ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

日本はアメリカの属国ではない ビル・トッテン

2010-05-20 12:17:00 | 
言葉というものは、使い方次第では怖い。

自由貿易の自由とは、強者が自らの欲望を自由に行使する意味での自由だ。決して誰もが自由に売り買い出来る自由ではない。

規制緩和とは、大企業が零細企業を守る規制を排除して、売りたい商品を大規模に売りさばくためにある。

そしてグローバリズムとは、多国籍企業がアメリカという覇権国の権威を利用して、その貪欲さを満たすための方便である。

アメリカは、かつては健全な中産階級に支えられた国であった。だが、古きよき時代は過ぎ去った。20世紀後半は、アメリカがよき働き手であった中産階級を切り捨て、人件費の安い国で製品を作らせ、それをアメリカに還流させて多額の利益を得る時代でもあった。

そのために規制緩和はなされ、自由貿易が推進され、グローバリズムは推し進められた。末端の労働者の数百倍の高収入を誇るCEOと、金のためだけに経営者を選ぶ株主により、アメリカは格差社会となった。

果たして、その経営戦略はアメリカを幸せにしたのだろうか?

例によってアメリカの後を追った日本の今の現状は、まさにそのとおりの惨状を呈している。勝ち組と称される品のない拝金亡者と、ワーキングプアと蔑まされる希望なき貧困者たちに二部されつつある。

それでも、まだ日本は労働格差はアメリカほどはひどくない。だが、若者が希望がもてない暗く陰鬱な未来しか見えてこないことも事実だ。

ごく一部の金持ちと大量の貧民で作られた社会が幸せなのだろうか。

アメリカで生まれ、日本で長く働く著者は疑問を呈さざる得なくなった。強者の貪欲さを満たすことを主たる役割としているアメリカ政府に疑問を抱き、そのアメリカに無自覚に追随する日本にも疑問を呈する。トッテン氏のようなアメリカ人は、きわめて珍しく、奇特といってもいいが、或る程度納得せざるえないのが悔しい。

今の日本は巧妙に仕組まれたアメリカの新・植民地ではないかとの見解は一読に値する。私も日本をアメリカの属国とみている。形式的には独立国であるが、中味は属国に過ぎない。だいたい、首都を外国の軍隊に包囲され、敵味方識別装置を外国から輸入して、しかも中味をいじれない独立国なんて茶番に過ぎない。

アメリカへの反感にそそられるが、それでも貿易立国である日本はアメリカに追随せざるえない。七つの海を支配するアメリカの軍事力が健在である限り、屈辱ではあってもアメリカの思惑に乗らざる得ない。

それが現実であり、他に選択肢があるとも思えない。

それでも、せめて現実を直視する勇気だけは持ちたい。今はアメリカに追随するしかないにせよ、日本が日本であり続けるためにも、今は屈辱に耐え忍び、その屈辱をおかしな自虐観や安易な反米に逃げる誤魔化しは避けるべきだ。

石原のように口先だけで反米を唱えるか、はたまた鳩ポッポように駄々をこねるのでは未来はないと思うね。
コメント (4)
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