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アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

映画「魂の行方」

2023-07-12 00:15:26 | 映画とドラマと本と絵画

  2017年のアメリカ映画。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%82%E3%81%AE%E3%82%86%E3%81%8F%E3%81%88_(%E6%98%A0%E7%94%BB)舞台はアメリカ北部と南部の境のあたりにあるらしい田舎町。その町にある古い教会の牧師が、イーサン・ホーク扮する主人公です。彼は息子をイラク戦争で亡くし、妻に去られた孤独な男。アルコール依存症になっています。

  その彼のもとへ、一人の女性信者から、夫に会ってくれと頼まれます。彼女の夫は環境活動家。精力的に各国の調査や反対活動に携わっているのですが、妊娠した妻に、「子を産むな」と強く迫っているというのです。理由は、急激な異常気象に対しての不安。将来子供が成人した時に、彼はきっとひどい世界で生きざるを得ず、そんな世界に送り込んだ父母を恨むだろう。子供にそんな思いをさせたくない。彼の懸念には十分現実味があることを、牧師は理解します。

  妻の要望は、絶望の底に沈んでいる夫を助けること。でも、牧師は、地球と人類の未来に絶望しか見いだせない夫を説得するすべを持ちません。

  舞台は、田舎の教会と彼の部屋、主人公の属する大きな教会、若い夫婦の家、あとは周辺の公園などだけ。登場人物は少なく、お金はたいしてかかっていない。でも映像がすばらしい。色調をおさえ、撮られるものはなんてことないのに、センスがいい。一つのショットを映す時間も、よくよく計算されているように思う。

  激しくなる一方の気候変動と、大企業による環境汚染。子供たちに豊かな地球を残す、なんてほぼ不可能としか思えなくなりました。世界を造った神に対する冒とくと言った文言も出てきました。一方、人間がここまで追い詰められているのに、神は救いの手を差し伸べないとの嘆きも。ノアの箱舟の話も出てきます。

  最後は、この不安な時代を生きる私たちに、「あなたたちはこれからどうするのだ」との問いを突き付けているように感じました。重い映画でした。

  

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映画「ラストレター」

2023-02-27 22:09:58 | 映画とドラマと本と絵画

  「チイファの手紙」の日本版。ラストレター (映画) - Wikipedia 岩井俊二監督が、中国、日本、韓国の三つの国で、同じ題材の映画を撮りたいと考えてできた、その二つ目。筋はほぼ同じ。出だしはちょっと違います。中国では葬式、日本版は初七日か忌明けらしい。

  中国版だけを見ていた時は気が付かなかったのですが、日本版の方は不要の部分がそぎ落とされていて、見やすくなっていました。不要だったな、ということが日本版を見てわかりました。

  ヒロインは妹役の松たか子なのですが、中国版に比べると人物造形が明瞭で、わかりやすい。その分、神秘的な部分が消え、ヒロインというより、広瀬すず扮する彼女の死んだ姉の娘(姪)のわき役に思えました。中国版はこの娘とヒロイン(チイファ)の娘(従妹同士)とがぼんやり重なるかのような印象でしたが、日本版はきちんと描き分けていて、広瀬すずの美しさ、けなげさを全面的に前に出している感じでした。

  中国版と違っているのはもう一つ。松たか子の死んだ姉と暮らしていた得体のしれない男(豊川悦司)と、小説家(福山雅治)とのシーン。中国版では、男の方は、小説家や死んだ妻に対するコンプレックスをあらわにして応酬し、挙句の果て殴り合いになったのですが、日本版にそのシーンはありませんでした。国の事情を考慮したのかな。

  つぎは、韓国で撮るとの話。どんな映画になるかに興味はありますが、監督がなぜ、同じあらすじの映画を三か国と撮りたいと思ったのかは、推測できません。

  

