超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

Made From Nothing/LEO今井

2013-07-30 20:44:06 | 音楽















LEO今井の「Made From Nothing」を聴いた。














約4年ぶりのアルバム!・・・って事でリアルタイムで太鼓判を押したかったんですけど
飲み込むのに結構時間が掛かりました。まあ、正直変化の度合いが強めだったので仕方なかったんですが
慣れればいつも通り「最高!」ってなるあたりは流石LEO今井だなー、と

何が違うのか、って言えばLEO今井はニューウェーブだったりロックだったりエレクトロニカだったり
多ジャンルを飲み込んで一つの作品に仕上げる割と幅広い音楽性のシンガーで
ただ、どのテイストの曲も「ポップである」という、そこだけは共通してたと思うんですね
どういう方向性になろうが最低限の聴きやすさは忘れない、と。

そこから考えるとこの「Made From Nothing」という作品は結構にストイックでコアな感蝕がまず先にあって
だからいつものLEO今井とは違うエッセンス、空気を感じてしまい咀嚼に時間が掛かったんだと思う
勿論あくまで個人的な印象ですけどね。


ただ、全体的にシティポップス的な王道感こそ減っていますけど
その分楽曲がシンプルになってスリムになっていて有り体に格好良いと思えるナンバーが増えています
アグレッシヴさもディープさも増している中々に聴き応えのあるアルバムになってますけど
基本的なメロディラインは「やっぱりLEOだ」、と思える最低限の感触は残ってるので
聴き込めば聴き込むほど面白いというか、
馴染んでくると本当に無から新たに構築された今現在のLEO今井の表現の旨味を楽しめる気がして
その意味では是非向き合ってみて欲しいアルバムですね
勿論初聴きの人にとっては以前を気にせず純粋に最先端の音楽が楽しめる豊かなアルバムだとも思う
ギターロックもミクスチャーも和製ロックっぽいナンバーもエレクトロニカもプログレも全部混じってる
彼のポテンシャルを更に突き詰めて鋭く濃厚に鳴らしたのがこのアルバムだと思ってますから。


またこのアルバムには有り体な応援歌だとか幸せを表現する歌、恋の歌は一つも入ってなくて
ほぼ全部が苦悩に近い、ゼロから何かを掴みたくてもがいてるような詞が殆どです
心の空白を埋める、とか
もう一度真っ白な気持ちを取り戻したいとか
そういう足掻きだとか抵抗に近い、祈りにも似た心情を表現してる詞が多いですね
でも過度に絶望や失望、懊悩してる訳ではなくある程度の隙間も感じられる歌詞になっていたり
聴き手に対してベットリくっ付こうとしない距離感もまた魅力的な歌詞です
個人的に一番好みに近いなあ、と思うような歌詞なので
それがセンスフルなサウンドとボーカルに載せて延々と歌われる様は至福に近かったですね
感情のささくれだった部分を掬いつつ、前に進みたいという切実な気持ちも同時に描かれてる印象なので
良い具合に中和されてるというか
苦悩しつつもがきつつ生きてる人の心象風景をガッチリ捉えているようで聴いてて違和感なく気持ちが良いです。

で、やっぱり歌も上手いですね。リズミカルなナンバー歌わせたら自然にのっちゃうほどフレキシブル
ディープなナンバーだったら即座に心に沁みてきますし、ロックにもエレクトロにも似合う独特の声質は
若干濃いと言えば濃いですが好きな人にとってはやはり堪らないものがあると思います
凄く格好良くてお洒落なボーカルでもあるけれど
その実土臭いフレーズを歌わせても十分似合うのは表現力の力かなあ、と
4年経っても全く衰えぬ、どころか更に磨かれているボーカルセンスを存分に味わえたのも収穫でした。


