「おやすみ」
この歌は、歌い手が亡くなった姉の為に作り捧げた曲ですが
だからこそ通常以上に深い感情の変遷や情念が渦巻いている曲で
それは歌詞云々の話ではなく
半永久的に轟音が続くアレンジメントの時点でその情景が伝わる、そういった予備知識を得ずとも
この歌を歌うまでに至った背景が「何となく」で分かってしまう。一言では表し切れない複雑な一曲なんですけど
そうやって説明をしなくても、ありふれたメッセージ性に転換せずとも音だけで感情が伝わる
悲しみも、苦しみも、痛みも、空しさも、そこから生まれるポジティブも
代わりにもらった温もりも・・・
全てが降って来るように聴き手に伝わってくる
それはまるで感情のシャワーのようで、一人の人間のリアルな心情に直に触れているようで
今までに味わった事のない「感動に似た何か」が胸に残って沁み入る、
幻想的でありながら写実性にも満ちた楽曲で。
故人に捧げる曲は往々にして前向きなメッセージを中心に据えた楽曲になるものですが
この歌でナカノヨウスケは、本当は不安なんだよって胸中をサビの部分で堂々と明かしています
それがまた成す術のない無力さを直で表しているようで心の琴線に触れるんですけど
その上で、希望のない中で歩いて行こうとする様
なくなったものを認める様は
更に健気に聴こえて、再び琴線を大きく揺らしてくれる
一歩間違えばディープな内省ソングになってしまいそうな楽曲ですが
最終的には笑い泣き出来るようなネガポジの中間地点に落ち着く・・・その手さばきが何度聴いても見事で
不安の中を手探りで歩く身としては一時的に救われたような気分になれる、そんな一曲。
スロウテンポながら最大限に感情が込められた歌声もまたグッと来させられます。
ちょっと空しい気分になりつつも、
でも少しだけ生きる力を分けてもらえる。
レクイエムであり、確かな意思も感じさせる渾身のバラッド「おやすみ」。
きっといつまでも、ずっとこれからも聴いていくであろう稀代の名曲の一つ、です。
あの人は今空にとけて 僕を洗う この雨になった
僕を見ててよ 君に届くように歌うから
おやすみ/PaperBagLunchbox「LOST&FOUND~2006-2010~」収録