『炎上CMでよみとくジェンダー論』(瀬地山角著)、著者は東大でジェンダー論を講義している先生です。興味深く読みました。また末尾付録で「広告の“炎上”史」を掲載されていて、これだけ読んでも興味深い本です。その炎上史からと、男性が侮辱されるCMでは、なぜ炎上しないのかという2点を転載してみます。
まずは本の広告コピーです。
SNSが発達した現代、「CM」と「炎上」は切っても切れない関係となった。とりわけジェンダーに対する無理解に端を発する炎上案件は数知れない。最近も日本赤十字社のポスターが炎上したばかりだ。
一方で、新しい人間や家族のかたちを描いて共感を抱かれた広告もいくつか存在する。両者をわかつものは何だったのだろうか? 東大で人気講義を開く社会学者が「CM」を切り口に語る、目から鱗のジェンダー論。(以上)
以下、炎上史では、54、炎上CMが取り上げられていますが、その中からの抜粋です。
1975年 ハウス食品/シャンメン
女性と女の子が踊りながら、「作ってあげよう シャンメン forユー」と踊ったあと、自らを指差し、「私、作る人」と言い、それを受けて、男性が「僕、食べる人」と言う。「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会」の抗議を受け、1ヵ月ほどでCMの放送は中止された。
1989年 三楽(現メルシャン)/ローリングK
馬に乗った数人の男性カウボーイが一人の女性を取り囲むというTVCMと、板の上に横たわる泥だらけの女性のポスターに対して、レイプを連想させるという抗議の声が上がった。ポスターは撤去され、TVCMも中止となった。
1997年 FUJI FILM/写ルンです
夏祭りの土手、男性が女性に「前から言おうと思っていたんだ」と自分が火星人であることを告白。すると、女性は「いいわ」「近頃私、地球の男に飽きたところ」と伝える。その後、「長男じゃないわよね」と確認する。このセリフに「長男では結婚しにくいのか」とクレームがついた。
2012年 味の素/企業CM『日本のお母さん』篇
あるお母さんの一日が、描かれる。朝、子どもたちの朝食と弁当の準備をし、子どもたちに朝食を食べさせている間に洗濯。3人乗りの自転車で保育所に駆け込み、あくびをしながら通勤をし、夕方、保育所にお迎えに行き、夕飯の支度をして……夕食にも父親は不在。家事育児は母親のものという性別役割の固定という批判が殺到した。
2018年 キリンビバレッジ/ツイッターキャンペーン「午後ティー女子」
周りにいそうな「午後ティー女子」をイラストで描き、自分の周りにいると思ったり、私だと思ったらRTしてほしいと、ツイッターでキャンペーンを展開。
しかし、そのイラストが「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」と、揶揄しているようにも受け止められる内容で、[バカにしている]「顧客を悪く描いて楽しいのか」と批判が噴出。同社は謝罪ツイードを出し、当該ツイードを削除した。
2019年 小学館/雑誌『Domani』駅中広告
誌面リニューアルにともない、東京メトロ表参進駅に広告を出稿。
巨大なポスターには、「今さらモテても迷惑なだけ。」「忙しくても、ママ感出していかない」「中途半端なイクメン気どりなら、むしろワンオペのほうが100倍楽。」「“ママに見えない”が最高の褒め言葉」「助手席じゃなく運転席の女でいたい。」「慟く女は、結局中身、オスである。」といった数々のキャッチコピーが並んだ。[古い!!]「女性を分断するだけ」と炎上。
2019年 トヨタ自動車/ツイッターキャンペーン
トヨタ自動車が自社の公式ツイッターにて、「女性ドライバーの皆さまへ質問です。やっぱり、クルマの運転って苦手ですか?」とアンケートを実施。選択肢は「とても苦手」「少し苦手」「どちらでもない」「得意です!」の4択だった。
回答する人も少なくなかったようだが、リフライ欄は「やっぱりって何?」「苦手選択肢が2つ? バカにしている]という批判の声が殺到。同社は謝罪し、当該ツイードを削除した。