本格的に新しいLEO今井を咀嚼出来て来ると元々のクオリティが高いのでどの曲も本当に名曲に聴こえてきます
この季節にも似合う爽快なギターサウンドで「真っ白」への羨望を歌う「Tabula Rasa」、
攻撃的なラップパートも含む新機軸「Omen Man」はサビとの落差が面白く
和の要素を格好良く昇華している「Furaibo」、
リズミカルでテンポも速くラフなボーカルとの調和が更に気分をアゲてくれる「My Black Genes」の勢い
渋みを効かせた「Ame Zanza」にファンク要素が光っている「Kaeru St.」、
民俗音楽みたいな前半から後半のオルタナロックへの変化が痛快な「Akare/Prism」、
そしてアルバムでも屈指の名曲「Made From Nothing」は超シリアスな空気感に触れてるだけで心震える
何もない地点から必死にもがいているのが伝わるキャリアを代表する名曲に仕上がっています
最後を飾る「Too Bad/kubi」の素直なポップさとアウトロの神妙さもイイ。

個人的に推しなのは歌詞が意味不明に思えて実は何か意図があるのでは?と勘繰ってしまう
そういう絶妙な表現がツボでストレートなエレクトロソング「CCTV」ですね。
この曲みたいなメッセージソングに全く聴こえないけれど、
でも角度を変えると「うん?」って思えるような
そういう楽曲がもっと増えても良いのでは、と思えた位お気に入りの楽曲です

このアルバムは過去作と比べて明確にキャッチー、って訳ではないと思いますけど
でもキャッチーな音楽だけが全て、とは個人的にまったく思わないですし
聴く度に色々と発見や魅力を掴める豊かなアルバムだと感じます
一度好きになったら中毒性あって何度も聴いてしまうあたり今回もまた名盤だな。と思う訳です
確かに変化はしたけれど、根本のメロディセンスや格好良さは変わってないから慣れれば今まで同様・・・
いや、ある種今まで以上にディープでシリアスで、カッコ良い音楽に触れられる傑作かと
4年待った甲斐は確かにありました。今ここで堂々と太鼓判を押したいと思います。














「いつかはずっと来ないまま」 (Made From Nothing)

シリアスに人生に向き合いつつも、センスあるサウンドやボーカルで滑らかさも演出
結果的にそこまで気負わず聴けてディープな一面も同時に触れられるという絶好の作品になったかと
また一段階磨き上げられたLEO今井の音楽に是非触れて欲しいですね。





食戟のソーマ 第33話「いずれ戦う者たちへ」 感想(WJ 2013年 35号)

2013-07-29 07:41:28 | クロス・マネジ(WJ系)















5ページ目のえりなの顔はまんまtoshですね。












数年前、快楽天を買って読んでたらtoshの漫画に出会ったんですけど
まさかそこからこんな事態になるとは思わなんだ。当時から絵は凄くキレイだったんですけど
ぶっちゃけ絶対に新人などではない事は確定的に明らかだったので今でもちょっと不思議な気分ですね
ただ・・・個人的に成年漫画が大好きなので元成年誌作家がジャンプで活躍してるという事実は
中々に痛快かつ感慨深い、
勿論原作が良いのもありますがキャラクターの表情の上手さ等佐伯さんの尽力も人気に貢献してるでしょう
toshの時は女キャラは抜群に良い代わりに男キャラは割と一面的だった印象があるので
今こんなにも格好良い男キャラを描けてるのは確かな「成長」と言えるかと
というか、読切から比べても随分表情に魂がこもるようになったなあ、と思います
読切「57th」で確かなストーリー構成力を見せ付けたポテンシャルある漫画家附田祐斗とのコンビは
双方にとって新たな魅力・一面を引き出す結果になっていて結果的に正解だったかなと
先週で青春が終わった分、今個人的にジャンプで一番面白いと思うのがこれです
私の好みとWJ読者の好みが一致した?近年稀有な事例なので今後もしっかり追い続けたいと思います
アンケは・・・巻頭飾って欲しいので一応出しとくか。


前回の卵課題の試験でえりなとアリスが創真よりも断然上だった事は隠しようのない事実
だけど、創真が得たものはただ単に敗北や嘲笑ではなく、「間違った」という経験を得る事が出来た
つまりは正しい選択を出来る素養がまた一つ増えたという話で
それを考えると失敗すら彼にとってはプラスの出来事
やっぱり今回の卵試験は創真の株を下げずに創真に伸び代がある事を示す絶好のエピソードだったんだなあ、と。

