超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

日曜日/浴室

2009-10-25 22:45:29 | Ghost Apple全曲レビュー
日曜日もそろそろ終わりです。
そして一週間に渡ってお送りしたこの企画もこれでお終いです。
「Ghost Apple」毎日レビュー企画、最終回「日曜日/浴室」。


コンセプトアルバムの最後らしく、
完全に終幕を意識した曲です。
彼らの中では過度にドラマチックなサビも、
訴えかけるような詞も、
正しくこのアルバムのラストを飾る為に作られたような、
もしくはそうでなかったとしてもここに収まるべき必然があったような、
そういった曲に仕上がっていると感じています。


オルタナちっくなギターサウンドに乗せられて紡がれる二人の会話。
歌詞は全て会話形式、それも対話という形で描かれていて、
最後の最後に恋人と思われる側の、
主人公に対する一言でこの曲は締めくくられます。

ここまで書いといてなんですが、
この曲を正直に書くとネタバレしてしまう恐れがあるため
実際に聴いてみて下さい、と推奨の言葉でレビューも締めさせて頂きます。
やっぱり最後の言葉は直接聴いた方がいいと思うので・・・。

恐らく、一番言葉にする必要性がない曲だとも思います。



多分、この曲ってもっとアグレッシヴに歌ったほうが分かりやすく伝わると思うんですけど
あえて冷静に、神妙に歌い上げてしまうところが彼ららしいと思います。
表面上ではなく、奥底に眠るエモーショナルさというか。



という訳で一週間続けてきた「Ghost Apple」の全曲レビューもここまでです。
どうだったでしょうか?
個人的には中々楽しかったのですが、
興味ない人にとってはこんなん毎日やられても・・・という感じだったかも。


これからのPeople In The Boxの動向も非常に楽しみです。
具体的に言うとワンマンよろしく!
ちなみに、この歌は「再会」あるいは「再生」の歌ですね。個人的解釈だと。




土曜日/待合室

2009-10-24 15:40:24 | Ghost Apple全曲レビュー

今日は下北沢にライブ観に行くので早めに更新。
「Ghost Apple」毎日レビュー企画、「土曜日/待合室」です。



金曜日のキャッチーな音像から一転、
静かに染み渡るような音像へ移っていきます。
まるで心象風景をそのまま楽曲にしたような、とても純な一曲です。
歌声も素朴な感じで。


そう、意外にPeople In The Boxの中ではなかったタイプの曲なんですよ。
こういう等身大のメロディーラインってのは。
サウンドもそれぞれの楽器が淡々と鳴り続けているような至極シンプルなもので。
だからこそ、波多野裕文の声の少年性、イノセントさが際立つ出来にもなっているんですけど。


初めは単体で聴くには地味すぎるかな?と思ったんですが
何度も聴き込んでみるとこの神妙さや淡々としたリズムが段々自分のセンスにフィットしていく感じがあって
それが何とも気持ち良い曲ですね。
人によって印象が変わりそうでもあります。

バンドアンサンブルの息もピッタリで、特にアウトロの部分はもっと長くても良かったくらいですね。



詞に関しては、落ち着いているようで、どこかしら空しさのようなものが漂っています。
ちょっと覚悟が決まっている感じもするし、
何かを受け入れたかのような、悟ったような感じもします。


「光の駅のホームで 僕は始発を待った
 寝て起きると そこに君がいたらいいな」


「もう、やめようよ、って袖を引いてくれて
 ありがとう でも
 あと一錠だけ でも
 あと一錠だけ」


個人的解釈だとこれは現実逃避の歌。
それも、行き過ぎてしまって自らの生命も絶ってしまったような・・・?
そう考えると次にも繋がってきますかねえ。
にしても、本当想像力をかき立ててくれるなあ。


「世界中に電話 鳴る
 僕は、君は、いない
 音もなく、雨が降る
 僕はいない
 君はいない」


結局、二人とも「この世界」から消えてしまったんでしょうか。
最後、日曜日の浴室にて、大団円です。
ご期待は乞わない方向で。



金曜日/集中治療室

2009-10-23 23:42:50 | Ghost Apple全曲レビュー

私の心も治療して欲しい。集中治療室で。

それでは今夜もやります、「Ghost Apple」毎日レビュー、「金曜日/集中治療室」です。



個人的に変わらないPeopleの数少ない変わった点としてボーカル波多野の声がますます端正になってきたというか
声に艶が出てきた感じがするんですね。
それはPeopleの表現にとってはプラスなんじゃないかと思うんですけど
それが最も感じられる、発揮されてる曲がこの曲だと思います。
何故かキュートさまで孕んでますからね。
「ミイラにしてしまえ」のところとか。
しかしこんな素敵な声でよくこういう詞を歌うなあ。やはり波多野の存在は一線を画してますね。


前回の木曜日から一気にスイッチを変えて轟音のようなイントロから始まる金曜日。
いかし轟音なのはスタートだけで
その後はまるでワルツのような、スロウダンス出来るくらいの心地よいリズムで楽曲は展開されます。
どこかの国の眩い朝を髣髴とさせるような。イメージ的に日本ではないですね。むしろ架空っぽい。
そして最後に再び轟音のようなアンサンブルが鳴らされて一気に終わるという
シンメトリー的な要素も感じる楽曲です。
 いつも思いますがPeople In The Boxの楽曲構成は独特のものがありますね。セオリーを無視してるというか。
「失業クイーン」なんかでも何気にABABサビABサビBサビとあんまり聴かない構成やってたもんなあ。


