生水を飲むな。
山をけっこう登っていた私だが、生水を飲む危険性は知っていた。一見綺麗な清流が実は大腸菌だらけであることは、決して珍しくない。その典型例が上高地の梓川だ。
北アルプスへの入り口であり、風光明媚な観光地でもある上高地を訪れたことがある人は多いと思う。そこを流れる見事な清流である梓川だが、実は絶対に生で飲んではいけない川でもある。
何故なら上流に下水の浄化設備が未整備の山小屋が複数あり、生活排水を含めると膨大な汚水が梓川に流れ込んでいるからだ。特に夏の時期は登山者も多く、必然的に生水御法度の川となる。
流れが速く、豊かな森の湧き水にあふれた日本の川は、一見清流に見えるが、動物の排せつ物なども多く、案外と衛生的には問題があることが多い。だからこそ山に登る前に安全な水場を探しておくことが重要となる。いや、真面目な話、安全に飲める水が沸く場所って、けっこう少ないのです。
私の経験だと樹林帯の中から流れ出す小さな沢の源流、綺麗な水底からボコボコと伏水流が湧き出てくるような水場の水は、柔らかくて美味しいです。とはいえ、このような水場は少ない。土手の斜面から流れ出る水場も比較的安全です。一方、岩だらけの沢筋の水は堅いし、美味しくない。上流に山小屋等がなければ、大腸菌なども少ないはずですが、野生の生き物の糞は十分ありそう。だからこそ湧き水が貴重な水場なのです。
あまり思い出したくもないのですが、安全な水場が少ない山域に入る場合、一人最低でも4リットルは水を持参します。場合によっては、15リットルの水容器を持参して交替で運んだこともあります。いや、水って本当に重いですぜ。
でも医療施設から時間的にも距離的にも遠い山では、安全な水は文字通り命の水です。時間があれば水を濾過して沸騰させて冷ませば良いのですが、かなり手間取るので、やはり下から持参する方が確実でした。
先々週のことですが、熊本は天草の川遊びに興じた子供たちが大量に体調不良を起こしたと報じていました。そのニュースを聞いた時、ほぼ水の衛生状態が悪化しているのだろうと想像しました。ただでさえ水質が悪化しやすい夏、しかもこの暑さですから大腸菌などが増殖する危険性は高いはず。
でも、見た目には綺麗な水の川だったのでしょうね。この暑さですから水遊びに興じたくなる気持ちは分かりますが、危険性も認識すべきだと思いますよ。
冬山は雪を融かして沸騰させるのでそれなりに安全性は担保されるのですが、夏はつい生水を口にしてお腹を下します。
逆に北海道は生水厳禁なので、必ず煮沸か浄水器を通すので安全かも...
でも、ナチュラルに4リットルは担ぐので地獄です。