結局、最初から最後まで理屈もなくチートな少年漫画は後で読み返した時に残るものがない
当初は最低限の人気を得る為にまず彼の実力と不敵っぷりをアピールしてたけれど
所詮彼もまた井の中の蛙、
この合宿編は大海を知らす為のシリーズだったという訳だ。
こういうやり方はやり方である種のクレバーさがあって効果的なのかもしれないですね
それも更に強い奴が~とか創真の格落ち~とかでなく箱庭息子で経験不足だったからこそのピンチだったので
筋も通ってるし打開の方法もミラクルや根性論ではない個人的に納得出来るものだったことから
何気に読者として信頼や安心を置けるようになった好シリーズだったかと
タクミとは引き分け、四宮とは直接対決ではないけれど自分が加担したのにも関わらず敗北
卵試験でも合格はしたもののえりなとアリスには事実上完敗・・・という事で
まだまだ「その先」を描けそうなのが個人的には嬉しいですね
チートなだけじゃない事で緊張感も生まれましたし、
この合宿で創真はライバルとの出会い、越えるべき先輩という壁、そして友情に心を燃やす事も出来ましたし
振り返ってみれば相応に収穫は多く、またいつか色々とリベンジ出来る機会も楽しみになりました
今週はさり気に失敗したからこそ分かれた事実がある~というメッセージ性も効いてましたし
最後の創真の表情と台詞にも今までの展開があるからこそ説得力もあった、という事で
まとめ回としては中々の出来だったと思います
何より「食戟のソーマ」は創真自身の成長物語でもあるんだ、ってのを示せたのが一番大きいですかね
次週からは恐らく新展開だと思うのでまたどんな展開が待ってるのか、ワクワクしながら待ちます
アリスの台詞からすると近々直接対決も近いのかな?


で、そんなアリスとえりなの過去描写が面白かったですね(笑
こういう描写はバックボーンが豊かになりますし後々のカタルシスにも繋がるのでじゃんじゃんやって欲しい
どちらかと言えばアリスのがえりなにコンプレックスを抱えてる印象ですけど、その辺のドラマも期待
えりなは普段が超高飛車な分時々照れると何気に威力が高いんですよね(笑)。
今回ので少しは見直す所もあったのかな・・・と想像しつつ
魅力的なキャラは揃って来たので
今後もガチな展開を楽しみにしたいと思います
個人的にはサブキャラ同士の対決もいつか読んでみたいですね
そして郁魅はさり気に試験突破か。まあ素直に褒められてたので地力で突破って事なのかな。
結果的に寮の人間は特に脱落しなかったようで、それを考えるといずれ掘り下げも来そうな感じですね
少なくともただ単に衝撃展開を演出する為に切られるようなキャラはいなかった模様
中でも田所ちゃんはある意味創真以上に得たものが大きかったキャラなので
特に今後の活躍に期待したくなりますね。
ここから彼女がどんどんと成長していったら痛快だと思うのでね。

あとは卒業生の出番も個人的にはこれっきりにせずまたタイミングを見計らって再登場もお願いしたい
四宮と日向子は特に印象に残っていて好きなキャラクターなのでこれでバイバイは惜しい
でもまあ、単純に見ていて楽しかったし深みもある人々でしたね
結果的には大きな壁の威厳も保つ事が出来ましたし
インフレも阻止出来た模様です。そういうこの漫画のバランス感覚は好きな部分なので今後も是非キープを。
って事で豊かだった合宿編もとうとう終わりなのを記念して総括に近い感想でした。











カラーも田所ちゃんの控えめな水着とボディは逆に似合っててグッと来るし
郁魅に関しては創真を気にする表情がツボだったしで今回も良い感じでした
WJ購買を繋ぎ止めてくれている作品なので今後も健闘を祈ります。



クロス・マネジ 連載完結記念個人的ベストエピソード10選

2013-07-25 22:44:38 | クロス・マネジ(WJ系)