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映画「チイファの手紙」

2023-02-07 23:44:07 | 映画とドラマと本と絵画

 岩井俊二監督の2018年公開の映画。中国が舞台で、役者もすべて中国人。https://www.bing.com/search?q=チイファの手紙

 映画は葬式から始まります。喪主は中学生か高校生くらいの女の子と小学生くらいの男の子。死んだのは彼らの母親。その母親の妹・チイファがヒロインです。彼女は姉のところに届いた通知で中学の同級会が開かれるのを知り、会に出席します。そこで出会ったのは、姉を好いていた男子同級生。彼から声をかけられた彼女は逃げるようにしてその場を去ります。

 ところが帰宅後、チイファは彼にもらった名刺の住所あてに、姉に偽装して手紙を書きます。それから始まる二人の文通。

 実は、チイファは、中学校時代、彼のことが好きで告白するのですが、一途に姉を想う彼に一蹴されたことがあります。だから、姉に扮して彼に手紙を書くことは、彼女にとっては果たせなかった恋が実ったかのような錯覚を持たせてくれるひとときだったのです。夫と不仲というわけではなく、家庭はほぼ円満なのに、ひそかな楽しみにのめりこんでいきます。

   纏綿とした情緒が漂ういい映画でした。岩井俊二の映画は「Love Letter」しか見ていませんが、あのせつない雰囲気によく似ていました。子供たちもかわいい。街の様子もいい。監督は、この映画を、日本、韓国、中国でそれぞれ撮りたい、といっているそうで、その第一弾がこちら。第二弾の「ラストレター」は、「チイファの手紙」公開の2年後の2020年にできています。検索したら、あらすじは同じ。三つの国でそれぞれ撮ることにどんな意味があるのか、ちょっと想像できません。でも、近々見ます。

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本「日本人という、ウソ」

2023-02-07 15:55:01 | 映画とドラマと本と絵画

  数年前に読んだ本ですが、紹介しそびれていたので書きます。著者は社会心理学者の山崎俊男。題名に惹かれて読み始めましたが、なるほどと思えるところがいっぱい。軽く読める一冊です。

  たとえば、こんな項目があります。

  「日本人は「会社人間」か」

  筆者は「日本独自の「和の文化」が、日本人の愛社精神や滅私奉公の精神を作り出した」という話は、「眉ツバ」で、戦国時代、足軽から大名まで、武士たちはみな実力守護。主君が自分の能力をきちんと評価してくれないないなら「さっさと見限って転職するべしということが戦国時代の常識であったといいます」。

  本当に自分の会社を愛しているなら、業績が落ち込んだときには「率先して自分たちの給料を下げてくれと願い出るのが当然で」、「会社の存続こそが大事と考えてこそ、本物の会社人間というものでしょう」。

  そこまで忠誠心を持っていないのに、会社のために懸命にはたらく理由は、筆者によれば次のようになります。

  「日本のサラリーマンが会社に忠誠心を示すのは、そうやって振る舞うことが日本の社会において最も適した行動であるから」つまり、「忠誠心を示したほうが何かとトクをするから」会社人間になったというわけです。

  でも、近年、功序列制度や終身雇用制が壊れ始めると、転職は当たり前になり、非正規の社員も増加しています。だからいわゆる「会社人間」が一気に減ったと思われます。「結局のところ、「日本人らしさ」とはけっして普遍のものではないし、日本独特のものでもない」と断言します。

  本書で、印象に残っているエピソードがあります。

  アメリカの大学生と日本人の大学生を対象にした調査結果。ボールペンをいくつか見せて好き嫌いなどを答えてもらいます。アメリカの大学生たちは、個性的で目立つボールペンを選ぶ人が多く、日本の大学生は地味な目立たないボールペンを選ぶ傾向があるのですが、それは表向き。つまり、他人がいるところで選ばせると、日本人は地味なものを選ぶ。でも、個別に意見を聞くと、アメリカの大学生も日本の大学生もほぼ同じく、派手めなものが好き、という結果が出たのだそうです。

  「他人が見ているかどうか」が判断基準を左右するというわけ。上記の「会社人間」同様、人と同じように振る舞うと得するとおもう、そういう人が多いということなのでしょう。ほんとに「得」するかどうかは、今の時代、簡単にはわからないとおもうのですが、考えはなかなか変わらないかもしれません。