(以上)
この本を読んで、CMを見るポイントが増えました。(つづく)
まずは本の広告コピーです。
SNSが発達した現代、「CM」と「炎上」は切っても切れない関係となった。とりわけジェンダーに対する無理解に端を発する炎上案件は数知れない。最近も日本赤十字社のポスターが炎上したばかりだ。
一方で、新しい人間や家族のかたちを描いて共感を抱かれた広告もいくつか存在する。両者をわかつものは何だったのだろうか? 東大で人気講義を開く社会学者が「CM」を切り口に語る、目から鱗のジェンダー論。(以上)
以下、炎上史では、54、炎上CMが取り上げられていますが、その中からの抜粋です。
1975年 ハウス食品/シャンメン
女性と女の子が踊りながら、「作ってあげよう シャンメン forユー」と踊ったあと、自らを指差し、「私、作る人」と言い、それを受けて、男性が「僕、食べる人」と言う。「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会」の抗議を受け、1ヵ月ほどでCMの放送は中止された。
1989年 三楽(現メルシャン)/ローリングK
馬に乗った数人の男性カウボーイが一人の女性を取り囲むというTVCMと、板の上に横たわる泥だらけの女性のポスターに対して、レイプを連想させるという抗議の声が上がった。ポスターは撤去され、TVCMも中止となった。
1997年 FUJI FILM/写ルンです
夏祭りの土手、男性が女性に「前から言おうと思っていたんだ」と自分が火星人であることを告白。すると、女性は「いいわ」「近頃私、地球の男に飽きたところ」と伝える。その後、「長男じゃないわよね」と確認する。このセリフに「長男では結婚しにくいのか」とクレームがついた。
2012年 味の素/企業CM『日本のお母さん』篇
あるお母さんの一日が、描かれる。朝、子どもたちの朝食と弁当の準備をし、子どもたちに朝食を食べさせている間に洗濯。3人乗りの自転車で保育所に駆け込み、あくびをしながら通勤をし、夕方、保育所にお迎えに行き、夕飯の支度をして……夕食にも父親は不在。家事育児は母親のものという性別役割の固定という批判が殺到した。
2018年 キリンビバレッジ/ツイッターキャンペーン「午後ティー女子」
周りにいそうな「午後ティー女子」をイラストで描き、自分の周りにいると思ったり、私だと思ったらRTしてほしいと、ツイッターでキャンペーンを展開。
しかし、そのイラストが「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」と、揶揄しているようにも受け止められる内容で、[バカにしている]「顧客を悪く描いて楽しいのか」と批判が噴出。同社は謝罪ツイードを出し、当該ツイードを削除した。
2019年 小学館/雑誌『Domani』駅中広告
誌面リニューアルにともない、東京メトロ表参進駅に広告を出稿。
巨大なポスターには、「今さらモテても迷惑なだけ。」「忙しくても、ママ感出していかない」「中途半端なイクメン気どりなら、むしろワンオペのほうが100倍楽。」「“ママに見えない”が最高の褒め言葉」「助手席じゃなく運転席の女でいたい。」「慟く女は、結局中身、オスである。」といった数々のキャッチコピーが並んだ。[古い!!]「女性を分断するだけ」と炎上。
2019年 トヨタ自動車/ツイッターキャンペーン
トヨタ自動車が自社の公式ツイッターにて、「女性ドライバーの皆さまへ質問です。やっぱり、クルマの運転って苦手ですか?」とアンケートを実施。選択肢は「とても苦手」「少し苦手」「どちらでもない」「得意です!」の4択だった。
回答する人も少なくなかったようだが、リフライ欄は「やっぱりって何?」「苦手選択肢が2つ? バカにしている]という批判の声が殺到。同社は謝罪し、当該ツイードを削除した。
(以上)
この本を読んで、CMを見るポイントが増えました。(つづく)
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