今週で無事に完結を遂げることが出来た「クロス・マネジ」。
既に多くの方が述べられているように物語的には割とキリの良い部分で終わり
尚且つ初期の複線の殆どを消化済み・・・って事で結果的には良作として終われたと思っています
ちなみに私の中では傑作レベルなんですが(笑)。その足跡を振り返る意味でベストエピソード集です。

そこまで偏ってるつもりはありませんが、結構個人的な趣向も含まれています。
それにしても全話目を通したんですが若本くんの裏の貢献っぷりは半端ないですね
そりゃあ好かれるのも当たり前だわ、っていう。
ここまで友達想いなキャラも珍しいですね。関の熱さも好きです。









◆第5話「決意」

この回は色々と思うところがあって、
要するにカメレオン化というか、周りの色に合わせた方が本当は楽なんだけど
その楽な方を選ばずに自分の意思や気持ちを優先するという・・・
個人的に大好きなテーマだったんですよね
そりゃ無難に生きた方が緩やかに過ごせますし、
少しでも他人と「同じ」部分が多い方が傷付かずにうしろゆび指されずに済むワケ
ただ、それが格好良いのか?って言われると私個人的には無個性で空っぽな人間のように思える
例え「みんなと同じ」になれなくても、一般的な「普通」から外れたとしても
それが今の自分に取って最も必要で豊かな事だと思えたならば。
迷わずに進む事はきっと正しいんだと思います。周りの価値観に流されない、という強い「決意」を
この頃から描いていたからこそ後の芯の強さも生まれたんだと思っています。

それと、若本と関の存在が櫻井にとってどれだけ心強かったのか、というのも分かりますね
無駄に励まさず、無駄に同情せず、ただただそこに居てくれる嬉しさと頼もしさ。
彼らの「距離感」が櫻井を助けていた・・・と思うと
なんだかリアルというか、
等身大の青春を感じる事が出来て気分も良いですね。何も気にせず真っ直ぐに行動する深空の姿も健気でした。

自分の意思を押し殺して適当に相槌打つ人生が幸せだとは絶対に思いません。



◆第9話「だから一緒に」

櫻井は元々サッカーに情熱を捧げていた訳ですが、足の故障によって選手生命を絶たれた、
そこからリハビリ云々をやって復帰する道は~という選択肢を完全に振り切る為のお話だったかなあ、と
過去の栄光だったり思い出に固執するよりも、新たに生まれた希望に賭ける姿は
とっても男らしかったし
深空の事を伊達や酔狂でなく本気で考えてくれてる気持ちも伝わって来てグッと来た
何よりその後の深空の櫻井と一緒にきっと強くなる!という宣言が素直な喜びを感じさせてくれて
終わってみればメインの二人共を純粋に好きになれるお話だったと思います。



◆第12話「三連休」

「足手纏いにしてるのは皆自身だ」
「だから自分の持ち合わせている能力以上の壁にぶつかると逃げ出す」
「はなから出来ないと決めた方が楽だろう」

台詞の切れ味・・・というか読み手を突き刺してくる威力に満ちているお話です
最低限の努力で、スマートなままの自分で生きていたいとか思いながら生きてると恐らくダメになります
今冴えない暮らしを送っているのは自分自身のせいでしょ
すぐに諦めてきたからこの状況になってるんでしょ
楽な道楽な道歩いてきたから今の自分には何もないんでしょ?
上記の台詞を読んでいるとそんな心の声が付随して聴こえてくるのです。痛い、けど沁みます。
こういう内容から目を反らさない大人でいたいです。



◆第13話「休日のお買い物」

この回は内容も秀逸ですけど、それ以上に最後の煽り「ちょいドキショッピング」ってのがとても見事で
正に「ちょいドキショッピング」以外の何者でもない端的な表しっぷりに痺れました
友人二人のクスクス出来るようなおちょくりっぷりから、
櫻井の思春期ド真ん中の苦悩、
そして深空の無防備な発言から生まれた気まずい雰囲気・・・
正に純そのものな青春ラブコメっぷりに魅せられた傑作回中の傑作回ですね
何度読んでもニヤニヤ出来るのでオススメです。



