アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

夏の保存食いくつか

2014-07-30 13:36:14 | 手作りのたべもの
   先日、友人から赤ジソを大量にもらいました。いったん採取したあと、再度そだった葉っぱなので、梅漬けよりシソジュースのほうがふさわしい、との友人の助言どおりに、シソジュースを作ることにしました。

   シソジュースは毎年、赤ジソが手に入ったときに作りはするのですが、日持ちしないのでいつのまにか冷蔵庫の中で変質しているのが常。なんとか長持ちできるジュースのレシピがないかなと思ってネット検索してみたら、濃縮版のつくり方が載っていました。少量の水に大量の葉を入れて煮出し、砂糖とレモン果汁を加えたものです。

   もちろん、水を入れたジュースなので、シロップのようにさほど長期間は持ちません。でも、量はさほどできないため冷蔵庫の場所もとらないし、冷凍もできそう。ただいま、煮出して荒熱を取っているところです。

   隣のコンロでは、ショウガシロップとジャムを作りました。フードプロセッサーで細かく刻んだショウガを水とてんさい糖で数分煮て、レモン果汁を加えました。漉してからシロップとショウガかすにわけ、かすのほうを鍋に戻してさらにてんさい糖を少し加え、水分を飛ばしながら加熱。食べてみて硬さがなくなったら、ジャムのできあがりです。

   前にショウガジャムを作ったときは新ショウガだったし、シロップという副産物をつくろうとは思わなかったので、だいぶ味も食感も異なりますが、十分いける。こちらは、スコーンかクッキーの試作に使うつもりです。うまくいったら、近いうちにジンジャークッキーかジンジャースコーンが登場します。

   日曜日に開かれた福蔵寺のご縁市で購入した、豊田市旧旭地区にあるスパイスメーカー・ニランジャンさんのスパイスミックスで作った調味料。右から香り醤油、スパイシーオイル。オイルには、西尾市のほうろく屋の圧搾菜種油をつかいました。どちらも1,2週間置いておいたほうがよいようですが、できあがるのがたのしみ。

   一番左はカレーミックス。種々のスパイスに塩を混ぜたもので、いろんな料理に利用できそうです。こちらのカレー粉は香りがよくて、新鮮なのがうれしい。やまのぶ梅坪店でも売っています。

   さて、もう7月も終わります。今年は春からずっとあわただしくしていて、なかなか外の仕事ができなかったのですが、やっと昨日敷地内の梅の実をとることができました。鎌を片手に、雑草を刈りながら梅ノ木に辿りつき、なんとか採取しました。熟しすぎたものも多いので、ひとつひとつ選別しながら、なににするか考えるつもりです。
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福蔵寺ご縁市に出ます。

2014-07-25 00:07:32 | イベント出店情報とそのほかのお知らせ
   豊田市旭地区の福蔵寺で開かれるご縁市。年に2回~3回のお祭りなのですが、しあさっての27日、10回目の縁日が開催されます。

   わたしは3年前の第一回目から欠かさず参加。今度も、奥三河Three trees+として出店します。アンティマキは、穀物クッキーや捏ねないパン、スコーンのほか、新作の米ぬかクッキーも持って行きます。ゆきえさんの石けんも初登場します。

   お寺にいたる参道の坂道では、地元の方による流しそうめんが。五平餅や手打ちうどん、梅乃屋の石窯で焼いたパン、m-easyのピザ、市街地にお店を構えるアナムのフェアトレード商品、徳八農園の無農薬野菜、てくてく農園の平飼い卵、瀬戸の豆腐屋しろのおいしい豆腐屋あげ、小黒さんの整体、ニランジャンのカレースパイス、足助バンバン堂のカキ氷そのほか、たくさんのお店が並び、豊かな品々がお目見えします。

