超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

MONOBRIGHT「ACME」全曲レビューその5「Timeless Melody」

2011-09-30 22:56:12 | 音楽(全曲レビュー)






MONOBRIGHT「ACME」全曲レビュー、その5「Timeless Melody」です。





5.Timeless Melody




この曲は、めちゃめちゃポップで、そのバランスも良くて
抜けの良いキラーチューンなんですけど
元々ライブで先に聴いてて
「いかにも桃野っぽいメロディだな~王道って感じやな。」って思ってたら
クレジット見たらヒダカトオル作曲だったっていう。
まずこの時点でニヤリ(笑)。
音楽的なツボが似てるっていうのは本当そうなんでしょうね。
何気に桃野くんのこと研究でもしたのかな・・・と思えるくらい彼っぽいメロディに
キラキラで、でも切なさも漂うアレンジ。
その仕上がりは抜群、
踊るのにも最適だし、でも浸るのにも似合ってるし。キュートさもあったりしますね。
何よりこの曲は凄くシングルっぽいですね。
最近のシングル曲よりもシングル曲っぽいので、その意味でもニヤリっていうか
そこはかとないお得感がしていて良いですね。
間奏のギターソロや、オールディーズの匂いも感じさせるアレンジも凝ってるし
けど一聴して気に入れるキャッチーさもあるしで、この中では最もバランスの良い曲なのでは。

歌詞に関しても
さり気に本音が散りばめられています。
誰かに声を掛けたり
親切にするのは、実は自分が寂しいから、心細いから。
それは良い事の様で全然違う、総ては自分の為でしかないんだよっていう
これ以上ないくらい身も蓋もない曲なんですけど
でもそれでいいじゃないか、っていうか
それも仕方ないよな、って。
でも、その根本だけは変わらない、その部分は忘れちゃいけない。
そこを押し売りしてはいけないっていいますか。
そんな寂しくも
温かさも感じられる一曲です。
その描き方がたまらなく人間くさくて感情移入出来る歌。メロは素直でポップなのにね。面白いな。




Syrup16g全曲レビューその31「天才」

2011-09-30 13:56:26 | Syrup16g全曲レビュー






Syrup16g全曲レビューその31「天才」です。まずタイトルのインパクトで持ってかれますけど。







天才               アルバム「coup d'Etat」収録






オルタナど真ん中のギターサウンドに
渾然一体となって襲い掛かってくる獰猛なアンサンブルが魅力的な一曲。
そのサウンドのダイナミズムもさることながら
雰囲気だったり
歌詞だったりの「誰も寄せ付けない感」が凄まじいですね。PVを観ててもそうなんですけど
一人でトチ狂ってるというか
仲間なんて要らねえよ、と言わんばかりの暴走と孤独な疾走感がクセになります。
気持ち的にささくれ立ってる時とか
不穏な心情な時に大きく作用してくれそうな一曲です。この曲はファン人気も高く
きっと人気投票でもしたら相当上位に来る、ライブでも常に定番に位置するような、そんな曲でした。


っていうのは歌詞の内容もまた内容なんですね。
あの頃の自分は何かの天才だった
無条件に褒められてた時期は終わって
気付いてみれば、大人になってみれば、天才でもなんでもなく単なる路傍の石になってた、という。
誰だって子供の時に大きく褒められた才能だったり
それを示唆されたりがあったと思うんですけど
曲がり方を間違え
生き方を間違えて、辿り着いたのはおおよそあの頃の未来とは大きく外れたこの場所だった。
ノベンバ風に云えば「瓦礫の上」って所でしょうか。
夢が潰える場所へ。
だからこそ、「天才だった頃の俺にまた連れてって」
あの無敵だった時代に俺を帰してくれ、と。そんな悲痛な後悔が思いっきり歌われている歌で
客観的に聴けば非常に無様なんですけど
それって聴き手である私にとってもある程度のリアルなんですよね。
それを見ないようにして生きてるけど
見ないように生きてても、道を間違えたって事実は消えない訳で。

逆に言えば、もうあの頃には二度と戻れないし
今は今でやっていくしかないんだよ、って
ある種の反面教師としても作用するんじゃないか、ってそんな風にも思える曲です。


【苦労話 バラされてもねえ】

そんな状況であるが故に
今しかないって、残ってるのは今しかないって思ってるからこそ
他人のある種の自慢的な苦労話に耳も心もささくれ立って
心が乱れてしまう。
ただでさえ人間は他人と自分を見比べる生き物ですから
過去の切り売りで勝負している人間を観て心がざわめくのもある意味では当たり前で
自らには何かの天才だった過去しかない
誇れるべき過去なんて一切無い。
そんな人間の汚い部分や怒りの部分も平気で晒しているこの曲は
誤解を恐れずに云えば
勇気のある応援歌、っていうか
同境遇の人間に向けてのシンパシーになり得る曲っていうか。
だからといって傷の舐めあいでは決してなく、自己確認というか
自らの立ち位置を確認する為の曲っていうか。ある種の自己解放ですよね。
うさばらし
ムシャクシャ
端的な苛立ち。
そんな不遜な楽曲がエンタメにもなりうる事を証明した
代表曲にはふさわしい楽曲だと個人的には思ってます。日本のオルタナ好きにはストライクだと思う。