◆第16話「豊口お前が」

初めて得点を決めた回なんですけど、得点を決めるまでの流れが
それまでに作中で言及されてた野沢さんのディフェンスセンス、能登さんのパス精度
そして深空のスタミナとボールに対する執着心による強さ・・・と
ここに至るまでの複線が美しく繋がってるんですよね
加えて、自分の思うように選手が動いてくれてチームを強くしていく喜びと満たされる表現
櫻井がただ単に深空たちの願いを叶えるだけの都合の良い存在でなく、彼自身にも喜びが存在するという
今読んでも本当にきれいなお話だなあ、と思います。 チーム育成の楽しさも伝わって来る回です。



◆第21話「お礼」

こういう繊細な恋愛話をジャンプで読む事が出来た喜びを忘れません
プレゼントを使ってくれてるかどうかをむっちゃ気にする乙女心とかストライク過ぎるし、
実際に使ってくれてるのを見た時のカタルシスも信じられないくらい大きいですよね
こういう話を描かせたらKAITOさんはある意味鬼レベルでした。
凄く純朴で心が洗われるような回だったと思います。そして若本がやっぱり面白い(笑)。



◆第22話「ドキドキ勉強合宿」

この21話~22話は当ブログ的に特に盛り上がりが激しい時でした
前半のニヤニヤが止まらないお色気&ギャグの応酬から後半の感動エピソードまで
とってもバランスが良く読み返した回数ならば一番かもしれません
そもそも男子が一人で女子の勉強会に珍入、ってコンセプトの時点で大勝利でした。

「頑張れ」とか「負けるな」とか、そういうテーマ性のお話は少年誌では特に珍しくないんですけど
「お前が足掻いてくれたから―」、つまりは「頑張ってくれたよね」ってテーマ性のお話は珍しく感じます
私自身「頑張れ」以上に「頑張ったね。」って内容の話が好きなのもあり感情移入は必至、
サービスとほのかな感動を19ページの中で思い切り楽しむ事が出来る紛う事なき傑作回です。
この話は焼き付いて離れないと思うなあ。きっと。



◆第35話「たとえまぐれだとしても」

「クロス・マネジ」は青春漫画、ちょいドキ漫画として高沸点を幾度も刻んできてましたが
スポーツ漫画として完全に化け始めたのがこの蝶蘭戦、
正直加藤さんにパスを受けさせる戦術は本当に頭脳プレイと評価せざるを得ず
その後の能登さんの櫻井の後押しによる恐れない奮闘っぷりも確かな信頼を感じさせてくれたし
櫻井に何度も助けられて信じてもらったからこそ全力で、ギリギリで応えた深空の執念のゴールの迫力。
結果的にこの時の転倒がこの後の怪我には繋がったんですが、それでも絶対に「楽しかった」し
例え負けても何かを失ってもこういう結実、幸福の瞬間だけは絶対に忘れてはならない。
この後のお話を読んだ後に読み返すと更に深く感じれるのがまたイイですね。



◆第41話「負けません」

この話はタイトルが何より素晴らしくて
例え絶望的な状況でも、叶わない現状でも、空元気でなくはっきりと「負けません」
最後まで「勝つ」つもりで全力全身でプレイし続ける意義と価値がしっかりと描かれていて。
それで何か得れんの?って問いかけに対して
一生懸命やった分、「悔しさ」と「涙」を得る事が出来るんだよ、という答えが本当に見事に感じました
だって涙を流すのも、心から悔しいと思うのも本気で頑張ってた揺ぎ無い証拠ですもん。
その気持ちがあれば、何度だって立ち上がれる
そして試合が終わった後も清々しく「負けません」と宣言する深空が格好良すぎた。
ま、オチは最高に可愛かったんですが(笑)。

和峯さんは元々ミステリアスで「好き」なキャラクターだったんですが
この回でただ凛々しく逞しいだけでない人間らしさと本音が描かれてたような気がして
この回をきっかけに「大好き」なキャラクターになりました
何度も何度も自分に勝とうと、
折れずに立ち上がってくる深空に対する回答が満面の笑み・・・というのも彼女の救いを表してる気がする
和峯が今まで楽しさを感じなかったのは、自分の上手さに誰もがすぐに諦めて降伏していたから
張り合える相手がいなかったから。

