超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

色の歌シリーズ その5「BLUE/宇多田ヒカル」

2012-05-19 21:50:44 | 音楽(テーマシリーズ)





一年前まで「色の歌シリーズ」っていうテーマシリーズの記事を書いてたんですが
いつの間にかなかったような事になってる・・・っていうか途中までしか書いてないままだったので
一年ぶりに復活させようと思います。多分誰もが忘れてると思うので一応おさらい。



第1回 オレンジ/tobaccojuice
第2回 RED/LOSTAGE
第3回 白濁/ランクヘッド
第4回 黒い太陽/eastern youth

こんな風に、それぞれの色の歌で最も印象に残ってる曲を挙げるって性質の記事で
それと共に、どういう使われ方をしてるのかっていうのをイメージで書いてみるって記事でした。
なんで途中で止めてたのかは、不明です。多分音源が見つからなかったとかそんな理由。
で、今回は「青」で選曲してみました。
一番最初に浮かんだのは宇多田ヒカルの「BLUE」でした。






BLUE      アルバム「ULTRA BLUE」収録






音楽の中で本音で対話する・・・っていうのが私の音楽の聴き方の一つですが
この曲の歌詞に於ける本音の出しっぷりっていうのは半端ではなく
ここまで鬱屈とした感情を堂々と出されると
逆に清々しくも思えてくる、っていうのが私の本音でもあるんですよね。あまりにもマイナスな気分の時に
バカみたいに明るい音楽ややる気を押し付けてくる音楽を聴いてもただただ空しいだけ
でもこういう曲ならマイナスとマイナスが合わさって良い具合に聴ける、っていう。
誰もが強い人間ではないからこそ
そんな他人の弱い部分に同調して自分だけじゃない、っていう
ある種のシンパシーを得て元気になるっていう構図。
そう考えると音楽って奥深いなっていうか、単純なものでは決して無いんだ、って
こういう曲にまじまじと教えてもらっている気がします。そう言ってもいいくらいの名曲です。


【あんたに何がわかるんだい】

で、この曲の肝はここだと思うんですよ。
個人的に「頑張れ」とか「ひとりじゃない」って言葉以上に
「あんたに何がわかるんだい」って言葉を歌われる方が救われるっていうか・・・
誰もが自分の枠に誰かを当て嵌めようとしている節も見受けられるけど
自分の物差しで人の感情を判断しようとする人間もいるけれど
そうやって当て嵌められる図られる側の立場からしたら、本当に「あんたに何がわかるんだい」って言いたくて。
それをボソッとではなくサビで力強く歌ってくれるこの曲のスケールは何度聴いても衝撃的で
「全然何も聞こえない」とか「恋愛なんてしたくない」だとか、
勢いよく止まることなく進む流れの上で
ちょっと立ち止まって考えたい時、そんなモヤモヤを解消してあげたい時
そんな瞬間に聴いてカタルシスやシンパシーを得るにはこれ以上ないくらいピッタリな楽曲で
はみ出し者、ひねくれ者、孤独主義者の処方箋としても作用してくれるような
ヒットチャートの中心にいながら
ヒットチャートでは満足出来ない層の欲を満たしてくれるような。
そういうオーバーグラウンドとアンダーグラウンドを真の意味で行き来出来るような名曲だと思う。
私自身最低の気分の時には何度も聴いて精神を這い上がらせてきた、そんな曲です。
このブログと音楽の趣向が合うならば多分気に入ってくれるはず。






他に浮かんだ曲を書こうとも思ったのですが、ここ数年この曲のイメージが自分の中で強すぎて
あんまり浮かんでは来なかったんですが、青って使われ方が二種類あると思ってて
一つは憂鬱の表現、もう一つは若さの表現ですね。
前者はネガティヴ、後者はポジティヴな意味合いで使われてますが
今回は敢えてどん底まで落ちるような一曲を選んでみました。でも、アレンジは美しく聴きやすくはあります。
この曲の次に自分の中で浮かんだ青の曲はエレファントカシマシの「精神暗黒街」でした。
この曲もまた前者の憂鬱って意味合いのブルーですよね(笑)。

