超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

LOSTAGE「ECHOES」全曲レビューその10「これから」

2013-08-17 21:18:56 | LOSTAGE 全曲レビュー



















10.これから















アルバム「ECHOES」の最後を飾るこの曲は淡々と歌われる静謐なるバラッド。
アチコさん(ex.KAREN、Ropes)の叙情感溢れるコーラスによって神秘性すら生まれてるのが恍惚的な、
LOSTAGEの楽曲の中ではストレートに聴き手を優しく包み込み癒すタイプの楽曲になってると思います
丁寧に紡がれる温もりあるメロディ、
それまでの疲れに対するヒーリングのようなメッセージ
そしてボーカル以上に魂の浄化/再生を促している趣のあるサウンド、と
日々の軋轢だったり蓄積されたしんどさが解き放たれていくような快感と作用に満ちている楽曲
疲れ切った心に一つ花を添えてくれるような・・・個人的にはそういう曲だと思ってます
短編集的な作風のアルバムだからこそ、最後は王道に気持ち助けられるバラッドって構成がイイですね。
いつ聴いても心が洗われるようなささやかな名曲の一つ、です。

この曲は大人になってある程度時間を経て経験を積んで
その上で限界だったり停滞を感じている人達に向けて歌われている気もします
或いはあの頃の純粋な気持ちを失くしてしまった人々へ向けて。
確かに時は経ち様々な壁に衝突して
早熟な希望も最低限のプライドも今や見る影もないんだけど
それでも、色々と失ったからこそ今見えるやろうと思える事柄だって存在するのもまた確かな事で。
それを考えたら、まだまだ「これから」。
その「これから」の中には勿論未だ見ぬ傷も存在してるんだろうけど
でもここから先を描けるだけでも邁進出来るだけでも今の自分にとっては希望だと思うから。
その最中に少し疲れたらまたここで、この曲で休めばいいんじゃないか、って
私的にはこの曲を聴いてそんな事を感じました。
傷付いた羽根を休めたい時には是非こういう曲を聴いて、またクタクタの背中で歩いていって欲しいですね。
そんな背中が一番格好良いって思ってるから。まだ希望を描ける人達の為の歌だと思います。













色褪せた少年達のブルース
泣かないでいいよ
そう、これからさ



このフレーズを胸に、今日も歩いています。





LOSTAGE「ECHOES」全曲レビューその9「ペラペラ」

2013-05-05 21:30:25 | LOSTAGE 全曲レビュー














9曲目です。












9.ペラペラ










この曲は冒頭の部分、そしてAメロの雰囲気がちょっと不気味というか
ホラーちっくな印象を与える曲でその穏やかじゃないムードが刺激的な一曲なんですが
反面サビ自体は非常にポップで聴きやすく、そのギャップがとてもユニークで面白い楽曲になってます
しかもただポップなだけじゃなくオルタナサウンドの旨味を凝縮させたような
王道のオルタナティブロックに仕上がってると思えるのが更に心地良いナンバー、
主食というには変化球気味ではありますが、
長年ここまでコンスタントに音源を出してきてまだ開けてない引き出しがあったような
ファンとしてはそういう感覚を覚える楽曲にもなってますね
「あいつ」でここまではっきりと「良い歌詞」を意識したようなフレーズが沢山出ていた新境地も含めて
この「ECHOES」というアルバム自体がやはりいつもとは違う楽曲も沢山盛り込んだ
実りの多いアルバムである事を感じさせるピースの内の一つでもあります

ロストエイジの楽曲は基本的にバンド感の塊のような激しい楽曲と
優しさや慈しみを覚えるような柔らかく沁みるバラッドのどっちかに分かれるパターンが多いですが
この曲は塊や勢いという感じでもないし沁みるってほど柔らかく優しいわけでもない
そういうどこにも当て嵌まらない楽曲を生み出せる辺りに
未だ健在のソングライティングスキルの高さ、
またどんどん新しい表現にも向かう意欲を感じさせてその意味では後々の布石になるような一曲かもしれません
勿論単体で聴いても不気味さとポップさが良い具合に共存している面白味のあるポップソングとして聴けますね。
派手ではないけど、何気にお気に入りの楽曲の一つです。