藤丘の喜びや健気さだけでなく、最後の最後に敵にとっての幸せを描けたのは本当に良かったと思う。



◆第42話「探し物は」

サッカーの時の栄光の写真の横にラクロス部の写真が並んでるのを見て密かに泣きそうになりました
負けないくらい櫻井には新しい良い思い出が出来たんだね・・・・・って
正直この最終回に感じる所が多かったからこそ、
感想も爽やかに締めれた節は少なからずあります だって1話から読んで来た人にはたまらないじゃないですか?
あんのないあんパンに再びあんを入れるのでなく、別の具に変わった描写だとか
それでも微笑を見せる事の出来る今があるという結末
空っぽの部屋が満たされたカットも含めて
「感慨深い」以外の感想が浮かんでこないくらい初見の印象は感慨深かったですね。
これは一度挫折してそれまでの幸せを失った人間が別の幸せを得るまでの物語だったんだと思います。
その様子に涙腺を刺激されまくってしまったので特に文句もなく感想を終えられたのでした。

人生って、悪くないですよ。案外ね。














他にも初回、早見先輩再登場の18話、「あんな思い」の38話、
後はギャグ的な意味で一番笑った25話なんかも特にオススメですね
「いつもよりかなり頑張る」、終盤の深空のデフォルメドヤ顔の連発は相当の威力でした。

個人的に初回を見た時点で自分は大好きだけどこの手の堅実系スポーツは2クールが限界かも、と思ってて
実際掲載順が下がるのも相当早かったんですけど、そこから5巻分も生き残って
しかもNEXTで番外編も掲載してもらえる、っていう
それだけである意味もうけもんだなーって今は感じてます
ぶっちゃけネットで必死にアンケ活動してる人たちがいなかったら・・・と思うと怖いですね。
単行本で描き下ろし、というのは基本ファンしか読まないと思うのでそういう扱いにするんじゃなく
きちんと増刊で番外編掲載にしてくれるのは連載期間からしても恵まれた措置かと思います。
それもまたKAITOさんやファンが必死に足掻いた成果なのかもしれませんね。




エゴコロトイロ4話+グランドジャンプPREMIUM VOL.20(2013年8月号) 感想

2013-07-24 23:59:39 | 漫画(雑誌感想)













簡易気味ですが。中々に読んでて楽しい雑誌。












◆エゴコロトイロ

透くんも多感な年頃なんですね(笑)。
この先本格的な絵画漫画になるかは分からないんですけど、
取り合えず今回仲違いした分もっと麦ちゃんとのエピソード希望。
それにしてもイジけた顔が最高に可愛いなあ。

なんていうんでしょうね、「ただ黙ってそこに居てくれる」っていうのも大きいですよね
私自身透くんと同じようにそういう人のがどっちかといえば好きなのかも
まさか店長がヒロイン化するとは思ってませんでしたが、
取り合えず順調に絵を書きたい欲求が高まってるのは良い傾向なのかな
個人的にはやっぱり最初は麦が良いなあ・・・と思いつつやっぱり先が気になる漫画です。
ある種異様な関係性ですけど、それはそれで眺めてて面白い、っていう(笑)。



◆インサイダー

この漫画やっぱり好きですね~
ヒロインの性格があまりに良すぎて読んでて爽やかな気持ちになれます
ちょっと間抜けな部分の人間らしさも含めてこの頃お気に入りのヒロインの一人ですね
ヒロインっていうか、主人公でもあるとは思いますが。結果的にこの子の選択が敵をも救ったと考えると
先月の勇姿含めて本当に株をグイグイ上げていくヒロイン兼主人公ですね。
そして洗練されてる絵柄を眺めるのも楽しいです。

もうちょっと語ると、割とこの手の漫画ではヒロインポジションはお飾りになる事が多いですけど
今回のシリーズを振り返ってみるとホリキンを勇気付け体張って説得に努めて
敵を不幸にしすぎず恨まれないやり方を選んで・・・と
最終的に事件解決に導いたのは東堂ですけど、彼女の存在も確実に必要だった
そう思えるのが春風ちゃん好きとしてはただ可愛いだけじゃない深みを感じられてイイです
この絶妙な塩梅は今後も是非保ち続けて欲しいですね。密かに楽しんでいます。

