仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

親切の人類史②

2023年03月24日 | 現代の病理

『親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか』(2022/12/20・マイケル・E・マカロー著)のつづきです。

 

人間の「利他の心」の存在はどのように説明できるだろう? 一筋縄ではいかないこの問いに、進化生物学と慈善の歴史という観点から挑みかかる。
「利他行動」は生物学の難問の一つだ。ヒトをはじめ、他個体を利する行動をとる動物は実際に存在する。だがしかし、寛大にも他者を思いやる個体の遺伝子は、狡猾な個体に出し抜かれて繁殖機会を奪われ、淘汰されてしまうのでは? 生物学者たちはこのことにおおいに悩み、利他行動を説明できる理論を求めて奮闘してきた。
ただし、人間の利他の心は、生物学だけで完全に説明することはできない。社会福祉制度や慈善活動などの方法で、血縁や地域を超えた「完全な赤の他人」にまで援助の手を差し伸べる動物は人間以外にいないのだ。ここには、何か特別な説明が必要になる。著者によれば、一万年の人類史における「七つの大いなる苦難」を、人類がどう解決してきたかが説明のカギだという。

 

「だが何よりも、寛大さと利他主義にはなぜ学ぶだけの価値があるかという、理由を教えよう。孤児の時代、思いやりの時代、予防の時代、第一次貧困啓蒙時代、人道主義のビッグバン、第二次貧困啓蒙時代、成果の時代において、寛大さと利他主義が成果を収めた理由は、それらが最初に生じたときと変わらず、現代にもしっかりと通用する。思いやりは、わたしたちに感謝と栄誉を授ける。貧困と絶望の副作用からわたしたちを守る。経済を弱らせず、むしろ成長させる。人々に自分の人生への責任をもたせる。生きる意味や充実感をもたらす。それに、苦しみは道徳的関心に値すると考える人にとって、思いやりは義務だ。(後略)」)とある。

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