でも、曲によっては透き通った美しさの象徴として使われる事もあったりして
その辺結構使いやすいカラーなのかな、とは思いますね。




第1回 オレンジ/tobaccojuice
第2回 RED/LOSTAGE
第3回 白濁/ランクヘッド
第4回 黒い太陽/eastern youth
第5回 BLUE/宇多田ヒカル


余談ですが、数年前STAnのライブに行った時にSTAnが出る前にKYGが作ったSEが延々と流れてて
その中にこの曲の「あんたに何がわかるんだい」ってフレーズが使われてて
波長があったみたいで凄く嬉しかった記憶があります(笑)。




夏の終わりの一曲 nagisanite/bloodthirsty butchers

2011-09-12 23:57:58 | 音楽(テーマシリーズ)






今年は私生活でほとんど夏らしいことが出来なかったので
「夏の終わりの一曲」と称して夏の歌のレビューをします。

去年はサマーソング特集と題して10曲ピックアップしたり割と本格的だったんですけど
今年はそういうのなかったんで
その代わりという思いも含めて。夏の残り香を楽しんでいただければ・・・ってな。





nagisanite/bloodthirsty butchers (アルバム「yamane」収録)





ブッチャーズで夏の名曲、と言えば誰もが思い浮かべるのは「7月」でしょう。
でも、そんな「7月」に匹敵するくらい夏の匂いのする名曲がブッチャーズにはあるのです。
それが今から触れる10年前の名曲「nagisanite」です。
ローマ字のまんま「なぎさにて」と読む曲です。

例えば、喪失感を歌った曲って形容が似合うのが「7月」なら
こっちは何ていうのかな・・・
それにも満たない苦しさ、っていうか
息苦しさというか。街を外れて、人を外れて、一人ぼっちの寂しさっていうか。
そこで渚っていうものに触れて
海を見て
何かを感じて持って帰る、それは郷愁だったり感傷だったり、もっと別の何かだったり・・・。
そんな情感だとか感情の揺れ動きが大いに表現されている曲で
これリアルタイムで聴いてたのは学生時だったんで
そんな細かい部分までは
当然当時では分からない部分が多かったんですけど、今聴くとそのおセンチ感というか
感傷に浸るって行為の寂しさと儚さがガッツリと描かれているので
そこに向かって感情移入してしまう
そんな曲にもなっていると思います。ただ題材が夏って事だけじゃなくてね。

でも、この曲って初めて聴いた時から「名曲」って印象が自分の中にあって
それは夏特有の焦燥感だったり
くだるい感じだったり
でも、その中にある爽やかさやきっぱりとした雰囲気、それを音で上手く表現で出来てるような気もしていて。
 更に言うと、メロディラインがスローテンポながらも美しいというか
雄大さだとか懐の深さを大いに感じさせるような
グッと来るし、でも沁みるしっていう意外と馴染み易いものになっていて。ポップでもあると感じられて
その意味でもコアな部分と分かりやすい部分が混在してるっていうか
即ち非常にブッチャーズらしくもあるよな、っていうか。
そんな彼らの王道が気持ち良く発揮されてる曲です。「残り香」感も凄く漂ってるので、その意味でも
この時期に聴くと更に情感豊かに聴こえるんじゃないかと。




この曲が収録されてるアルバム「yamane」も実はそんな全盛期の作品に匹敵するくらい
気持ちの良いオルタナ・ロックが堪能できるアルバムにもなっているので
そっちも是非、って事で。
個人的には最新作が新しい絶頂だな、とも感じてる今日この頃ですが。



色の歌シリーズ その4「黒い太陽/eastern youth」

2011-06-07 21:32:30 | 音楽(テーマシリーズ)