 

 

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映画「豚と軍艦」

2023-01-26 22:53:00 | 映画とドラマと本と絵画

  しばらく前に、1961年公開の、今村昌平監督の「豚と軍艦」を見ました。豚と軍艦 - Wikipedia

  舞台は米軍基地のある横須賀。戦後15年たち、高度経済成長期に差し掛かるころなのですが、基地のある横須賀は、米軍相手の娼婦とその娼婦たちを組織するやくざ、中国系やくざ?や日系のやくざなどが利権を争っています。

  経営していた娼館に手入れが入り、資金源を失った地元やくざは、米軍の残飯を手に入れて養豚業をはじめます。長門裕之ふんするチンピラの欣太が主人公。彼は豚の飼育の役目を負わされます。彼の幼馴染み春子の姉は米兵のパンパン。春子も姉や母からパンパンになることを半ば強要されています。二人の家は、みすぼらしい掘立小屋。欣太と春子はお互いに好意を寄せていて、まずしくて汚れた生活から足を洗いたいと切望していますが、ふたりの夢は同じようにみえて違っています。

  欣太が望むのは一攫千金を手にすること、春子の望みは二人で堅気の仕事をしてつましく暮らすこと。

  やくざの組の古株が、分け前をもらおうと地元に戻ってきます。彼を邪魔に思う組長は、組員に命じて彼を海に沈めて殺します。しかしじきに古株のやくざは浮かんできて警察の知るところとなり、欣太とやくざたちはすきを狙って死体をそっと運びだします。ところがある晩、みんなで食べた餃子?の中から欠けた歯がごろっと出てきます。死体を埋めるよう頼まれた組員が、面倒くさがって死体を豚舎に放り込んで豚に食べさせたのです。やることが粗雑で無茶。彼らのありさまを描いた滑稽で、情けないエピソードの一つです。

  すったもんだの末、地元のやくざは争いに負け、頼みの米軍の残飯も手に入りにくくなります。しかも組の金は組員がごっそりネコババ。踏んだり蹴ったりの欣太とやくざたち。ラストに近いシーンでは、豚をぎっしり積んだやくざの数台のトラックが横須賀の街の真ん中で立ち往生。豚の中に潜んだ欣太の逆上で豚が逃げ出し、通りを歩く人々に構わず走り出し、追いかけるやくざたちを踏みつけにします。このシーンは圧巻です。街にあふれる貪欲な豚は、彼らそのもののようででもあり、彼らを踏みつけにする中国系やくざたち、あるいは置いてきぼりにする一般市民のようでもあります。

   そして、何回か写される海に浮かぶアメリカ軍の軍艦と娼婦と戯れる米兵の姿は、終戦直後の風景が15年たっても変わっていないことを表しているようです。

   映画の公開された1961年は、安保条約が改定された翌年。最近知人に借りて、立て続けに、マンガ「日米地位協定」、マンガ「知ってはいけない」、「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていることー沖縄・米軍基地観光ガイド」を読んだところ。安保条約と日米地位協定が、日本の法律を越える存在であることを、いやというほど知らされました。60年前にできたこの映画は、いろんな意味で見ておいたほうがいい映画だとおもいます。勉強になりました。ただし、古い日本映画のご多分に漏れず、発音が聞き取りにくいのが難点です。

 

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本「捨てないパン屋」

2023-01-24 17:50:21 | 映画とドラマと本と絵画

  広島のパン屋ドリアンの店主、田村陽至さんの著書。ドリアンは、大きなパンを薪窯で焼いているパン屋さんです。本書は、パン屋の三代目である彼がたどり着いた、パンとパン屋の形をつづったものです。

  「はじめに」を読めば、本書で彼の言いたいことがほぼわかります。

   「社会から「ありがとう」と言ってもらえる仕事をして、しっかりお金も儲かって、かといって長時間労働せず、ほどほどに働いて、時間にゆとりがあって長期休暇もとれる。そのような働き方が理想なのかもしれません」

