田中ユタカの新刊「好きでいっぱい」読了。
私は昔から田中ユタカさんの漫画が大好きで・・・
彼の漫画を集める事が何よりも至福でしたし今まで出された作品群を眺めてるだけでもニヤニヤしてきます
そこに新しく加わるこの作品は形式といいタイトルといいなんだか90年代の短編集を彷彿させるようで
そこが往年のファンとしてはまず嬉しかったりするんですが、今回も漏れずに傑作ですね。
微妙に「好きなんだってば」に近いタイトルなような気もします。
この新刊は携帯コミックで発表された作品群を一挙に紙の本としてまとめたものです
個人的に紙で読む方が好きな上にようやく単行本化された、って事で喜びもひとしおですね
ちなみに携帯コミック用と言っても特に紙で読んでも不都合はないので
その辺は心配せず自分と同じような往年のファンの方にはじっくりと作中観に浸ってもらいたいです
田中ユタカ王道の少年少女の機微を描いた作品からちょっと大人層に向けた作品、
各々のプレイに於ける意義と心証を描いた作品まで結構幅広い内容でバランス良く楽しめると思います
昔ながらの純愛ものから近年培われた深い愛情を感じる感動出来る漫画まで新旧のエッセンスがてんこもりです。
それにしても田中ユタカ作品は今も昔も真っ直ぐに性愛の素晴らしさ、尊さを信じ切っていて
読んでいると成年漫画とは思えぬ「爽やかさ」とか「潔さ」を感じられるのがとてもお気に入りです
逆に言えばそういう行為に対して後ろめたさなんて本来不要なものですからね
その意味では正し過ぎるくらいに正しい漫画を今回も描いています
そこが大好きです
読んでいて心が浄化される感覚
太陽に照らされて心がポカポカと温かくなる感覚・・・を
全編通して味わえると思います こういう感覚は間違いなく田中ユタカさんの漫画から得たものであり
成年漫画自体を見つめなおすきっかけ、入口になった事を読んでいて思い出しました
成年漫画「でしか」出来ない表現を描きつつ普遍的な感情も同時に表現出来る、というジャンル自体のタフさ
それが今作でも遺憾なく発揮されてるので古参でも新規でも関係なく手にとって感じてもらいたいです
個人的にはこの新刊を読んで
「多分この先いくつになっても田中ユタカの作品を読み続けるんだろうなあ・・・」と
素直に思えて、そう思えた事がファンとしても一番嬉しかった、そんな変わらない良さと
今だからこその表現が織り交ぜになっているずっと愛せる類の作品集だと感じ取らせてもらいました
酸いも甘いも純愛もコメディもプレイの意義も感動も官能もいっぱい詰まっている極上の作品群。
これを読めて良かった。とスッと思えたのが今回も凄くよかったですね。
まだまだ田中ユタカの存在感と力量は健在だと思います。
■真夏の果実
これこそユタカ先生の王道ですな(笑
読んでてこしょばゆくなっちゃうくらいの純愛っぷりに拍手
ちょっと大胆な格好にドキドキするのは今も昔も男子の特権ですな。
最後の幸せそうな表情がまたいい。
■ランチタイムの恋人
「トラウマひとつ あっさり消えた」って表現には流石のものを感じます
これは結構年を重ねた二人の物語ですけど、
そんな二人がまるで少年少女みたいに初々しくて情熱的な恋愛を繰り広げてる様にグッと来ますね
でも色気に関しては確かに大人の色気に仕上がってる部分を含めてやはり大人ものの良さが滲んでます。
オチも本当に胸が温かくなってニヤニヤしちゃいますねー(笑
でも多分20代後半か30代前半辺りだろうから「爆発しろ」とは言いません。
むしろそのまま幸せになって欲しいです。本作でも凄く好きな作品。
こういう言葉にせずともキャラのバックボーンが伝わって来る漫画が上手いですね。やっぱ。
■素肌の休日
「裸メガネってすごく萌える」
「バカ・・・」
ちょっと女性読者意識してるようなシーンが新鮮でした(笑
でも確かに可愛いな。変な意味じゃなくて。女性の目から見た男性の可愛さというか。
内容もずっと愛し合いたい女性の可愛いわがままが如実に出てて幸せな出来栄えになってます。
最後の涙目になりながら満足気に微笑むフミカの表情が堪らなかった、と同時に
言葉でなく表情で語る表現技法にもまた痺れさせてもらいました。
ずっと二人はラブラブだ!