歌詞に関しては「あいつ」とかと比べると相当に語感重視のイメージで
ロストエイジの原点に近いイメージの楽曲です
でも所々に「売名」「あいつらを捕まえて」等のドキッとさせるフレーズが入ってるあたりに
不穏なロックを撒き散らすロストエイジならではの記名性が確かに存在していて、
個人的に解釈すると
周りの人間や偽善を司ってる人々が全部薄っぺらく思える
例えば何かのきっかけで善意やアジテーションのポーズを取っていても
本当にそう思ってやってるのか、それともそんな自分の存在を売る為にやってることなのか
それが分からなくなって疑わしくなる事が多々あります
それは勿論自分に対しても、ね

「確かに沁み込んだ優越感」
その行動は優越感を得る為に、自分の存在は凄いんだ偉いんだと他人の為に思えて自尊を満たしてるだけなのか
それともそういうの関係なしに本心から思ってやろうと思った行動やポーズなのか
そういう疑問を提示するような歌詞の内容にもなっていて
これまた案外考えさせられる、
「ペラペラ」というタイトルもまた批評性があってサウンド以外にも面白味を感じられる楽曲になってますね。


自分が賢いという事をアピールする為にわざと難しい言葉や高尚な事柄を語ろうとする人がいる
でもそんな行為は傍目から見てるとどう考えても本心だとは思えなくてペラペラに見えてしまう
そうじゃなくて、
もっと身の丈を知って、自分の思うがままに純粋に
そんな背伸びで格好良い!なんて思えるほど人は単純じゃないよって
皮肉も個人的には感じる事の出来た楽曲でした。
そこも含めて、面白い。









「本当に自分がしたいこと」と
「自分の外見を整える為に敢えて付けるポーズ」とでは全然印象が違うし
その辺は冷静に考えて判断していきたい・・・と音だけ考えれば単純にノれる曲ですが
一方で注意を促す思慮深さもあったりするその奥行きが好みな一曲ですね。





LOSTAGE「ECHOES」全曲レビューその8「瘡蓋」

2013-03-20 19:28:47 | LOSTAGE 全曲レビュー













【俺達が犯した罪の全て それを背負ってくるくる回る】













8.瘡蓋










瘡蓋(かさぶた)というのは出血した時に自分の身体自らが止血してくれる自然現象の一つで
それをはがしたりはがれたりするともう一度血が出てくる、っていう・・・
その現象を人生と重ね合わせている曲です
痛みを負うと、
悲しみを味わうと
どこかでその苦しみから逃れる為に現実逃避したり自分の気持ちをごまかしたりする
だけど、一度付けられた傷がうずいてしまうのもまた自然な事ではあって
自ら考えすぎてはがしてしまったり
立ち直ったはずなのにふとしたきっかけであっさりはがれてしまったり
止血しても止血しても流れてくる痛みこそ人生に於いて最も厄介なものだと思いますが
でもそれこそが人生そのものとも言える訳で・・・流れては止めて、止めては流れて
それを繰り返しながら進んでいかなきゃいけないのが人生の全て。

でも、この曲はそれを嘆く曲でもなく悲しむ曲でもなく
それでも、そういう無様な状態に陥っても最悪の夢を観続ける
スマートに振舞うことも周りに溶け込んで上手くやっていく技術がなかったとしても
無様なままでつぎはぎをしながら転がって生き抜いてやる、という
至極真っ当なテーマ性
その満身創痍で踏ん張る感覚がロックンロールの「ロール」の部分を強く感じさせてくれて
個人的にこれまた好きなナンバーの一つです。

