goo blog サービス終了のお知らせ 

超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ユキのいた街 八神健短編集/八神健

2013-12-17 23:35:02 | 漫画(新作)



 

















3冊目の短編集。




















私は学生時代から八神健の漫画が大好きなのです
あのほんわかしてて、やさしくて、でも時折切ないあの世界観
ジャンプ時代の作品は勿論彼の存在をきっかけにチャンピオンを初めて購入したり
色々と思い出深い作者なんですね
ちなみに今作の短編の内のひとつにあの「まじかるドミ子」の続編?っぽいのが存在していて
結構旧知のファンとしても楽しめる作りになってたのが嬉しかったですね。「ななか6/17」大好きなんで。

私は1冊目も2冊目も購入し今でも手元に存在していますが
1冊目2冊目と違うのはジャンルの幅広さ、良い意味でのバラバラ感ですね
1冊目はほぼ「ふわふら」中心でしたし2冊目はストーリーもの中心のイメージですが
この3冊目は、なんというか、振り切れたギャグものや素朴なテイスト、ラブコメから漫画家ものまで
本当に「短編集」という言葉が相応しい様々な八神節を楽しむ事が出来る内容になっています
彼王道の感動ストーリーから
某ドキドキ魔女~を経たからこその突き抜けた百合系ギャグ、
あとは本当に自然に、ふわっと読めるラブコメ風味の短編が非常に心地良くて
往年の読者的には「これだよ、これ」って思うような作品も実に多かった印象ですね
昔と比べて作画は結構簡略化されてるイメージですが根底に流れる痛いくらいの「やさしさ」は変わっていない
だからこそ、安心して読める・・・っていう気軽に気楽に読めてかつ印象的なシーンも多々ある、っていう
磐石の内容に仕上がっている気がします
少なくとも昔からのファンは何の問題もなく楽しめると思うし
ご新規さんに関しても全部読みきりですしこれ一冊で八神テイストは結構網羅出来るのではないかと

あ、ちなみに成年系の読切は一切収録されておりません
機会があればまたそっちも望みたい所ですが。ぜひ。


今作を読んで改めて思ったのは「変わらない良さ」ですね
多分八神健の漫画を好きな人って彼の表現がとことん好きな人だと思うんですけど
(あんまり替えが効かない感じというか、青春を彷彿とさせる感じ)
そういう・・・ノスタルジックかつ普遍的な作品が並んでるので
読んでて気分も良かったというか、
絵柄は昔と比べて変わってる部分もあるけど、読み終えた後の何ともいえない心地良さは健在なわけです
ピュアで、イノセントで、でも胸を突くような場面もあって、そのバランスが実に絶妙で。

そういう学生時代に読んでたような、「あの頃」のようなテンションでどの作品も読む事が出来たので
それもあって素直に「買って良かった」「読んで良かった」って思えたのかもしれません
不変の良さがしっかり滲み出ているというか、
まだまだ読み手をほんわかさせ、ちょっぴりの感動を盛り込んでくれる八神節健在というかね。
こういう感じでこの方の漫画をこれからもコンスタントに読めたらなあ・・・と心底思いました。
八神健テイストを望む読者は根強く残ってると思うのでまたいつか4冊目も期待したいですし
これからの執筆活動にも期待ですね
なんかもう久々に八神健成分を過不足なく補給出来て気持ち幸せでした。
「ユキのいた街」に関してはその後の二人の様子をもっと見たいな、と(笑)。

後本人もあとがきで語ってますが所謂「お姉ちゃん」ものがやたら多いですね
その意味でもお姉ちゃんのやさしさに包まれたい人にはオススメなんじゃないかと
どのお姉ちゃんもしっかりと下の世代想いで見ていて癒されます
特に「となりの甘姉」は雑誌で見てた時から凄く好きだったので収録されて嬉しかったです
八神健の甘々な部分が濃厚に凝縮されている傑作短編ですね
ベテラン作家ですけど、絵柄はぜんぜん古くなってないのがまたイイ。
全体を通してコンスタントにクスクス出来て、コンスタントにしんみり出来る、良い塩梅の短編集かと。

















「まんがのがっこう」だけは随分批評性の高い内容になっていて
こういう作品が入っているのも前作前々作とは違っていてバランス的に面白かったです
八神健の漫画ってどの作品にも「なんかこういう空気いいな」って雰囲気が漂っていて
その「なんかいいな」がめいっぱい詰まってるような小気味良い短編集。また大切な本が増えました。




