東京新聞2012年9月6日 夕刊
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昨年三月十一日の東日本大震災と四日後に静岡県東部で起きたマグニチュード(M)6・4の地震によって、富士山のマグマだまりに噴火を引き起こしかねないほどの大きな圧力がかかったことが防災科学技術研究所(茨城県つくば市)などのチームの研究で六日、分かった。
圧力の高まりだけが噴火の要因ではなく、現在のところ、噴火の兆候は観測されていない。ただ富士山の直近の噴火である一七〇七年の宝永噴火で直前 の宝永地震により富士山に加わった力より、今回の力は強く、チームは「地震から数年たってから噴火する可能性もあり警戒が必要」としている。
チームは昨年三月の二つの地震で生じた地殻の変動をもとに、富士山の直下でマグマが滞留しているマグマだまりにかかった力を推定。マグマだまりの 中心が地下約十五キロにあると仮定した場合、二回の地震により最大で計約一・六メガパスカル(約一五・八気圧)の力がかかったとの結果を得た。
力の向きはマグマを上下に押しつぶす方向と、東西に引っ張る方向だった。静岡県東部の地震はマグマだまりの近くで起きたと推定されることから、大震災より影響は大きかったらしい。
富士山も含め、過去には〇・一~数メガパスカル程度の力で噴火した例もあるという。マグマだまりの状態が違うとみられるが、同研究所の藤田英輔主 任研究員は「一・六メガパスカルというのは小さくない」と指摘している。噴火に至っていない理由としては、十分な量のマグマがたまっていなかったことや、 マグマに含まれるガスが十分ではなかったことなどが考えられるという。
国は二〇〇四年、富士山噴火による経済的な被害は最大で約二兆五千億円に上るとの想定を報告。山が大きく崩れた場合、被災者数は約四十万人になるとの専門家試算もある。