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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す②

2024年06月27日 | 現代の病理
『悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す』(2024/2/23・キャサリン・A・サンダーソン著)からの転載です。

社会的圧力と同調
1950年代のことです。社会的圧力が同調に及ぼす影響を実証した研究で知られる先駆的な心理学者ソロモン・アッシュは、「視覚的弁別」の研究と称して実験参加者を募集しました。実験参加者はターゲットとなる線分を見るように伝えられた後、他の3本の線分を見て、その中からターゲットと同じ長さの線分を回答するように求められました。これは、自分でやってみるとわかりますが、ほとんど間違えようがない簡単な課題です。
 アッシュは、間違った答えであることを知っていたとしても、集団に合わせて答えるのかに関心がありました。彼は実験参加者を募集して、男子大学生8人1組でこの課題を行いましたが、実際にはこのゲームのような課題に参加していた大学生は1人だけでした。他の実験参加者は全員実験協力者で、各自が大声で回答して、最後に実験参加者が回答するという内容でした。
 線分判断課題のほとんどの試行では、全員が正しく回答しました。ところが、いくつかの試行では、実験協力者全員が同じ間違った回答をするよう指示されていました。この状況を想像してみてください。最初の人が、明らかに間違った答えを言います。それが間違いなのは明白ですから、あなたは笑いそうになります。しかし、次の人も同じ間違いをして、その次の人も同じように答えました。こうなると、あなたは何を考えるでしょうか?
もっと重要なのは、あなたがどのように答えるのかです。
 研究の結果、実験参加者の3分の1以上(37%)が、集団の他のメンバーに同調して間違った回答を行うことがわかりました。実験参加者の半数は、少なくとも半分の試行で間違った回答を行いました。
 この知見で注目すべきは、実験参加者は他の人に合わせる必要性が特になかったことです。実験参加者同士の関係は、友人でもフラタサアイの兄弟たちでも、同僚でもありませんでした。見知らぬ者同士の関係なのに、同調しようとして間違いだと知っている回答を行ったのです。アッシュ自身、この結果に心を痛めました。彼は「私たちの社会では、合理的な知性と良識のある若者が白を黒と呼ぶことを厭わないほど、同調しようとする傾向が強いことがわかった」と述べており、さらに「これは懸念事項である」と記しています。(つづく)
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