2013/12/16 真夜中と成年漫画と

2013-12-17 02:45:23 | 雑記







「何も考えずにつっ走れる程子供じゃないから
 時間が欲しかったの・・・」 (高橋こばと「星屑トラフィック」1巻1st.avenueより)



「おとなしくしてさえいれば他人はいくらでもやさしくしてくれる
 けどやさしい人に囲まれると身動きもできなくて ただ困るしかないんだな・・・」
(田中ユタカ「初夜2」の「夏物語。」より)





真夜中に成年漫画読んでたら上記の台詞がなんだか身に沁みて来た。
成年漫画には「人生」が詰まっているなあ。



食戟のソーマ 第52話「花に仕える者」 感想(週刊少年ジャンプ 2014年 3号)

2013-12-16 18:51:30 | クロス・マネジ(WJ系)

















緋沙子さん半端ない。


















う~ん今までの出番の少なさを解消するかのような凄まじい存在感の放出
これはナオさんが惚れるのも正直仕方ないね(笑
「側近」という立場を最大限に活かした料理もまた「なるほど」と思えて非常に良かったと思います
今回は「注意」だけではなく「軽蔑」の言葉と目線も配ったからこそナオの心にグッと来たんでしょうね
なんか一気にネタキャラに成り下がったような気もしますが、まあそれはそれで(笑
彼女が負けた理由、緋沙子さんが勝てた理由がはっきりと提示されてたのが秀逸な傑作回だったと思いました

側近は側近でもアリスのとは違ってたじろいでたシーン多めに感じてたんですが
今回えりなに対する想いだとかその料理の性質が露になった事で今後の展開にも期待出来そうですね
取り合えず実力者がこれでまた一人提示されたので更なる盛り上がりと変遷を見せそうで楽しみ
おまけにもう一つのブロックではアリスの側近がそれ以上の点数を・・・!って事で
これを後続のキャラがどう越えて来るか、、、っていうのが
これからの最大の期待ですね
次号は番外編らしいのでこれがまた年明けっていう非常に待たされる感じ、なのがまたニクい(笑)。
とにかく今週は緋沙子さんマジかっけえ、これに尽きますね。

ナオさんの「実は美人」ネタはこの時点でやっちゃうか。
個人的には男子キャラが引き出すものだとばかり思ってたけど、なるほど百合もアリかもしれない(笑)。
なんとなく「プリティフェイス」の望ちゃんと夏緒の関係性、エピを思い出したお話でした。
ナオさんは「わたモテ」のもこっちに似てるなあって思ってたけど
「実は美人」ならばある意味全然違いますね(笑 これからのナオさんにも色々と期待しています。


それにしてもこの漫画には本当にワクワクさせられますね
失くしたと思ってた少年漫画マインドを見事に毎週くすぐられています
勿論ネームも最高なんですが画力演出の凄味もまた相乗効果でスゲーな、と
上手い具合に「納得」を促すネームと「大層」を発生させるのが上手い作画のテクニック
今週もやっぱりこの漫画が飛び抜けて面白いように感じてしまいました
先週ナオさんでラインを引いた効果も早速出てますし、
早くも創真がどんな点数を出すのかが楽しみで。田所ちゃん、アリス、タクミも残ってますし
こりゃしばらくはワクワク状態がバースト寸前でたまらんですわ(笑
それくらい今週の流れは素晴らしかった
先に披露した方が負け、なのは定石ですけど、定石なだけじゃなくて「理由」もちゃんと付随してるからなあ・・・
そりゃインパクト狙いのものよりも地力がしっかりしてる方が評価されるよね 何でもそうですけど。
これを機にナオさんがどういう風に成長していくのか・・・にも密かに期待してます
一発キャラじゃ正直勿体ないですからね(笑
いやあ、「良い少年漫画」をしっかりと堪能出来ました。










それにしても貞塚ナオ(白)、美人過ぎだろ(笑 美人度で言えば作中でもトップクラスじゃないか?