「ホリキンならできるよ!」



◆らぶかるま

陰口も大概ですけど
こうやって直にナチュラルに嫌がらせや皮肉を言ってくる輩は本当に腹が立ちますね
幻想が打ち砕かれるのはある意味日常茶飯事ですけど(笑

サクラも絶対に顔の事はある程度気にしてるでしょうし、内心ショックでしょう
そこでボクちゃんが男を見せられるかどうか・・・にも期待
あと摩子の奇天烈な行動にも(笑)。



◆僕は僕より友達が多い僕の彼女が心配!

マイク男は美少女だった!?ベタな展開ですけど「おっ」って思わず目を惹かれた(笑)。
しかも主人公ネガティブ男と思いきや天然ジゴロ発言でちゃっかり好感度上げてたりふり幅が半端ない。
この漫画の楽しみ方が見えてきてちょっと嬉しかったです。



◆妖怪博士の明治奇怪教授録

今月は続編なので未知数ですが、
先月の展開が個人的にツボでした
夢破れて悲しい気持ちに浸っていてもその裏で救われている人達がいる
理想とは違っていても確かに得ることの出来ている喜びはきちんと存在している。
そういう心地良い後押しの要素が伝わって来たのが素晴らしかったですね。



◆我が家のトラワレ姫/筒井大志

この人の漫画、初めて見たのはガンガンWINGだったっけ
その後「エスプリト」も読んでたりちょっと懐かしかったです
話は王道ですけど、
ちゃんと行動に筋が通っていて良かったと思います
個人的に年の差~ってシチュは好物なので今後も是非描いて欲しいな、と(笑)。

それにしてもささらちゃんの可愛さは半端ないね。
扉絵から健気な仕草の数々、時折恋愛感情を匂わせる発言等
いちいちグッと来るキャラ描写の数々に読んでて純粋に良い気分になれましたし
ただ都合の良い設定でなく本当は助けを求めてたというオチがあるので素直に読める隙間もある
連載になったらどう転がすのかは未知数ですけど、取り合えずアンケは入れておきました。
主人公の自ら泥を被る男気も含めて心に残る良い作品だったと思います。

改心後の母親も何気に可愛い(笑)。



◆しあわせゴハン/魚乃目三太

前回のが好きだったので嬉しい再登場。
なんか優しい気持ちになれるような、読んだ後少し切ない余韻ももらえるような味のある作品。
出来ればまた掲載お願いしたい。まだまだ色々なテーマでやれそうだと思うから。

説明セリフがないのも個人的には想像出来てプラスに働いてると感じますね。











「インサイダー」は「食戟のソーマ」と絵の感じが近い気がします。




Syrup16g全曲レビューその60「パッチワーク」

2013-07-23 23:33:16 | Syrup16g全曲レビュー





















パッチワーク            アルバム「COPY」収録
















この曲は歌詞自体はダウナー系に仕上がってるんですけど
サウンド、アレンジは底抜け・・・とまでは行かないものの凄く明るくて元気なんです
揚々とした心地良いベースラインにザクザクと鳴る刺激的なギター、小気味良いドラミング
これで歌詞が普通に恋の歌だったりポジティブな応援歌だったら売れ線に近いと思うんですが(笑
それを許さないのが五十嵐隆の罪であり何よりも素晴らしい部分であります
こんな抜けの良いカラッとしたバンドサウンドに合わせて歌われる苦悩と願望が入り混じった
シリアスかつ切実なフレーズの数々はむしろサウンドが空元気だからこそ余計に哀愁漂う感触があって
悲しい時ほど元気に、気丈に振舞おうとするあの感覚を個人的には彷彿してしまいます
それは別に狙って~とかではないんでしょうけど
そういう要素も含めて個人的には絶妙だなあ、と感じられる一曲ですね。