悲しい、そしてある意味では美しくもあったノスタルジックを爆音で開放する
大胆不敵で、
でも非常に繊細でもある
とっても人間くさくもある初期の名曲の一つです。




DocumentaLy/サカナクション

2011-09-29 17:47:21 | 音楽






サカナクションのニュー・アルバム「DocumentaLy」を聴いた。




このアルバムはですね
もっとエンタメ色が強くなるのかと思いきや
完全なドキュメントですね。
完全な個人主義っていうか、山口一郎そのものを一つのアルバムにパッケージしたといいますか
北海道から上京して東京って云う都会に暮らすその心境が延々と綴られている
要は思った以上に暗くてシリアスな内容です。
そもそも
曲名からして「モノクロトウキョー」ですもんね。下手したら前作の方がエンタメ色は強いかもしんない。
大都会である東京に暮らす一人の青年の憂鬱や焦燥感が完パケされているので
その意味で全然誰にでも通じる部分はあるっていうか
「仮面の街」なんかも正にそうですもんね。
終わりなき苦悩を歌った「エンドレス」に、置いていかないでって気持ちを歌った「ルーキー」と
正直パッと聴くには歌詞の内容はとてもシビアになってるんですが
そこは彼らお得意の煌びやかな、
でも肉体的でもあるアレンジで間を取る感じですよね。これでサウンドも重かったら
完全にブルースとかそっちの領域に入っちゃうと思うんですけど。
所謂人間くささとか
一人の人間としての当たり前の感情とか悩み、ですよね。
その点だと音楽を伝えるアルバムって以前に人間を伝えるアルバムになっていると思います。
 恐らく、パッと聴こうって雰囲気の時にはきっと「シンシロ」辺りが分かりやすいとは思いますが
そこから更に踏み込んだ、ディープな一面を知る為にはこの「DocumentaLy」という感じでしょうかね。
深化ではありますけど
その分音も詞もタフになった事は間違いない
でも、相変わらず単純に面白くユニークな音楽でもありますけどね。
前作もコンセプトっぽい部分はありますけど、今作はよりコンセプトが前に出た感じですね。
今都会でも田舎でもどっちでもいいですけど、モヤモヤしながら生きてる人には作用する作品だと。


ただ、このアルバムはシングルが異様に目立ってるというか
結構な存在感を発揮してます。
前までのアルバムはシングル曲を逆に埋もれさせるくらい新曲のインパクトが高かったんですが
このアルバムはシングルを際立たせているというか、相応にインパクトがあるんですよね。
これもまた一種の挑戦っていうか
恐らくアルバムならではの聴かせ方にこだわったんじゃないかな、と思います。
聴きなれた「ルーキー」も「バッハ~」も新鮮に聴こえる上に
「アイデンティティ」が起爆剤としての役割を全うしていて、正しくライブの感覚を思い出すような
そんな要所要所の盛り上がりにも気を遣ったアルバムに仕上がっていると思います。
全体的にシリアスな気分で聴くべき作品なだけに
そういう気持ち的に上がれる部分は、何も考えずに上がれる構成になっていると思う。
ストイックに一人の人間の感情や生活の中の空気感を突き詰めた新しい傑作アルバム、ですね。
最終的には
ちょっとでも明るい結論に辿り着いている、
辿り着こうとしているその姿勢もまた彼ららしくて頼もしいです。

個人的にはもっと売れ線のアルバムになると思ったし
なってもいいとも思ってたけど
逆にこういうシリアスでトーンの重いアルバムになったのは意外でした。
でも、その分掘り下げ甲斐はある作品だと思います。
生々しくも、意志の強さを感じる作品。
一曲一曲のタイプも結構違うのでその意味でも楽しめるんじゃないかと思います。





しかし作品を重ねる毎にどんどんとスケールの大きなバンドになっていきますね。
エンタメ精神ではなく、ストイックな精神で大きくなっていけるバンドも貴重ですよね。
そのままに、頑張って欲しい。

