目にした飛行物体が、いわゆるUFO(未確認飛行物体)であることはすぐに分った。

でも、分らないものが存在していることが判明しただけで、なにがなんだか分らなかった。

だから、この日も私は黙り込んだ。理解できないものを無理やり分ったかのごとく振舞うのは私の趣味ではない。分らないからといって、別に困ることもないようだ。だから、ほっておくことにした。悩んでも無駄なことは、悩まない、考えないが私のポリシーだ。

あれから40年あまり。私の人生においては、怪奇現象とか不思議な体験はそう多くはない。UFOに関してならば、この夏の旅行のときだけだ。

写真などの証拠はないが、未だに忘れ難い思い出でもある。人間、生きていれば、分らないこと、不思議なことの一つや二つあってもおかしくない。きっと、誰の人生にもあることだと思う。

それにしても、あの二種類のUFO、いったいなんだったのだろう。想像を逞しくすれば、SF小説のネタになりそうなんですけどね。
コメント (6)
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