また、割とシンプルに突き抜けたサウンドに仕上がってるのと同時にある種洗練もされていて
まだ若いときの音源ではありますが後期にも通じる流麗なコーラスワークだったり
浮遊感も感じられる間奏の気持ち良さだったりと
この頃から独特のアレンジ力の高さの片鱗は見せていたんだなあ・・・と思うと振り返るのも楽しい
少なくともただ単に初期衝動を感じさせる~って結論には至らない趣を今でも感じますね
そういう部分に着目してもまた面白いと思える楽曲の一つです。



歌詞には色々な解釈があると思いますが
「楽したいのです」っていうのはそのまんまの意味合いではなく
悲しみや苦しみ等の感情を出来れば請け負いたくはない
いつも平穏な気持ちで生きていたい
そういう願望が込められているのでは・・・と個人的には感じました
そりゃ誰だって荒んだ気持ちのままで生きたくはない、世界がどうなってようが
他人がどうなってようが、そういう自分らしい気持ちだけは保っていたいし犠牲にされたくはない
自分だけの素直な感情だったり無垢な気持ちを侵食されたくない思いが常に渦巻いている

それは自分勝手な欲望ではなく、凄く普遍的な感情だと思うんですよね
「仕方ないさ」「そういうものさ」「甘くはないさ」誰だってこういう言葉を口にするけれど
本音の本音の部分がそれか?って言われると確実に違うと私は思っています
「甘くはないさ」の裏で本当は心の平穏を望んでいる
出来れば穏やかなままでいたいと願っている
それは勝手でも欲張りでもなく真の意味で普遍的だし抱いて当然の気持ちにも思えるんです
自分自身真っ当に生きたいと思っていても平穏に生きたいと思っていても
他者からの偶発的な影響で台無しになるのが当たり前の世界で
それに対する苦しみと不条理・・・そして一方でそんな自分に対する批判の要素も含まれている楽曲で。


【都合良すぎるぜ】

夢物語のような理想と
拭い切れない自分に対する幻想と
その二つを抱えて生きている自分に対する短くも強烈な批判が込められているフレーズ
平穏でただただ豊かなだけの日常や世界を願う前半に対して異議申し立てのような要素が舞い込んでくる
それは矛盾でなく、豊かさだけを望む一方でそれが都合の良い願いだと本当は分かっている証拠で
逃れられない苦痛や悲しみ、怒りは必ずあると認めている本音でもあって。

そうやって自分にとっての理想やこの世界に対する幻想を膨らます気持ちを歌うのと同時に
その願いや祈りが全部叶うのは都合の良い事だよ、というツッコミも入れている
つまりは非常にニュートラルな歌詞に仕上がってると思うんですが
最終的な着地点は


【正論なんて諭んないで】

ここに落ち着くと思うんです。元々自分が抱えてるきれいなだけの願望を半ば否定すると同時に
だからといって自分を棄てる必要はない、正論に染まっていく必要もない
そのままの自分で
自分が一番生きたいと思える自分で
痛みを背負いながら歩いていく・・・というのがこの曲が出した答えの最終型だと私は思っています
普遍的な祈りではあるけれど、悲しみや怒りを全部避けられるほど都合は良くない
だからと言って持論を棄ててまで生きる人生に価値はない
その中間で、
嘆きながら隙間を縫うように生きて―
と、こうやって考えると至極真っ当で地に足が付いているメッセージソングだなと私は感じました
勿論五十嵐隆本人にその気はサラサラないでしょうけど、聴き手がどう受け取るかは自由なので。
他人に染まらないのならば
自分を棄てる気がないのならば
この痛みも悲しみすらも通過儀礼である。
そういう達観と覚悟をもらえる、そしてやりきれなさに対しての処方箋としても機能してくれる、
サウンドと歌詞のギャップが逆に切なさを煽ってくれる初期の名曲の一つですね。
そこにはある種の厳しさも存在してますけど、
むしろ現実を突き付けてくれるからこそ癒される気持ちも確実にあります。
一番最悪なのは上辺だけの言葉で騙され搾取される事ですから。













【ここから逃げたいのです】

五十嵐隆の歌詞は驚くほどに剥き出しで、作為的な部分が全く感じられない
加えてそんな自分を甘やかしている節も感じない。そこが、やっぱり、大好きです。