罪を背負う・・・というのは勿論何もかもを忘れるという事ではない
でもただ忘れないだけでは背負って来た事にはならない
その痛みと悲しみを基盤にして
これからの生き方を決めるということ
つまりはちゃんと経験の一つにして糧にしなければいけない、という事だと思うんです
同じ事を繰り返してちゃ過去の罪を生かしてない、背負ってないのも同じだって個人的には思うので
その事実も苦しみも絶対に消える事はないけれど、罪を罪のままにしておいちゃいけない
そこから少しでもよりよい方向にコマを進めて清算しなきゃいけない・・・
という感情の変遷をこの曲からは個人的に感じます
「明日になれば変わる」、というのは
傷だらけになりながらも希望は絶対に捨てないという一種の決意表明にも聴こえる
そういうボロボロになりながらもクタクタになりながらも諦めることを選ばない姿勢・・・
にいちリスナーとして勇気をもらえる、そういう曲ですね。
許される為に、
今にしがみついて生き抜きたい。
この曲を聴いているとそういう事を私は思います。


初っ端のいぶし銀を感じさせる渋くて強烈なギターフレーズだけでイケちゃう曲ですが
その後もヒリヒリした空気がずっと続くのがまた堪らない一曲です
挑発的で内省的なボーカルの妙だったり、
一気にまくしたてる間奏のギターソロの迫力だったり
激しいのは激しいんですけど、今までよりも少し大人になった激しさを見せている気が個人的にはします
勢い溢れるエネルギッシュな楽曲が多い中で大人の渋みとギリギリの空気感を融合させた
今までの踏襲に思えて実は新境地も切り取れている曲だと感じています。
もう一歩踏ん張り抜きたい時に喝になってくれる曲ですね。
ライブでも迫力満点だったナンバーです。









【生まれて死んで生まれて死んで生まれて死んで生まれて・・・それを何度も繰り返す】

日常生活で我々は何度も死んでいる生き物だと思う
とてつもなくショックで理解出来ない出来事に出くわすとその度に心が死んでしまう
だけど、完全に死に至るまでに瘡蓋がドバドバ流れている血を塞いでくれる。
それが良いか悪いかは別として
そこから何度も這い上がるのはきっと醜くも美しいことなんだと個人的には思います。
身体は無理ですけど、心はコンティニュー可能ですから。そこから這い上がる力をもらえる一曲ですね。




LOSTAGE「ECHOES」全曲レビューその7「僕の忘れた言葉達」

2013-01-16 18:20:38 | LOSTAGE 全曲レビュー









7回目です。









7.僕の忘れた言葉達









「僕の忘れた言葉達」は、ロストエイジの中でも割とポップサイドに位置する楽曲ですが
音自体はそこまで抜けの良さを売りにしている訳でもなく、オルタナとポップの中間的な、
両サイドのファンが満足出来る類のちょうどいい感覚で鳴らされている一曲だと個人的には思います
メロディやコーラスから満ち溢れる多幸感とポジティブなエネルギーが冴え渡る
正に福音と表現しても違和感のない決定打的なアンセムになってるかと
勿論その根底には既に忘れ去られた存在、
必要の無い存在
ブレブレになってしまった自分・・・等のネガティブな背景があったりもするのですが
だから「このままでは終わらない」「負けたままでは終われない」、もう一度自分の存在を
この声を思い出してくれ、と
割と自らの立ち位置に対して自覚的な印象を持つ曲で
だからこそ聴き手の心境と重ね合わせて勇気に似た何かを、シンパシーを貰える
そういう「得れる」楽曲だと私的には感じる曲で、お守りのように響いてくれる楽曲でもありますね。