   彼はヨーロッパ諸国のパン屋で働いたり、一般の人たちの家に泊まったりして、パンを通じて幸せになる働き方を調べて回りました。その後帰国して、これまでのパン屋とは違うかたちのパン屋をはじめました。

   どこが違うかというと、「徹底的に手を抜く」ということ。20種類ほどあったパンの種類を4種類に減らし、しかもいずれも500gから1キロの大きなパン。具なし。代わりに、材料は有機無農薬国産の小麦粉を使い、自家製のルヴァン種で発酵させて、窯は石窯に変えました。

   こうすることで、焼く量はこれまでと変わらないのに、従業員が不要になり、店番の妻が一人いればやって行けるようになりました。人件費や具材の節約ができるので、これまでの小麦粉の2倍もする小麦粉を使っても売値を抑えることができる。大きいので、一見すると高いようにみえますが、彼によれば「グラム単価でみれば、スーパーで売っているバケットと同じ値段」なのだそうです。

   これは、ヨーロッパのやり方を真似ただけ、と彼はいいます。「ヨーロッパでは、パン屋もほかの商売も、会社も、はては公務員や政治家まで、こんな感じの「素敵な手抜き」の良いループを描いているのです」「「手を抜くことによって質を向上させている」からです」

   近頃のパンブームで、テレビでは目新しいパンをいろいろ紹介しています。本書を読むと、だいぶ前から、まるでファッションのように、パン業界では「今はこれがはやる!」といった調子で目新しいパンが次々に登場し、パン屋はその「流行」に追われるようにして品数を増やし、挙句の果て過重労働にならざる得ないのだそうです。そういう状況からすっぱり縁を切った彼。縁を切って舵を切り替えたからこそ、今や年商2500万円のパン屋になった、ということです。

   共感する点や勉強になることがいくつもありました。なかでも、私が知らなかったのは、ヨーロッパのもともとのパンは酵母菌ではなく乳酸菌発酵だということ。

   タンパク質であるグルテンは乳酸菌によって分解されるけれど、酵母菌は分解しない、というのです。つまり、昔から小麦を食べていたヨーロッパの人たちは、からだによくないグルテンを徹底的に乳酸菌で分解することを体験的に学び、パン作りを進化させていった、というわけです。

   「昔ながらのパン作りは、乳酸菌が主役の発酵。そんなパンは食べても消化不良を起こしにくいのです」

   彼が作るルヴァン種は、酸っぱいパン種。「乳酸菌が増殖している」からです。乳酸菌と酵母菌が程よく合体したのがルヴァン種だそう。これまでわたしは、単に小麦やライ麦から起こした種、という認識しかありませんでしたが、そもそもの菌が違うとはおどろき。

   とはいえ、ルヴァン種は自家製のフルーツ酵母よりさらに手間がいりそう。でも、ネットで検索してみたら、私が使っているホシノ酵母とヨーグルトと小麦粉で、普通より簡単にこの種ができる方法が載っていました。名付けて「ホシノルヴァン」。本物には程遠いかもしれませんが、まずはこの冬、ホシノルヴァンを作って、パンを焼いてみたいな、と思いはじめました。

    ところで、たまたまこの本を読み始めたころに、前から頼んでいたドリアンのパンが届きました。二回目の注文です。大きなパンが、ビニール袋にどさっと入っているだけ。おしゃれなシールも、しおりもリボンも何もありません。あるのは、納品書と原材料表示とパンの食べ方と、毎月書いているらしい彼のエッセイ。

   今回は、冬だけ製造するパンデピスを食べたくて、友人たちと共同購入しました。パンデピスはバターをつかわず、スパイスと蜂蜜と黒糖の入ったしっとりしたケーキ。ヨーロッパのパン屋で学んだパンデピスだそうです。本物を食べたことのないまま、米粉とみりんでパンデピス風のケーキをつくっているので、勉強にと思って取り寄せました。