■好きのあそび
ありそうでなかった束縛もの。
でも、田中ユタカが描くとラブラブを演出する為の小道具と化すっていう(笑
しかしこれはマンネリ打破に効きそうですな。
■しあわせの胸
とにかく「胸」に焦点を当てて掘り下げた意欲作
大きな胸に興味ない振りをする丈くんが滑稽で可愛い(笑
正直男なら無条件降伏が基本だと思うんですが・・・よく頑張った。
「たっぷりあってよかったって思う!!」
自分の胸で男を何度でも幸せに出来る喜び、、、という
これまた誰かが描いてそうで描いてなかった印象の着地点を描ける田中ユタカはやっぱり凄いと思う。
ある種カップルの理想形だよな~、と思いつつ女の子で男子が何度も復活出来るのもまた真理でしょうな。
「生きちゃおうね」ってセリフがあまりに素敵過ぎる。
■好きの方法
これもヤバいなあ(笑
Fのテクニックのページに付箋してるのを偶然見つけて・・・っていう
限りなくコメディちっくで修羅場から始まってんのに容赦なくラブラブモードに入れるスゴさよ。
感じてないわけじゃなく、照れていただけ、という心情がいかにもウブでいいですね。
今作は「男のいじらしさ」に関しても描かれてるので女性にも薦めたい。
本気でニヤニヤ出来る。
「ただただ いっぱいの 好き」
■愛を待つ
これは大人もの、であると同時に他とは毛色が違いますね
限りなくネガティブなモードから始まるこれはこれで「らしい」とも思える作品
正直敗れた時の無力感はかなり伝わって来て感情移入してしまいましたが
そんな彼女が最後には笑顔でベッドの中にいるのを観て「ああ、良かった」とも思えました
必要とされなかった人は、また別の誰かに必要とされている・・・という事を描いているようにも。
■「好き」
人間何でも理屈で考えてると結果的には損するだけだよね、って話に思える
そんな事をうだうだ考えるんだったら理屈を振り払って真っ直ぐに飛び込んだ方が良い。
ちなみにこれは男性のがスペックが高いですね。確かに笑顔がステキだ。
普段真剣な表情が多い分行為の時の「熱さ」にグッと来た。
人間らしい。
■おクチでLOVE
Fという行為をここまで神聖に描ける作家はユタカ先生以外にいないのでは?
本当にその行為自体が神々しいもののように思える演出力が凄まじい。
その表現力に純粋に感動してしまった作品。
セリフ回しにも脂が乗っているのを感じます。もう約20年のキャリアを持つベテランなのに(笑
本当に面白いものなあ・・・。
うーんそれにしても「純愛」そのものだ。疑いようもなく。
■恋するふたり
これは物凄く90年代作品の匂いがします
こういう作品を今でも描けるんだ!ってのがまずファンとして嬉しかった
いじらしい女の子と勇気を出す男の子っていう構図は往年のユタカ作品を彷彿とさせますね
接していく内に出すべき「勇気」の種類が変わっていく~というテーマ性が実に良い。グッと来ます。
こういう限りなく初々しさを追求してるようなユタカ作品が大好きだった。
昔から、そして今も・・・。大切な一作。
■恋人のキス
言葉にならないからこそ、何度でも何度でも、っていう
正に最後には相応しい総括的な意味合いを持つ作品
今作では胸、クチ(F)、キスに焦点を当てた作品があったりして
最後のあとがき通り本当に新人に戻ったかのような初々しさが存在してるのが素晴らしいと思います
内容も実に根源的なものが多くこの作品もまた一つの理想形、って感じもしますね
今回も本当に素晴らしい作品をありがとうございました。心からの言葉。
もうタイトルと形式、表紙からして「あの頃」の作品と地続きな感覚もあって
田中ユタカ作品の大ファンとしては非常に堪らない一冊でした
きっとこの先もずっと私はユタカ先生のファンで居続けると思います。そう確信出来た一冊。大好きです。
特にお気に入りは「ランチタイムの恋人」「素肌の休日」「しあわせの胸」「好きの方法」
「愛を待つ」「おクチでLOVE」「恋するふたり」あたりでしょうか でも、全部好きですね。