ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

アイスランドの火山噴火に思うこと

2010-05-12 15:39:00 | 社会・政治・一般
私が好きな画家に、イギリスのJ・M・ウィリアム・ターナーがいる。

夏目漱石がロンドン留学中に眼にして、たいへん気に入り、後になって「坊ちゃん」でも作中で登場人物にターナーの描く夕日は素晴らしいなどと語らせている。

そう、たしかにターナーの描く夕日の絵は素晴らしく幻想的で、思わず見とれるほどに美しい。ターナー展が日本で開催された時、私は長期の入院中であったが、医者に外出許可を貰って観に行ったぐらいだ。

もっとも一人では不安だったので、平日が休みの同期のT嬢に付き添ってもらっての上野行きであった。正直、免疫力の落ちた身体で人ごみに出るのは怖かった。だから平日を選んだのだが、はやり混んでいた。健康な身体ならたいして広くない上野美術館なのだが、病み衰えた身体にはきつかった。

事実、病院に戻ってから数日間寝込んだぐらいだが、それでも後悔はしていない。ターナーの描いた美しい風景画は、それだけの価値はあったと思う。なかでも、やはり夕日を描いた作品が素晴らしかった。

だが、その美しさは大気中に拡散した火山灰のおかげである。当時、中米で噴火した火山から噴出した火山灰が大気圏に拡散していた。それゆえ、世界各地で気温の減少などの異常気象が起きていた。

火山の噴火は、大気圏内の二酸化炭素を増加させたが、それ以上に火山灰が太陽の日差しを遮ったことが地表の気温を下げた。18世紀の地球は、今よりもはるかに寒冷であったことを思うと、火山活動が地球の環境に与える影響の大きさは恐るべきものがある。

21世紀に入り今年の4月に、アイスランドの火山噴火により飛行機の飛行が妨げられて、世界経済に大きな影響を及ぼしているのはご承知のことだと思う。

果たして今回の噴火と火山灰が、どの程度地球環境に影響を及ぼすのか、現時点では不明だ。最新のスーパーコンピューターでさえ、地球規模の気温の変動をシュミレートするのは容易ではない。

ただ、一つ私に予想できることがある。きっと、ここ1~2年は夕日が美しいはずだ。大気中に拡散した火山灰が、太陽の光を微妙に反射して、美しい夕日を演出するであろう。

もっとも、その代償として寒冷化による農作物の不作が起るであろうことも想像できる。とても美しい夕日で賄えるものではあるまい。

もっとも、18世紀と比較して人間の産業活動による温室効果ガスの放出も相当にあるので、当時ほどの寒冷化が起るかどうかは不明だ。

いずれにせよ、火山一つの噴火で地球環境は大きく影響される。工場などから排出される温室効果ガスの比ではない。やはり自然の力はすごい。改めて、そう思います。
コメント (4)
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