ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

プロレスってさ ロード・ウォーリアーズ

2010-05-18 14:22:00 | スポーツ
こんな奴らの傍で酒は飲みたくないな。

そう思わせるのが、映画「マッド・マックス」から抜け出してきたような異様なコスチュームを着込んだ危ない二人組、ロード・ウォーリアーズだった。

黒い革ジャケットに鋭いスパイクを埋め込み、顔面にはペイントで模様を描いて、口から舌をベーと出して観客を嘲る。観客のブーイングをものともせず、コスチュームを脱ぐと鍛え上げられた筋肉が観客を黙らせる。

試合が始まれば、殴るは蹴るはの大暴れ。巨体にもかかわらず動きは俊敏であり、ボディビルで鍛えた怪力で相手選手を持ち上げて投げ捨てる。リングのなかは、二人の暴れん坊がやりたい放題、好き放題。

二人が立ち去った後のリングは、台風が通り過ぎたが如きの惨状で、相手選手ばかりかレフリーまで倒れている有様だ。決してベビーファイス(善玉役)ではないが、それでも全米で絶大な人気を誇った二人組み、それがホークとアニマルのロード・ウォーリアーズだった。

私が一番印象に残っているのは、試合よりもインタビューであった。司会者から「子供たちから大人気ですね」と言われると、司会者をギロリと睨みつけ、TVに向かってホークがどすの効いた声で答えた。

「俺たちに憧れるのはイイ。でも、俺たちが育った環境には憧れるな、あそこはクソだ」

二人はボストンの下町で生まれ、スラム街で暴れていた幼馴染みだという。ボディビルのジムでスカウトされたことを契機にプロレス入りした変り種だ。

実際、プロレス技がどうのこうのというよりも喧嘩が強かった。弁の立つホークは試合ぶりもスマートだったが、私から見ると無口なアニマルの喧嘩巧者ぶりが印象的だった。

正直言って、アスリート(運動家)としては大いに疑問の残る二人であった。なにせ筋肉増強剤を使っていることを公言してはばからず、酒場での乱闘も隠す気もない。しかし、怪力と巨体に見合わぬ俊敏な動き、そしてなにより暴力の匂いが漂う危険な雰囲気は、プロレスラーとして屈指のものであった。

ただ、早く金を稼いで長閑に引退したいとぼやいていたことが、なによりも印象に残っている。スラム育ちの二人にとっては、プロレスは手っ取り早く金になる商売に過ぎず、余生を郊外で静かに暮らしたいと願っていたらしい。

このあたりは、典型的なアメリカ人だと思う。実際引退後にプロレス雑誌の記事で、閑静な郊外の庭で子供たちや友人を呼んでバーベキューをしている姿は、別人かと思えるくらい穏やかな表情をしていた。

プロレスラーとして活躍した期間は短かったが、その鮮烈な印象が強く記憶に残っている。まさに太く短くを地でいく暴れん坊であったと思う。
コメント (7)
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