    ほかのパンはどれも、じわじわと味わい深いものばかり。ルヴァン種発酵独特の酸っぱさが特長です。バターやチーズと食べると、おいしさ倍増。賞味期限は一週間と長めです。大雪注意報が出ているいま、ちょうどよい食料となりました。

 

 

   

  

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映画「レイジーマン」

2023-01-24 15:00:27 | 映画とドラマと本と絵画

   ナマケモノ倶楽部主宰の辻信一氏が監修した、タイの少数民族、カレン族の長老ジョニとその子供たちに取材したドキュメンタリー。

   「レイジーマン」とは英語で怠け者のこと。カレン族に伝わる民話に登場する、稀代の怠け者ジョッカルに由来します。このジョッカルは、三年寝太郎同様、寝転がっているだけで食べるのすらめんどうくさがる。果物の木の下に口を開けて寝転がり、果実が落ちてくるのを待つ。喉が渇けば雨のしずくを口の中で受け止めることができるまで待つ。日本の寝太郎と違うのは、いざというとき頑張る寝太郎と異なり、ジョッカルは雨水のしずくが自分の口の中に落ちるのを邪魔した虹に腹を立て、虹に向かって刃物を投げつけて欠けさせてしまう。その虹のかけらが草を刈り、畑を耕し、実りをもたらしてくれる。そして最後に彼は王様に。あくまで自然の何かが彼にしあわせをもたらす話になっています。

   ジョニは、この話を「自然と共生するカレン族の教えが込められている」といいます。

   カレン族は長いこと、森に暮らし、その森で焼き畑農業をおこなって生活してきました。しかし、近代化が進み、焼き畑農業は自然を破壊する行為と目され、森の木々は伐採されてコーヒーなどのプランテーション化が進みました。化学肥料が施され、大量の農薬がまかれ、単一作物の栽培が奨励されました。コーヒーの次は、遺伝子組み換えトウモロコシ。家畜の飼料にするためです。木々のなくなった丘は土砂崩れが起き、村人は飲み水にも事欠くようになりました。トウモロコシは立ち枯れし、農民たちには借金ばかりが残りました。

   こうした中、ジョニの息子は、コーヒーの栽培を始めます。栽培法は、以前とは大違いのもの。森の木々の木陰に植え、日陰の植物として育てます。すると、無肥料、無農薬での栽培が成功し、村の産物として成り立つようになりました。名付けて「レイジーマンコーヒー」。ジョッカルが口を開けて作物の実りを待ったように、あえて人間の手を施さず、自然の共生を壊さずに実りがやってくるのを待ったのです。ジョニは、「今こそ、カレン族の教えを全世界が知るべきだ」といいます。

   地味なドキュメンタリーですが、世界中の森が危うくなっていて、少数民族の暮らしが成り立たなくなっている現状と、世界規模の趨勢に抗して、なんとか自分たちの文化と暮らしを守るべく奮闘している人たちのいることを知ることができました。ジョニの末娘は、都会暮らしを経験した後、村に戻り看護師として働く一方、村に伝わる伝統的な自然療法を施すセンターを建設し始めています。屈託のない彼女の笑顔は、美しく印象深いものでした。

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マンガ「日米地位協定」

2023-01-06 23:44:03 | 映画とドラマと本と絵画

  マンガですが、半分以上が文章。マンガだから手っ取り早く勉強できると思ったら、案に相違して、重い! あまりに知らないことが多すぎて驚愕の連続です。

  日米地位協定の存在を知ったのはわりに最近のこと。 「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」 - アンティマキのいいかげん田舎暮らし (goo.ne.jp)を読んで、日本は到底独立国と言えないのではないかとおどろいたのですが、本書でさらにその感を強くしました。

  さて、簡単に紹介します。

  本書の主人公の女子高校生は、父親が遭遇した交通事故の加害者が米軍の兵士だったことから、日米地位協定の存在を知ることになります。

  米軍兵士の側に事故の責任はあるのに、保険は効かないと保険会社に言われて、主人公一家は驚きます。兵士は休暇中であったにもかかわらず、勤務時間内での事故とみなされ、罪は免れたのです。在日米軍基地の米兵が勤務中に罪を犯しても、日本の法律ではさばけません。近代日本史で習った「治外法権」がいまもまかり通っているのです。