Syrup16g全曲レビューその63「神のカルマ」

2013-12-14 15:11:01 | Syrup16g全曲レビュー




















今年最後のSyrup16g全曲レビュー(たぶん)。2009年から細々と続けています。























神のカルマ               アルバム「coup d'Etat」収録


















Syrup16gは憂鬱な気持ちを吐き出すロック~として一般的には認知されてると思うんですが
個人的な見解だと五十嵐隆が歌ってる内容はある種普遍的でもあると思うんですね
友情を歌うのも良い
愛情を高らかに歌うのも悪くない、けど


「ああそう HELLO
 あんた 嫌い」


まあ、こういう感情もやっぱりある訳です
それを出すか出さないかの違いだと思うんですけど
別にどっちが偉いとか正しいなんて事柄を言いたい気持ちはないし
そこに優劣を見い出すのは非常に馬鹿らしい
けれど、こういう心情描写を描く事によって救われる気持ちも世の中には存在する、という事だけです。
この曲では個人的な解釈ですと他人の価値観や思想に容易く介入し掻き乱していく「日常」に対して
幻滅したり憤っていたり、放心している状況を描いていると思ってるんですけど
それもまた受けるのは「仕方ない」ダメージの一つなわけで
そこが気になって脳内にこびりつく事も茶飯事で
逆に言えば自らが傷付いている様を晒す事によってそういう行為に対する警告を行ってる、とも
私個人的な考えで言えばそう思います 何に価値観を見い出す事すら憚られる嫌な時代
でも自分がこういう価値観を持っているのも
自分がこういう思想を持っているのも
自分が決めたようでその実自分では決めていない、ただ元々「そうだった」だけ
つまりは神のカルマ=業、である だからそれに対して卑屈に思う気持ちも反省する気持ちも本来必要ない
そこで迷う事があっても、それに対する懺悔や代償を支払う必要なんて本当はないんです
ただ「そういう」人間だっただけ
だからそのままで、自由なままでいても許される
そのくらいの「正しさ」はどうか尊重されて欲しい・・・と
そういう願いが込められている曲だと私は思っています
本来であれば鳴る必要のないサイレンがあちこちで鳴っているよ、って。

不用意な邪測や自分のストレスを晴らす為だけの嘲笑、価値観を染め上げようとする行為は
きっと簡単に他人の精神を蝕んで取り返しの付かないダメージを与える
もしかしたらそのダメージがあまりに大きすぎて
立ち止まって混乱する事を余儀なくされるかもしれない
だけど、それが自分の生まれ持ってるものだと本気で思えるのなら罪悪感を払う必要もなく
自分の価値観の赴くままに歩いてると感じれてるならそれはそれで悪い事じゃない
この曲はボロボロに侵された精神状態を描いてる曲ですけど
散々否定されたとしても、結局は神のカルマ、自分自身は自分自身でしかない
それに俯きながら、つまずきながら、それでも「自分」で居ようとする心境を描いている曲でもあるのかも
最後のレンタルビデオ~のフレーズが聴き手に意志の確認を促しているようにも聴こえる
そんな自己否定に対するペーソスと、
自己否定に対するアンサーが同時に鳴っているような曲だと思います
最終的に「俺は俺だ 君は君」って強く思うためにあるようなナンバー。

嫌いな人は嫌いなままで、好きなものは好きなままで。そんな風に歩いていけばいい。
普遍的な「落ち込み」「嫌悪」を歌いながらもその実真っ直ぐでもあるのかもしれません。
初期を代表する名曲の一つ。



この曲はベースの躍動感が素晴らしくアンサンブルの迫力も相当に聴き手に伝わって来る曲ですね
煌きながら儚さも放っているギターサウンド、どっしりしたリズムを刻むドラムと合わさって
バンド演奏に聴き入るだけでも相応のカタルシスを感じ取れる楽曲になっています
その上サビの憂いのあるメロディー、
ラストの放心状態をきれいにカットして歌っているフレーズの痛切な叫びも胸に響く
歌詞の奥深さやある種の普遍性にプラスして楽曲自体も際立って印象的なテイストになっています
例え否定されたとしても、
それが取り繕ってない本当の自分ならば
否定されていたとしても「正しさ」は宿っているはずだから。
「それはそれでいいんだ」ってペーソスだけでもない意思も感じられる曲ですね。
さり気に「自分を貫く」という行為に関しても問いかけてるのが尚素敵です。
















この曲を初めて聴いたのは勿論学生の時でしたが
あまりにリアリティのある状況描写に驚き独特のカタルシスを得た記憶があります
心の置き場がなくなったときに、独りでそっと聴くような一曲です。