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トランス酸

2007年02月25日 23時32分26秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)


上記はMOBAC SHOW2007(国際製パン製菓関連産業展)パンニュースより。
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トランス酸:米・NY市が飲食店に削減義務づけ 日本人への影響は?

 ◇体内での働き巡り誤解も

 ◇大きなリスクなさそう

 心臓病との関連が指摘され、米ニューヨーク市が飲食店を対象に 削減を義務づけたトランス型脂肪酸(トランス酸)への関心が高まっている。日本人の平均的な摂取量は欧米人に比べて少なく、大きな健康リスクにはなってい ないが、体内での働きを巡っては誤解もあるようだ。トランス酸はどのような食品に多く、どのようなことに注意すればいいのだろうか。【小島正美】

  トランス酸は不飽和脂肪酸の一種。植物油からマーガリンや洋菓子を作る時などに使われるショートニングを製造する際、水素を添加して半固体にするときに生 成される。これら半固体の油脂を部分水素添加油脂という。食用油の製造時に高温での脱臭過程でも生じるが、ごく微量だ。

 牛などの胃の中でも微生物の作用で生成され、牛乳やチーズなど乳製品や肉類にも含まれるが、量的にはわずか。日本人の主な摂取源はマーガリンなどを使った加工食品で、乳製品や肉類からの摂取は少ない。

 トランス酸については「体内で利用できない有害物質ではないか」との指摘もあるが、油脂の研究で知られる菅野道広・元熊本県立大学長は「飽和脂肪酸と同じように生体膜に取り込まれて利用され、蓄積することもない」とトランス酸自体が有害なわけではないと話す。

 しかし、飽和脂肪酸と同様に取り過ぎると悪玉コレステロールが増え、心筋梗塞(こうそく)など心臓病の死亡率が高くなるとの研究報告はある。このため、米国は総エネルギー摂取量のうちトランス酸の割合を1%未満に抑えるよう推奨している。

 米国政府が昨年1月から含有量の表示を義務づけたことから、ニューヨーク市は今年7月から飲食店を対象に1食あたり0・5グラム以下に抑えるよう規制する。

 ◆日本人の摂取は?

 内閣府・食品安全委員会によると、日本人の平均摂取量は1日あたり1・56グラムで、摂取エネルギーに占める割合も0・7%と米国の推奨値を下回る。これに対し、米国人は1日あたり約5~8グラム、エネルギー比で約2~3%も取っている。

 ◆どんな食品に多いか

 各種食品のトランス酸含有量を調べた日本食品油脂検査協会(東京)によると、ドーナツ、クロワッサン、クラッカーなどマーガリンやショートニングを多く使う食品の含有量が高い(表参照)。

 同じドーナツでも油脂の種類によって含有量に約30倍も差がある。外食チェーン店のドーナツでは1個(約50グラム)で日本人の平均量を上回る約2グラムという例もあり、ファストフードの揚げ物の取り過ぎは要注意だ。

  一方、トランス酸は脳や身体の発達・成長に必要なDHA(ドコサヘキサエン酸)やアラキドン酸の生成を減らすとの研究報告もある。菅野さんは「胎児や新生 児のことを考えると、妊婦は水素添加油脂を多く使った揚げ物やケーキ類の摂取を少なめにした方がよいかもしれない」と話す。

 ◆削減の効果は?

  油脂の摂取が多い欧米諸国と異なり、日本人の心臓病の年齢調整死亡率は80年代以降、減少している。油脂と健康問題に詳しい浜崎智仁・富山大学和漢医薬学 総合研究所教授は「日本人がトランス酸の摂取をさらに減らしても、心臓病の死亡率を下げる効果はほとんど期待できない。死亡率を下げたいなら、危険因子と して高い禁煙を普及させた方が効果的だ」ともっと重要な要因に目を向けることも必要だと指摘する。

 厚生労働省新開発食品保健対策室は「トランス酸が減っても、その分、飽和脂肪酸が増えれば心臓病のリスクは変わらない。欧米と違い、トランス酸だけの含有量を表示することに大きな意味はない」と表示には消極的だ。

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 ◇主な食品のトランス酸含有量◇

 (100グラムあたりの平均値)

食パン     0.52グラム

クロワッサン  2.8グラム

ロールパン   0.8グラム

ドーナツ    1.9グラム

クラッカー   1.4グラム

ポテトチップ  0.3グラム

ポテトスナック 0.4グラム

チーズ     1.78グラム

牛乳      0.15グラム

バター     3.3グラム

 ※注意=数値は品目によって大きな差がある。ドーナツの場合、含有量は100グラムあたり0.2~6.8グラムなどと大きな差があり、数値はあくまでも平均的な目安。

毎日新聞 2007年2月24日 東京朝刊