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ライフワーク/OGRE YOU ASSHOLE

2011-09-28 23:00:00 | 音楽





「埋まらないなここ 
 見えないな底
 注ぎ込むだけを繰り返すのがここで
 
 有り余ったほど
 足りないな もう
 なにも無い事を繰り返してるように思えるよ」 (ライフワーク)



それをライフワークとか形容しちゃうんだ、っていう曲なんですけども。
上がっては下がって
下がっては上がって
その繰り返しで
毎日感情の補填をするの「だけ」に必死な訳ですけども・・・その先に何があるの?って言ったら
本当によく分からない、っていうのが本音なんですけどね。
そういう意味で
この詞は非常に秀逸ですよね。
秀逸すぎて時折冷や汗を掻くくらいです。
穴は掘ったはいいけれど
ただそこにあるだけで、何も入らないし自分で入れるしかないし
そこで冒頭の「埋まらないなここ」に繋がるって言う。「ここ」は「心」に置き換えても何気に通じる感じ。

思えば
ここまでダイレクトに感情に作用する曲って
あったといえばあったけど
それでも直接的な意味合いでは初めてなような気もする。
こういう気分の時に聴くと
驚くぐらいに作用してくれますもん。でも、その感情のふり幅っていうのも
恒常的になってしまうというか
それをライフワークとして向き合っていかなければいけない、って意味で
何か一つ大切な事実を教えられたような・・・
そんな気分にもなる一曲です。
新譜「homely」の中でも特に好きな一曲ですね。




THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその8「終わらない境界」

2011-09-28 13:16:10 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー






THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその8「終わらない境界」です。残り1回ですね。





8.終わらない境界





タイトルだけ見ると仰々しい曲なんですけど、実際はものすごく静かな曲です。
囁くように歌う小林祐介の声と
音数の少ないゆったりしたアンサンブル
都会の喧騒を忘れて時間の流れをスロウにしたい時とかに大いに活躍しそうな曲。
まあ、それでも歌詞の方は相変わらずシビアと言えばシビアなんですけど
その分優しさも垣間見れる曲で。
素直にいい曲です。



【ところで僕ら同じ場所に暮らしてなかったっけ】

同じ場所で
同じ生活を
同じ教育を
同じものを見ていても
人間ってやつは大幅に違っていきます。
それは変化のスピードっていうものも含まれてると思うけど
ビックリする位違う人間になったり
さっきまで同じ場所に居たはずなのに、気がつけば遠くの方に行っていたり
そんなものはザラです。
そういう現実から目を背けていても、何も変わらず
例えそれが優劣的な違いでなくても
同じ場所に居たと思ってたはずの人間が、自分とは全く違う場所に居たら寂しいし戸惑うし
そんな自分は結局一人ってことにもなってしまう。
気がつけば
人間と人間の間には境界が出来ている。同じ場所に暮らして居て、も。同じものを見ていても。


【窓を閉めたところで光は漏れるし歌は聞こえるし】

そんな現実からの逃避は
許されるようで
許されない、目を背ける事も本当は出来ない。
例え違う境界に居ても
その境界の中の景色は違う境界の人間である自分の方にも届いてくる。
そんな自意識からは逃れられないし
逃れてもいけない、と思う。
境界が違ってしまったなら
人間が違ってしまったなら、その境界で目指すべき所もあるはず。
いつまでも同じ場所に留まっていたら
きっと
本当の意味での再会なんて出来ないと思うから。



【何か見たい夢
 君にはあるでしょ
 僕にもあるんだよ
 いつか行きたい場所】

この部分が重要ですよね。
誰かとの距離だとか
自分の存在価値云々だとか、そんなものに溺れても
結局はさ
あれ食べたいなとか、見たいなとか、着たいなとか
外に出て気分変えようかなとか
こういう人間になりたいな、だとか
そんな欲求はあるでしょ
したいこともあるででしょ
そういうのないの?って。誰がどうとかではなく
自分のしたいことをしなよ
それが叶ったら会いに行きなよ、って。誰の為でもなく、誰と比べるでもなく
まずは自分のために
自分がしたいことを。その延長線上に誰かの境界が見えたなら
元ある場所から移動出来たなら
いつでも会いにいきなよ
誰かに何かを、価値を与えにいきなよ、って。何も同じ場所でなくとも
与え合う事は出来る
一緒に歩く事も出来る。境界だって悪い事ばかりではないんだ、と。それを受け入れるか
そこから先に進むかそうでないか否か。
それを決められたら、そこからの景色だって随分と違うものになるはず、だから。





個人的な解釈の話ですけど
疲れた気分の時や、ささくれだってる気持ちの時に聴くと
何かおいしいものでも食べにいきなよ、とか背中を押してくれるような。
いくら絶望したって、欲求は鳴り止まないのだから。