経験だったり、真っ白なキャンバスを塗り潰される外的な侵食だったりで真っ直ぐな心を失くした
僕の忘れてしまったいくつもの感情や言葉、そして揺ぎ無かった(はずの)想い・・・
それらをもう一度取り戻しに行く為の誇り高き自己啓発ソング。
黒く塗り潰されちゃダメだ、
むしろ何度も何度も白く生まれ変わるべき、脱皮を繰り返して進んで行くべき。
個人的にはそういう教訓やメッセージを受け取れる新譜の中でも特に好きな一曲です。
忘れてしまった言葉、誰にでもいっぱいあると思います。
忘れた以前に忘れざるを得なかった言葉達。
でもそれって、
冷静に考えたらどうみてもおかしいですから。奪われたら自分の手で取り戻す、ただそれだけですね。

これもあくまで個人的な印象ですが「点と線」の続編、
或いはあの曲と伝えたいテーマ性は案外一緒なんじゃないかと思います
一回落ちても、落ちたままでは終われないと告げる実にロックバンドらしいナンバー
「雨のち晴れの空」というフレーズも、決して夢見ではなく自ら手繰り寄せる意思を感じる
決意と能動に満ち溢れた指標のような最新型ポップ・アンセム。
大好きな一曲ですね。








【闘っているフリをしてる】

ただ、気分だけで盛り上がって結局なあなあになる危険性もこの曲は加味してると思っていて
ポーズだけじゃダメなんだよって気付けも存在しているのが尚素敵ですね
まだ僕は「ここにいるよ」って、終わった訳じゃないんだよって
そういう健気な告発が印象的な沁み入る楽曲、
ライブで聴くと更に感動的に響くので是非。





LOSTAGE「ECHOES」全曲レビューその6「あいつ」

2012-12-07 23:55:01 | LOSTAGE 全曲レビュー









残り後4曲、今回は普遍的な名曲「あいつ」です。











6.あいつ










最近よく思うんですけど、
もし昔の友人だったりもう逢う事のない人々に再会する機会が回ってきたとして
自分はその場にいけるのか、その場に居ていいのか、もっと言うと「大きくなったよ」と
無邪気に告げられるほど立派な人間になれたのかな?と
そんな事を良く考えてしまいます
置いてきぼりというか
過度に誇れるほどの自信や現状がある訳でもない
そう思うと無性に「何かしなくちゃ!」という気分になってくる
一歩ずつでもいいから能動的に進んでいかなくちゃ、と自己啓発を掛けて何とか前に進もうとする
この曲はそういう気分の時にピッタリ合うような、完全に先を見据えている楽曲だと思います
足りない部分やこれまで犯して来た失敗や怠惰を認めて、だけど認めるだけじゃない
最終的にはそんな自分にとっての理想だったり、豊かさだったり
後ろめたい感情が一切なくなりますように
そこを目指して、ゴールとして歩む事を決意するある種の表明ソングになっていて。

ここで描かれている「あいつ」っていうのはそんな一度でも感情を分かち合った同志だったり
或いは自分自身に置き換えても十分通じるんじゃないかと
多分誰もが全然理想とは程遠いし
立派な大人、余裕のある大人になれている訳でもない
だけど、「あいつ」が、昔の自分が描いていた自分は間違いなく今の姿よりももっともっと逞しい筈
そんな元々そこに居た自分の夢や希望を叶える為にも、辿り着きたい自分の為にも
出来るだけ待たせないように、追いつけるように、
ウダウダ文句言いながらも駒の様に進む
その果てに「あいつ」と再会出来るなら、もう一度笑って会う事が出来るなら。
今抱えてるジレンマやモヤモヤだって決して無駄じゃないんだ、という。
そういう事をこの曲を聴くといつも考えてしまいますね。
約束した訳じゃないけれど、
でもきっと「あいつ」はどこかで待ってる。
その時を迎える為に日々一生懸命生きていく・・・LOSTAGEの中でも普遍的なストーリー性を含んだ
真っ当に沁みて良い曲だなあと思える、そういう意味ではある種の新境地かもしれないですね。
自分も確実に待たせている「あいつ」の為に頑張って這いつくばって生き抜こう、と。
そんな気分ですね。








少し遠回りしたけど
寄り道ばっかしてたけど
急がなくちゃ
行かなくちゃ
あいつを待たせてる