   本堂の縁側にしつらえた舞台では、合唱やバンド演奏、落語などが披露されます。夏の一日、山里の小さなお寺で繰り広げられるなごやかな市、ぜひのぞいて下さい。

    *日時 7月27日(日)10時~2時
    *場所 豊田市旭地区 太田町 福蔵寺

   
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麦刈りしました。

2014-07-16 16:06:00 | こめこなクラブ
  もうそろそろ麦刈りができそう、と思ってから半月以上たって、昨日、やっと大野瀬町・大桑の畑の麦刈りに行くことができました。

  台風8号、突然の大雨などなどで、畑はこんな状態に。草は、雨の降るごとにどんどん麦より伸びてしまいました。

  麦を育てて3回目。今年は大粒のぷくぷくした麦粒になったので、きっといい粉ができるだろうと期待していたのですが、最後の最後になって、刈り取り時期を逸してしまいました。

  それでも、落穂は多少ありはしますが、かろうじて穂に粒はついています。わらは触るとすぐ折れてしまうほど乾燥しているので、そっと手にとり、鎌で刈ります。草をかきわけての作業なので、たいして面積はないのに、けっこうな時間がかかりました。

  なかには、穂が地に付いて新芽がでたものも。こんなのはじめてみました。

  茎がポキポキ折れるので、穂だけになったのもたくさん。はざにかけて干すことができないので、シートの上で干すつもり。それができなかったら、鶏の餌になります。

   昨日は、標高700mの大桑でもかなりの暑さでした。外仕事に慣れないわたしは、ともすれば心臓がおどるので、何度も休み休み仕事しました。

   こめこなメンバーのご主人が作ったスイカ。筒井重之さんの家の、湧き水を引いている池で冷やしました。あまくておいしい! トウモロコシも彼が友人たちと作ったもの。自家採取した種を育てたそう。スイートコーンなのでしょうが、穀物の味のするしっかりしたトウモロコシでした。こういうコーンが食べたかった。

    持参のストローが折れたので、正真正銘の「ストロー」でジュースを飲むMちゃん。私が小さい頃は、田舎の親戚に行くと、このストローでシャボン玉をやらせてもらいました。一緒に作業した同世代の友人は、このストローでヤギの乳を飲んだのだとか。

    友人のご主人作の麦わら人形。稲わらではないけれど、わら人形というものをじかに見たのははじめてです。

    さて、なんとか麦は刈り終え、筒井さんのハウス内に設置したはざに干しました。来週か再来週にはとりあえず脱穀を終え、できればつづいてとう箕にかけたいとおもっています。
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あしたは三好ヶ丘ラヴィマルシェです。

2014-07-12 16:51:32 | イベント出店情報とそのほかのお知らせ
   先月に引き続いて、今月も、三好ヶ丘ラヴィマルシェに出店します。

   アンティマキが持って行くのは、穀物クッキー5種にグラノーラ。先日新発売した、米ぬかクッキー3種にブルーベリースコーンです。米ぬかクッキーは、卵もバターも使っていない軽いクッキー。カレー粉、ココア、ゴマがそれぞれ入っています。

   それからもうひとつ、新作スコーンもおもちします。突然思いついて作った塩味のスコーン。昨夜作ったばかりのバジルペーストを加えました。試作をせずにいきなり1キロ作ったのですが、予想通り、とても満足の行く味になりました。粗糖を抑えているので、ご飯代わりにもなります。

   ゆきえさんの石けんと三木さんのコンフィチュールも販売しますが、あしたは、収穫が始まったばかりの、三木さんの農園のブルーベリーも少しだけ店頭でお売りします。瑞々しくて甘酸っぱいブルーベリーを、ぜひ召し上がって下さい。

  農園で成長した苗も販売します。農園主の三木さんも店頭に立つので、栽培の仕方そのほか、なんでもお尋ね下さい。

  このマルシェは住宅街の中で開かれるささやかなイベントですが、回を追うごとに魅力的なお店が増えています。あしたも、ベーグルの専門店、おいしいお豆腐の店・しろそのほかたくさん出店します。

  *日時 7月13日 9時~12時
  *場所  みよし市三好ヶ丘緑3-3-1
       アールビル裏手駐車場
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あしたはタキソウ朝市あります!