色の歌シリーズ、今回は「黒」です。前回が白だったので今回はその逆で。

曲はeastern youthの「黒い太陽」です。






黒い太陽        アルバム「感受性応答セヨ」収録





黒っていうのは用途が様々だと思いますけど
この曲の面白い所は真っ向から「敵」として描いている所ですね。
太陽は太陽でも、黒くて、高圧的で、こっちを焦がし尽くそうとしている何か、として。
その何かっていうのは具体的なモチーフでも
或いは自分自身の感情でも良い。
どうとでも解釈できる歌詞は
その分聴き手の想像を膨らませてくれていて。これぞ奥深き日本語ロック、とでも言うべき曲。

「皮膚を抉る三十三℃」

誰でも自己を防衛する
守るようにとあらかじめ用意してある殻
それすなわちプライドがあると思いますが
そんな人生の敵の前ではズタボロになって総て剥がされてしまいます。
誰かとかそういう話ではなく
自分の意識内でも。
そんな迫り来る脅威に対して
抵抗する、抗う様を描いている曲で、恐らくそれは負けているんだと思うんだけど
それでも、この黒いって表現は自らの意志の強さも表現している気がして。
向こうが燃やしつくそうとしてるならば
こっちも玉砕覚悟で立ち向かう。
できるできない
勝つ負けるというよりは
本当にもうやるかやらないかの世界。って事をこの曲は描いているんだと思います。

全部燃え尽きる前に、何か一つでもいいから抵抗を。


音的には超ストレートで迫力満点のイースタン節炸裂。
問答無用にグッと掴まれるメロディと
奥行きのあるアレンジが印象的。
ただまっすぐのストレートっていうよりは
もっと聴き手にささるフックを色々用意してる感じで、そこがまた単純過ぎなくて素晴らしいですね。
中期の代表曲、とも云える曲です。
ガッと突き刺さるような曲。




黒っていうのは前述のように用途が定まってないというか
自由度の高い使われ方をしてるイメージ。
力の象徴として使われたり
文字通りブラックミュージック的な使われ方
大人っぽさの表現、
あるいは汚れた感情的なアレ。
単純にロックに合うって目的で語呂合わせに使われる事も多いような。
今まで取り上げた色の中じゃやっぱりコレって方向性はない気がするけど
その中でもこの曲は
非常に単純明快でシンプルな使われ方だったので、選出しました。
ただ、真っ先に思い浮かんだのはSIAM SHADEの「BLACK」だったり(笑)。

他にはART-SCHOOLの「BLACK SUNSHINE」、MONOBRIGHT「黒い空」、ZAZEN BOYS「黒い下着」などなど。
LOSTAGEの「公園の裏の黒い蝉」も好きだな。FoZZtoneの「黒点」も名曲。
黒く塗りつぶせとかもロックバンドっぽくて良いですよね。




第1回 オレンジ/tobaccojuice
第2回 RED/LOSTAGE
第3回 白濁/ランクヘッド
第4回 黒い太陽/eastern youth



色の歌シリーズ その3「白濁/ランクヘッド」

2011-05-26 00:17:10 | 音楽(テーマシリーズ)





色の歌シリーズ、その3は「白」です。個人的にも好きな色。ですが。

曲はランクヘッドの「白濁」です。





白濁         アルバム「地図」収録




真っ更な気持ちを保つのは難しい。
他人から見ればちっぽけな事でも感情は濁って
純粋な気持ちで居られなくなる。
だから汚い感情や
卑怯な考えを持ってしまうことも日常茶飯事で
つまりは真っ白いままでは生きてはいけないのだと。
そういう事に関しての悔しさや、また一種の憧れを描かせるような、そんな歌。

元々自分が考えてもいなかったことを
無為に気づかされ
それで得たものもあるけど、実際は失くしたものの方が多いと思う。
本当は純粋に生きたいって誰もが願っていると思うのに
その実沸くのは黒い感情ばかりで
誰もこの場から逃げ出せやしない。
でもそれは決して悲しいことじゃなくて
ある意味では普通であり、恒常であり。それを示唆しつつも