歌に関しては波多野裕文の表現欲求が最大限に発揮された、
別世界に誘われるぐらいのスケープ感がとても気持ちよくて、
丹念に作られたメロディもスーッと心の琴線をすり抜けていくようで非常に滑らかな感触で聴ける曲。


が、詞に関しては全然滑らかじゃない!
むしろ色々な意味で引っかかりまくり。
聴き手の想像力を煽ってくれるという点では、この曲は最たるものがありますね。
「何があったんだ?」と単純に気になってしまうというか。
そう思わされたこっちの負けですね。



「さあさあ、集まれ 亡くしたものぜんぶ ここへ
 足のもつれた役者の為に 幕が上がる」

この一節は正に集中治療室を指しているのでしょうか?
別の解釈もありそうですけど。
てか正解はそれぞれの聴き手の感受性によりますね。


「運び込まれたモナリザはベッドで泡を吹いている」

これは主人公の愛する人の姿を表現した詞のように思える。



極めつけはこれ


「めちゃくちゃにして、やろうよ
 めちゃくちゃにして、あげるよ」



個人的に木曜日は空っぽになってしまった人の心境というか、無気力の人間の情景を切り取ったものと
そう感じているんですが、
この曲はそこから感情が蘇ったというか、
それも怒りの、どうしようもない事象に対する憤りを感じさせる、実は激情の一曲なのではないかと思います。
こんなにキレイな歌とリズムなのにね。正に表裏一体だ。


「ダメになった絵の中の国で
 僕らの困ったように笑う姿は 
 溶けていったよ
 消えていくよ」



土曜日なんて来る訳ない~♪というメロディが浮かびつつも、確実に土曜日は来る。
消えていく二人の次なる背景は。
待合室で、また。




木曜日/寝室

2009-10-22 23:49:56 | Ghost Apple全曲レビュー

木曜日は寝室で。「Ghost Apple」毎日レビュー企画でございます。


「木曜日/寝室」です。もうすぐ眠りにつくころですかね、皆さん。丁度良いですね。



ギターの音色が壊れたおもちゃのようなイメージを彷彿とさせる、今作でも唯一不穏さを感じさせる曲。
この「Ghost Apple」というアルバムは
サウンドはポップ、歌詞は混沌という相反する部分が面白い作品なんですが、
この曲に関してはサウンドも詞も混沌という、正にアクセントとなるべく配置された楽曲だと感じます。


カタカタ一定のリズムで刻まれるギター、それについていくように鳴り続けるリズム隊、
と思えば時折リズムを崩して一気にガラガラと音が変わって、
それを繰り返しつつ、そのまま何もなく終わっていく。

しかし最後の部分で若干音が妙な崩れ方をするんですよね。
本当に何かが壊れてしまったかのような。
注意して聴いてみると、それが個人的なツボに嵌ったり。インタールード、アクセント的な役割を持ちつつ、
単体で聴いても面白い曲です。


歌詞については、


「これ誰かの夢だ!」


この一小節が、全ての意味を引き受けているように思います。
この歌は、白昼夢の歌かな。
泥のように眠っている。何もする気がない。無気力そのもの。



そんな状態のまま、金曜日へ。
集中治療室で再見。




水曜日/密室

2009-10-21 23:30:04 | Ghost Apple全曲レビュー

水曜日といえば密室。
密室といえば水曜日。
という訳で「Ghost Apple」毎日レビュー企画、「水曜日/密室」です。


この「Ghost Apple」というアルバムは聴き込めば聴き込むほど面白いですね。
意図してそういう風に作られているというか。
バンドサウンドの妙も、聴く度に新たな発見、面白さがあったり。
この曲にしたって後半のドラムパートが非常に刺激的だったりしますからね。それでいて一体感にも混ざっている。
やはり個々のプレイヤーとしての技量が凄いっすわ。



この曲はアルバムで一番テンポが速く、パワーポップのような印象も受けるキラーチューン。
それでありながらどこか原風景、憧憬を思い出させるような奇妙な懐かしさも内包しているという
個人的に今作でもかなりお気に入りの曲です。単体で聴いても染みる。


そしてこの曲のモチーフになっているのは恐らく遊園地。
「おもちゃの兵隊」
「メリーゴーラウンド」
「リュックサック」
と、それを彷彿させる単語がいくつも出てくるのと、
この曲に於けるバンドサウンドがジェットコースター的というか、
ガーッと勢いに乗るような流れに仕上がっているんですよね。どんどんと言葉とメロディが溢れ出してく感じ。
それもありつつ、やはり遊園地的なモチーフを感じ取れます。


或いは、何かの走馬灯のような印象もありますね。
最後に浮かんだ思い出の羅列というか。
「迷いの庭で天国夢見る」
「大丈夫、もう からだの声に毒されているから」
「密室の蝶みたいだよ 君の祈りは」
「僕らは楽し過ぎたから 動けなくなった」
と、不穏な言葉も同時に並んでいるので。
「溢れ出した 赤いミルク 白い血」というあからさまに悲惨なフレーズも。


個人的な考えですが
月曜日が何らかの障害で、火曜日がそれによる自暴自棄ならば、
これは必死に思い出にすがりついている歌というか。或いは、願いの歌。
「いつか結婚しようね」という詞が何故か無性に切なく感じてしまう。



アルバムで一番ノスタルジックな一曲。 そういう気分の時に聴けば、一層に染みるはず。出色の水曜日です。



では、寝室にてまた逢いましょう。眠りに着く頃に。