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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

不便益のススメ③

2022年03月07日 | 現代の病理

『不便益のススメ: 新しいデザインを求めて 』③(2019/2/21・川上浩司著)の続きです。

 

不便益8種類の益

 

主体性が持てる①

  不便な物事は、主体的に何かをすることを許してくれるものが多いです。このこと、つまり「主体性が持てる」ということを、不便益の一つに数えます。

 

動機付け 

分業制で便利なライン生産方式と比べて、セルと呼ばれる場所で一人(または数人のチーム)で複雑な機械,を組み立てるセル生産方式は、不便です。でも先に述べたように軽自動車ぐらい一人で組み立てられるようになり、それが公道を走っているのを見ると、嬉しいでしょう。セルでの作業が動機付けられます。

 ある学生が、就職活動(以下、就活)のためだと言って新聞を取るのをやめました。下宿で寝てても配達され、料金は銀行引き落とし、という便利な方式をやめたのです。毎日コンビニに行ってキャッシュで買うという不便なやり方にしたところ、わざわざ買ったものは、たとえ100円ちょっとでももったいないので、新聞を読むようになり、時事に強くなったそうです。また時事用語も自然と覚え、文化や流行にも目がいくようになりました。これが、就活の役に立ちました。不便が、新聞を読むことを動機付けています。

 カメラの方式にも不便が価値を上げる例があります。デジタルカメラ(以下、デジカメ)とフィルム式カメラの違いです。後者の中にレンズ付きフィルムといって、撮れる写真の数が限られ、後から現像に出されば出来栄えがわからず、望遠も接写もできないカメラがあります。デジカメやスマホで撮るよりけ不便です。しかし、生まれた時からデジカメやスマホがあった若い世代から、レンズ付きフィルムが人気を集めているそうです。

 デジカメやスマホだと、いくらでも撮れるのでとりあえずシャッターを押します。撮ってすぐに見れるので、結局、同じようなたくさんの写真ができます。これらは、後から整理する気にもなれず、撮った時の記憶もあいまいです。一方で不便なレンズ付きフィルムで撮る時は、一写人魂です。いつ、どこで、どんな思いで撮ったかけ記憶に残ります。撮った写真の価値を上げています。

 

自分ゴトになる 

不便なやり方は、やっていることを「自分ゴト」にするものが多いです。

 自分ゴトの例として挙げられるものの一つに「シェアードスペース]という実験があります。これは、オランダ・ベルギー・ドイツ・デンマーク・イギリスなど欧州各国で,2004年から2008年にかけて実施された実験です。実験スペースに指定された道路では、信号機も標識も路面表示も撤去されました。実験が始まる前は,道路の安全を担うのは行政であり道路そのものでした。それが、その道路の利用者(ドライバーや歩行者)に全て委ねられたのです。

 自分で気をつけなければならないとは、一般には手間です。しかし、安全を担うコトが自分ゴトになりました。結果として。車の走行速度が低下し、負傷者の出る事故は減りました。今でも、フランスのナントでは市の中心に信号機などの安全装置がないところがあり、事故や渋滞が削減されているそうです。

 

 リスクホメオスタシスという考えがあります。自然界の恒常性維持(ホメオスタシス)という機能が、人の心理にも働くという考えです。確かに、安全だと感じる(安心する)とちょっと冒険的なことをしてみたくなり、危険だと感じる(安心していない)と安全な行動をとりたくなるのは、自分でも思い当たります。外側の安全装置を外されると、安全を担うことが、自分(内側)ゴトになるようです。

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