  地位協定によってまかり通っている大きな事柄の一つが、「横田ラプコン」。

  「東京の西半分から栃木、群馬、埼玉、神奈川、静岡、山梨ーー 長野、新潟にまでまたがる巨大な空域がアメリカのものなんだよ」「富士山が・・・ あの空が日本の物じゃねェなんて・・・」

  主人公たちは羽田空港で、大阪からの飛行機が西からではなく、南からやってくるのを目撃します。「西からだと横田ラプコン内を通過することになる。だから房総半島の南まで来て大きく北に旋回して着陸するんだ」

   基地で使う燃料漏れなどによる横田基地や嘉手納基地周辺の川の汚染もひどい。

  「2016年、沖縄県は基地周辺の川から高濃度の発がん性物質を検出して、一億7千万ものお金をかけてこの物質を除去した」が、その防衛局に費用を請求しても「米軍と発がん性物質の因果関係は確認されてない」と拒否。地位協定のせいで、日本は米軍基地への立ち入り調査もできません。日本同様に敗戦国であるイタリアやドイツでは、自由に立ち入りができ、賠償もさせている事柄が、日本では「賠償どころか責任も認めてもらえない」のです。

  講和条約発効後から実に70年にわたり、この地位協定を存続させているのは、「日米合同委員会」です。主な構成員は外務省や財務省、農水省などの官僚トップと在日アメリカ大使館のトップ、それに在日米軍のトップ。官僚は、県知事ですら簡単に会えないほどの高級官僚なのだそうです。それなのに、驚くことに、日本の政治家もアメリカの政治家もこの委員会に属していません。

  「戦勝国の軍人が敗戦国の官僚を呼びつけ、今後の日本の運営方針を命じているのに他ならない」

   本書は、軍事知識を身に着けることを説いています。「軍事の知識を学ぶことは、戦争や軍国主義を美化する事とは違う。ウイルスについて何も知らなければ感染症とは戦えん」「平和を尊び、戦争を遠ざけ軍国主義を断固拒否するために軍事知識は必要なのだ」

   そして、日本の自衛隊の能力がほんとはかなり優れていて、日本は軍事大国なのだということを、かなり強調していますこの論調には賛否両論ありそうですが、どちらにしても、現実を忌避するのはいいことではなかろうとおもいます。

   ところで、蛇足ですが、この本は小学館から出ているのに、やたら誤植が多い。ちゃんと校正する暇がないままに出版を急がせたのだろうか、とちょっと気になりました。

   

  

     

 

  

  

 

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映画「メアリーの総て」と「フランケンシュタイン」

2022-11-29 14:05:14 | 映画とドラマと本と絵画

  わりに最近の映画「メアリーの総て」メアリーの総て - Wikipediaを見たので、そのあと、昔見たような気もするけれどまったく覚えていない映画「フランケンシュタイン」を借りました。

  まず「メアリーの総て」から。この映画は、「フランケンシュタイン」の原作者メアリー・シェリーの伝記。初めて知ったけれど、彼女の父親はアナキストの先駆者と言われるウイリアム・ゴドウィン。彼女を生んですぐ死んだ母親はフェミニズムの先駆者と言われるというメアリー・うるストンクラフト。ゴドウィンは有名だったにもかかわらず、売れない古本屋の店主として、貧しい生活を余儀なくされていました。

  厳格で無神論の父親の目を盗むようにして、メアリは幼いころから妖精やお化けの話を創作しては、義弟妹を面白がらせていました。その彼女が16歳ころであったのが詩人のシェリー。二人は恋に落ちますが、シェリーには実は駆け落ちしてまで一緒になった正妻がいました。

  義妹は詩人バイロンにもてあそばれて妊娠。彼女は、借金取りに追われた夫とともに雨の中夜逃げしたため、幼い子供を病の末死に至らしめました。そして、正妻は川に身を投げて自殺。当時の常識とは逸脱していた亡き母の行動にいまだに眉を顰める輩たち。

