ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

がきデカ 山上たつひこ

2010-05-27 12:35:00 | 
本心を偽るのは辛い。

今だから白状するが、この漫画を週刊少年チャンピオンで読んでいた頃は、それほど面白いとは思っていなかった。しかし、小学校のクラスでは人気の漫画であった。

有名な「死刑!」や「八丈島のキョン!」などの科白に、みんなで馬鹿笑いしていた。私ももちろん、その輪に加わっていた。内心の疑問なんて、口に出せるわけがなかった。

あれから30年あまり。久々に読んでみて、少し面白さが分った気がする。戦後のギャグ漫画の主流をなしていた赤塚系のギャグ漫画から大いに逸脱したものであることが、斬新な笑いを引き出したのだと思う。

こうして読んでみると、この漫画が筒井康隆の影響を強く受けていることが感じられる。だからこそ、革新的な印象が強かったのだと、今にして思う。

またスケベネタというか、微妙にHな場面をはめ込むことで、従来のギャク漫画の枠を超えたと評しても間違いではない。おそらくは、この漫画、成人もしくは青年の読者を前提にしたものだったのかもしれない。

しかし、掲載されたのは少年誌であるチャンピオンだった。子供相手である以上、抑制せねばならぬ苦しさもあったのだろう。おかしなことに、当時の子供たちは、その部分を微妙に感じ取り、そこを笑い飛ばすことで楽しんでいたと思う。

ただ、作者は辛かったのだろう。回を進めるごとに、マンネリを打破するための新機軸を打ち出すが、それが空回りしていることに気がつかざるえない。

やはりギャグ漫画家は長続きしない。山上たつひこは、いつしか漫画界を去り、小説の世界へと転進を目指した。私が山上氏に筒井康隆の影響を強く感じざる得ないのは、その当時の文章が亜流の筒井康隆に堕していたからだ。

近年、山上氏は再び漫画の世界に戻ってきている。大人になったこまわり君を描いていると聞いたことがある。はたして読むべきか、否か。私は迷っている。

子供の頃の無理に楽しんだ、楽しんでいるふりをした苦しさを忘れられないからだ。もう少し時間が欲しい。そうしたら、迷い彷徨い再び戻ってきた山上ギャグを賞味するからさ。
コメント (8)
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