私は怖いと思われてる手術を良くお引き受けして、やらせていただいています。
例えば、このレントゲン写真のような親知らずの抜歯手術とかです。
このレントゲンで見ると、下顎の親知らずは太い神経に重なって写っていて、丁寧に抜歯したとしても、神経を傷付けたりして、痛み、痺れや麻痺などの後遺症を起こすかも知れません。
当然、普通の開業医は余り引き受けたくない、となるでしょう。
で、私が抜かせていただいて翌日が、次の写真です。
殆ど腫れないで済んでますし、お痛みもかなりなく、綺麗に治っています。
ありがたいことに、痺れや麻痺も出ませんでした。
こう言うことをブログとかで書くと、腕自慢をしてる、ひけらかしている、と取られることがままあります。
でも、私はとても怖がりで、自分の手術の腕を自分が一番信じてない、CT画像とかをとことん診て、頭の中でイメージして、こうやればかなりの確率で大丈夫なはずだ、と確信を持てるようにして施術に当たっています。
診療が終わるのが、うちは18時なのですが、スタッフがお疲れさまでした、と帰った後、一人CT室に籠り、一所懸命に見てるたら午前様になってしまう、なんてこともあるくらいです。
インプラント手術の時も、どうすれば最小限の手術で治せるか、をいつもいつも考えて悩んでいます。
良く手術の時間が短時間で、すぐに終わらせられるのを書いておられる方がいますが、本当にすごいな、絶対に真似できないな、と思います。
さる高名なインプラント外科医の先生から、治るのに確信を持てないなら手術するべきでない、と叱られたことがあります。
でも、私は手術すればするほど怖くなるし、心配が募り、これで絶対安心だ、と胸を張るようなことはありませんし、多分これからもない、と思います。
もしかしたら、私は外科医向きの性格ではないのかも知れません。
人の身体を治すためとは言え、傷付けるのは嫌だし、治りが悪くて悩むのも嫌です。
だから、慎重になる、事前準備をしっかりとする、しかないのです。
私が人並みよりも良い成績をあげられているとしたら、それは怖がりだから、と言えると思います。
多分、私も歳を取ったのだ、と思います。
還暦を迎える年齢になりましたし、本当に今回の症例のようなシビアな症例を引き受けられる気力、体力が後何年なんだろう、と思うことが増えて来ました。
難しい手術をお受けするには、技術、体力は元より精神力、気力が要る、と確信しています。
まだまだ頑張るぞ、と思う自分がいる反面、ではいつまでやれる?と自問してしまう弱気な私がいる、と言う状況なんです。
良く業界には、いつまでもお元気で、メスを振るわれる先生もおられますが、私自身は繊細で精密な手術ができるのには限界がある、と思っています。
眼が追い付かなくなり、指先が震えるなんてことになって来たら、手術はできないし、患者さんに失礼だ、と思ってしまいます。
老化には誰も勝てない、と言うことなんです。
弱気なことばかり書いて、不安を抱かせてしまうかも知れませんが、今はまだ不安を乗り越えて解決策を見つけ出し、何とか施術できる自信はあります。
その代わり、昔よりもしっかりと寝る、休みを取る、と言うようにしています。
あれほどショートスリーパーを自慢していた私ですが、今は7時間、8時間睡眠を心掛けています。
やはり睡眠ってとても大事ですね。
10年前は無理効かせられた身体が、今は疲れが残るようになったので、明日のために寝る、と変えるようになりました。
幸い10倍のライト付き拡大鏡と言う強い味方がいてくれますし、夜寝るように変えましたので、自分の納得いくレベルの手術を行えています。
自分の納得できない状況になってしまったら、その時は潔くメスは置きます。
あとは気力、ですね。
そこも何とか、豆腐メンタルなのですが、頑張ります。