  義妹や夫とともに滞在していたバイロン卿の別荘で、ある晩、その場にいた男女にバイロンが怪談の創作を提案します。そのことがきっかけになって、帰宅後、メアリーが一気に取りつかれたように書き上げたのが、「フランケンシュタイン」。科学によって死者をよみがえらせるという無謀な行為を成し遂げたフランケンシュタイン博士と彼の作った「魔物」の物語です。メアリーのうちに眠っていた創作意欲は、彼女の知力と経験と怒りによって「二人」の物語を作り出しました。18歳の時の処女作です。

  優しげだけれど気弱にみえるシェリーに対して、はちゃめちゃなバイロンはおもしろかった。与謝野鉄幹の詩、「ああ、我ダンテの鬼才なく、バイロン、ハイネの熱なくも」のあのバイロン。なるほど、「熱」の人なんだなと納得。

  「フランケンシュタイン」フランケンシュタイン (1994年の映画) - Wikipediaのほうは、1990年代のアメリカ映画で、ロバートデニーロが「魔物」。博士は自分が作ったものなのに、できた途端おそろしくなり、魔物をほったらかしにしました。一人にされた魔物は、醜いがゆえに迫害を受けながら世界のことを学んでいきます。そして博士に対する復讐を誓って放浪します。最後は悲しい。

  原作は昔読んでとてもおもしろかったのですが、細かいところまでは覚えていません。ただ、この映画のように女人造人間は登場していなかった。他にもたくさん創作があるように思いました。それでも十分楽しめる映画でした。

  映画の撮り方も素晴らしい。切り替えがうまいし、博士の家のしつらえはファンタジック。娯楽作品としてよくできていました。

 

 

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映画「マージン・コール」

2022-11-21 23:16:48 | 映画とドラマと本と絵画

  リーマンショックを引き起こした、アメリカの大手投資銀行リーマンブラザーズをモデルにした映画。マージン・コール - Wikipedia

  ある大手投資銀行で大量解雇が言い渡されるところから、映画は始まります。管理部門にいた人物も解雇宣告を受けます。彼は会社を出る時、部下にUSBチップを渡します。その晩、この部下がチップを解析。そこで、会社が重大な危機的状況にあることを知ります。

  解雇された人物は、会社の状況についてずっと調査していたのです。その大事な仕事をした彼を突然解雇。彼のしていた仕事を把握しないまま、機械的に解雇したのです。こういうことにまずびっくり。

  深夜にもかかわらず即刻開かれた役員会。彼らが最終的に決定したのは、無価値となった株?をいち早く売り切ることで会社を救うこと。それは顧客を裏切る行為になり、市場を混乱させるとわかっているのに、実施に踏み切ります。裏切りを避けて別の方法をとろうと模索する主人公。でも結局は会社に従わざるを得ません。

  短時間で解析をやってのけた若手社員は、技術者から転身した人。驚いたことに理系の優秀な頭脳がこういう会社にたくさんいて、年齢に比して相当の高給を得ていること。年収の高さに惹かれて転職した人達ばかりのようです。

  彼らの先輩にあたる30代の男性は、何千万だったか何億だったかの年収を得ています。でも、満ちたりていない。

  リーマンショックは、サブプライムローンが破綻したことに端を発しています。このサブプライムローン、当時リーマンショックが起きる前から、危なっかしいしくみだなとぼんやり思っていました。投資のことなどほとんどわからないのですが、住宅ローンを証券にして運用するとは、なんだかすごい綱渡りに思えました。だから破綻した時、「やっぱり」と思った記憶があります。

  ともあれ、映画はよくできています。大量解雇の日の夜から就業開始の時まで、リアルタイムで社員や役員たちの動きを追っています。大都会の高層ビルの中で起きた、世界を揺るがす大事件。わからない術語がたくさんでしたが、現在がとんでもなく複雑なことになっているらしい、ということだけは、なんとなくわかりました。

  

  

  

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