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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

退屈な時間はなぜ時間が長く感じられるのか

2021年02月04日 | 日記

『意識的な行動の無意識的な理由―心理的ビジュアル百科 認知心理学編』(越智啓太編)からの転載です。

 

退屈な時間はなぜ時間が長く感じられるのか

 

感じられる時間の長さは、体験した事象や出来事の数の影響を受ける。概して、ある期間に事象や出来事が多く生じると、振り返ったときにはその期間は長く感じられる。このような時間についての判断は、内的なペースメーカーの進みまたは内的な情報の保持が、体験した事象や出来事の数および内容によって変化するというモデルで記述できる。1日の出来事が多いと、1日が長く感じられたりするのはこれで説明できるし、子どものときに1日が長く感じられるのも、体験した出来事が平均的に多かったと考えることで説明できる。

 同様の考え方は、もっと短い時間の長さに対する判断にも当てはまる。認知神経科学者の金井良太らは、点滅する視覚映像を見るときの時間の長さを判断する課題を行った。その結果、1秒以下の映像提示であっても、単位時間あたりの点滅回数が多いほうが、感じられる時間か長くなった。この効果は、点滅の周期が4~8ヘルツ(1秒あたりの繰り返し数)で飽和した。

 

感じられる時間の長さに影響を及ぼすのは、時間に対してどれぐらい内的に注意が向けられ、時間を意識したかという要因もある。概して、時間に対して注意を向けた回数が多いほうが、時間はより長く経過したと判断される。つまらないと思う時間では、早く終わらないかと時間に対して頻繁に意識を向ける。これもまた、感じられる時間を長くする要因として広く知られている。反対に、時間について意識を向けない場合、たとえば何かの作業に非常に没頭した時間は、後で振り返ると短く感じられる。さらには、時間を判断するときの感情などの、時間を判断する人の内的な状態も時間の判断に影響する。例えば、怒り表情の映像を提示すると、感じられる時間は長くなる。老人の顔を提示すると、若者の顔を提示した場合より感じられる時間は短くなる。これらは、覚醒度が上がると内的ペースメーカーの動作が早まったり、意識的に保持する情報の量が増えることで感じられる時間が長くなるという考え方と一致する。 時間を判断する脳の仕組みはどのようになっているのだろうか。概日リズムを制御する神経機構は、上で述べたように視交叉上核であるようだ。これとは対照的に、感じられる時間の長さ「だけ」を専門的に処理する脳の部位は今のところ見つかっていない。むしろ、視覚、触覚、聴覚などの個別の感覚処理に依存して時間の判断は変化することを示唆する研究が広く報告されている。             (光藤宏行)

 

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