LEO今井の「Made From Nothing」を聴いた。
約4年ぶりのアルバム!・・・って事でリアルタイムで太鼓判を押したかったんですけど
飲み込むのに結構時間が掛かりました。まあ、正直変化の度合いが強めだったので仕方なかったんですが
慣れればいつも通り「最高!」ってなるあたりは流石LEO今井だなー、と
何が違うのか、って言えばLEO今井はニューウェーブだったりロックだったりエレクトロニカだったり
多ジャンルを飲み込んで一つの作品に仕上げる割と幅広い音楽性のシンガーで
ただ、どのテイストの曲も「ポップである」という、そこだけは共通してたと思うんですね
どういう方向性になろうが最低限の聴きやすさは忘れない、と。
そこから考えるとこの「Made From Nothing」という作品は結構にストイックでコアな感蝕がまず先にあって
だからいつものLEO今井とは違うエッセンス、空気を感じてしまい咀嚼に時間が掛かったんだと思う
勿論あくまで個人的な印象ですけどね。
ただ、全体的にシティポップス的な王道感こそ減っていますけど
その分楽曲がシンプルになってスリムになっていて有り体に格好良いと思えるナンバーが増えています
アグレッシヴさもディープさも増している中々に聴き応えのあるアルバムになってますけど
基本的なメロディラインは「やっぱりLEOだ」、と思える最低限の感触は残ってるので
聴き込めば聴き込むほど面白いというか、
馴染んでくると本当に無から新たに構築された今現在のLEO今井の表現の旨味を楽しめる気がして
その意味では是非向き合ってみて欲しいアルバムですね
勿論初聴きの人にとっては以前を気にせず純粋に最先端の音楽が楽しめる豊かなアルバムだとも思う
ギターロックもミクスチャーも和製ロックっぽいナンバーもエレクトロニカもプログレも全部混じってる
彼のポテンシャルを更に突き詰めて鋭く濃厚に鳴らしたのがこのアルバムだと思ってますから。
またこのアルバムには有り体な応援歌だとか幸せを表現する歌、恋の歌は一つも入ってなくて
ほぼ全部が苦悩に近い、ゼロから何かを掴みたくてもがいてるような詞が殆どです
心の空白を埋める、とか
もう一度真っ白な気持ちを取り戻したいとか
そういう足掻きだとか抵抗に近い、祈りにも似た心情を表現してる詞が多いですね
でも過度に絶望や失望、懊悩してる訳ではなくある程度の隙間も感じられる歌詞になっていたり
聴き手に対してベットリくっ付こうとしない距離感もまた魅力的な歌詞です
個人的に一番好みに近いなあ、と思うような歌詞なので
それがセンスフルなサウンドとボーカルに載せて延々と歌われる様は至福に近かったですね
感情のささくれだった部分を掬いつつ、前に進みたいという切実な気持ちも同時に描かれてる印象なので
良い具合に中和されてるというか
苦悩しつつもがきつつ生きてる人の心象風景をガッチリ捉えているようで聴いてて違和感なく気持ちが良いです。
で、やっぱり歌も上手いですね。リズミカルなナンバー歌わせたら自然にのっちゃうほどフレキシブル
ディープなナンバーだったら即座に心に沁みてきますし、ロックにもエレクトロにも似合う独特の声質は
若干濃いと言えば濃いですが好きな人にとってはやはり堪らないものがあると思います
凄く格好良くてお洒落なボーカルでもあるけれど
その実土臭いフレーズを歌わせても十分似合うのは表現力の力かなあ、と
4年経っても全く衰えぬ、どころか更に磨かれているボーカルセンスを存分に味わえたのも収穫でした。
本格的に新しいLEO今井を咀嚼出来て来ると元々のクオリティが高いのでどの曲も本当に名曲に聴こえてきます
この季節にも似合う爽快なギターサウンドで「真っ白」への羨望を歌う「Tabula Rasa」、
攻撃的なラップパートも含む新機軸「Omen Man」はサビとの落差が面白く
和の要素を格好良く昇華している「Furaibo」、
リズミカルでテンポも速くラフなボーカルとの調和が更に気分をアゲてくれる「My Black Genes」の勢い
渋みを効かせた「Ame Zanza」にファンク要素が光っている「Kaeru St.」、
民俗音楽みたいな前半から後半のオルタナロックへの変化が痛快な「Akare/Prism」、
そしてアルバムでも屈指の名曲「Made From Nothing」は超シリアスな空気感に触れてるだけで心震える
何もない地点から必死にもがいているのが伝わるキャリアを代表する名曲に仕上がっています
最後を飾る「Too Bad/kubi」の素直なポップさとアウトロの神妙さもイイ。
個人的に推しなのは歌詞が意味不明に思えて実は何か意図があるのでは?と勘繰ってしまう
そういう絶妙な表現がツボでストレートなエレクトロソング「CCTV」ですね。
この曲みたいなメッセージソングに全く聴こえないけれど、
でも角度を変えると「うん?」って思えるような
そういう楽曲がもっと増えても良いのでは、と思えた位お気に入りの楽曲です
このアルバムは過去作と比べて明確にキャッチー、って訳ではないと思いますけど
でもキャッチーな音楽だけが全て、とは個人的にまったく思わないですし
聴く度に色々と発見や魅力を掴める豊かなアルバムだと感じます
一度好きになったら中毒性あって何度も聴いてしまうあたり今回もまた名盤だな。と思う訳です
確かに変化はしたけれど、根本のメロディセンスや格好良さは変わってないから慣れれば今まで同様・・・
いや、ある種今まで以上にディープでシリアスで、カッコ良い音楽に触れられる傑作かと
4年待った甲斐は確かにありました。今ここで堂々と太鼓判を押したいと思います。
「いつかはずっと来ないまま」 (Made From Nothing)
シリアスに人生に向き合いつつも、センスあるサウンドやボーカルで滑らかさも演出
結果的にそこまで気負わず聴けてディープな一面も同時に触れられるという絶好の作品になったかと
また一段階磨き上げられたLEO今井の音楽に是非触れて欲しいですね。