「君が夢見た色を今更僕が描こうとして」

と、捨てるばかりではない事もこの曲では描かれていて
それはロックンロールの
ロール的な観点からすると正解というか何と言うか。間違い挫折することもそうだけど
「知る」事に関してはよりリスクを伴う行動に違いない。
それによって色がくすんでしまうこともあるが
それもまた自分には違いなく
その意味では「自分だけの色」とも言えると思います。
だから、白濁でも、変化したとしても、それはそれで自分の色には違いなくて。
ってのを最新アルバムの「泥日」で答えとして出してる気がするんですよね。
そう考えると
後半の苦味を表現してるようなオルタナサウンドも納得、というか
元々好きだったんですけど、今はその影響もあって更にこの曲を理解できたような。そんな気もします。


他者の手によって歪められてしまった感覚や感性
それに対して考えることもありますが

「あの日の君は今もここにいるよ」

こうやって思い出せる能力もきちんと備わっているので、それがある種の救いにもなるのかな
なんて事を考えるような曲です。
ランクの名曲の一つです。
「白い声」とも若干迷ったんですが、こっちのがテーマには相応しい気がして。




「白」っていうのは純粋さの象徴としてよく使われる気がします。
marbleの「最後は白になる。」とかおとぎ話の「WHITE SONG」、前述の「白い声」もそうだし
でもその裏で今回の曲の様に
汚される象徴として使われるような事もあって
その点だとこの曲はより普段使われるテーマ以上に切り込んでるな~と思って。
タイトルも凄く秀逸だと思う。そっちの意味には捉えないで下さいね(笑)。

あとNICOの「ホログラム」なんかも候補でしたが、なんせタイトルに色が入ってないので却下です。



第1回 オレンジ/tobaccojuice
第2回 RED/LOSTAGE
第3回 白濁/ランクヘッド



色の歌シリーズ その2「RED/LOSTAGE」

2011-05-14 23:46:23 | 音楽(テーマシリーズ)






色歌シリーズ2回目、今回はLOSTAGEの「RED」でございます。赤は情熱の赤、とは云いますけど
これは情熱っていうか、もっと血生臭い感じの赤です(笑)。





RED/LOSTAGE          アルバム「DRAMA」収録



冒頭からブリブリのベース音が響いたと思ったら、その勢いのままに不穏なアンサンブルが撒き散らされる
火山が噴火したかのようにアグレッシヴな一曲なんですが
それは同時に都会の夜の喧騒を思い出させるようでもあって
狂気的でもあり凶器的でもあり。
一発で頭が目覚めるようなキツめのオルタナティヴ・ロック。激しくも奥行きのある音像は
日本のオルタナ好きには堪らない様な音に仕上がってると思います。
この一曲だけで絶頂に持っていけるような。

断片的な歌詞、意味不明な言葉の羅列
でもきっと重要なのは言葉の意味なんかじゃなくて
導き出される語呂の、フレーズの小気味良さが最重要で
意味ばかりを優先させる歌社会に向けての反骨精神も感じさせますけど
同時に、そんな言葉の羅列の中に憂いだとか悲しみなんかも見出しちゃったりして
そう考えると
一曲の中で色々な感情が噴出している曲、って形容しても全然いい気はします。
単純なようでいて単純じゃない。
一筋縄ではいかない奥深さ。
そういうのが好きです。

鋭利な刃物を突きつけられたかのような剥き出しで、でも勢い以外の懐もある純粋な衝動。
これぞ正に赤い血が騒ぐ、ってやつですね。
バンドのキャリアから考えても特に人気のある曲だと思います。私も大好きさ。


赤って云うのは、大体前のめりというか前向きな意味合いで使われることが多い印象で
同時に大人っぽさの象徴でもある気がします。
丁度ワインの色と重ねて使われたり。
そんな2面性が面白い色ですが
今回はそのどちらにも当てはまらない、狂気の表現って意味合いの赤を選択させて頂きました。

他の候補曲はTHE BACK HORN「アカイヤミ」、
エレファントカシマシ「赤い薔薇」、TRICERATOPS「赤いゴーカート」などなど。
MONOBRIGHTの「紅色ver.2」なんかも大人っぽさの象徴に使われてる気がするな。という訳でまた次回。



第1回 オレンジ/tobaccojuice
第2回 RED/LOSTAGE