2014-07-09 20:54:38 | イベント出店情報とそのほかのお知らせ
  毎月第二木曜日に開催しているタキソウ朝市、今月はあしたです。台風8号の接近が懸念されるため、開催できるかどうか心配でしたが、明日の午前中、東海地方はまだ圏内に入っていないので、さきほど予定通り開催することになりました。

  開催するかどうかきょうのお昼まで決まらなかったので、パンの仕込はしていません。スコーンも、1種類だけですが、かわりに、米ぬかクッキーが朝市初登場いたします。あしたは、カレー、ココア、ごまの三種類。旭地区のいのはな農園でとれた無農薬栽培米のぬかが入っています。軽い口当たりなので、食べだしたらとまらない。カレーは今回で2回目、ほかははじめての販売です。カレー味、今回はちょっと塩気を控えてみました。

  あしたはこころざし工房の石けん、Miki-Co-laboのコンフィチュールも。三木さんの農園のブルーベリーの苗も販売します。こころざし工房のゆきえさんと農園主の三木さんもご一緒しますので、石けんやブルーベリーの育て方について、いろいろおたずねください。

   *日時 7月10日(木)午前10時~12時
   *場所 タキソウ家具本店 豊田市国道248号線沿い
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あしたはタキソウ朝市あります!

2014-07-09 20:54:38 | イベント出店情報とそのほかのお知らせ
  毎月第二木曜日に開催しているタキソウ朝市、今月はあしたです。台風8号の接近が懸念されるため、開催できるかどうか心配でしたが、明日の午前中、東海地方はまだ圏内に入っていないので、さきほど予定通り開催することになりました。

  開催するかどうかきょうのお昼まで決まらなかったので、パンの仕込はしていません。スコーンも、1種類だけですが、かわりに、米ぬかクッキーが朝市初登場いたします。あしたは、カレー、ココア、ごまの三種類。旭地区のいのはな農園でとれた無農薬栽培米のぬかが入っています。軽い口当たりなので、食べだしたらとまらない。カレーは今回で2回目、ほかははじめての販売です。カレー味、今回はちょっと塩気を控えてみました。

  あしたはこころざし工房の石けん、Miki-Co-laboのコンフィチュールも。三木さんの農園のブルーベリーの苗も販売します。こころざし工房のゆきえさんと農園主の三木さんもご一緒しますので、石けんやブルーベリーの育て方について、いろいろおたずねください。

   *日時 7月10日(木)午前10時~12時
   *場所 タキソウ家具本店 豊田市国道248号線沿い
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アカネ染め

2014-07-07 20:30:08 | 草木染め
   久しぶりにアカネ染めをしました。使ったのはインドアカネです。わたしの草木染めはたいていその辺で採集してきた草木を使っていますが、日本アカネを探してとるのはたいへん。それで染めるときは、染料店で購入したアカネの根をきざんだ物を使っています。

   アカネは赤さを引き出すために、煮出すときに食酢を少量入れます。そして先に媒染をしておきます。

   入れてすぐ、朱色に近いような赤に染まりました。前に染めたときは、たしか綿や麻はピンクに近い色だったはずなのに、絹との違いがほとんどないほど赤い。

   どうやら、布の量に比して、アカネの根を大量に入れすぎたせいらしい。はじめ染める予定だった布を急遽取りやめたので、濃すぎたのです。つまりかなりぜいたくな染めになりました。

  絹の手袋もこんなにあざやか。

  写真中央の風呂敷は、模様のまんなかだけ鉄媒染したら若干茶色になりました。ほんとは、鉄媒染で赤っぽいグレーにしたかったのですが、染めの色が濃すぎたせいか、こんな色に。でも、なかなか深みのある色です。

   うちの敷地から道路にはみだしたクズを刈って、緑色に染めました。宇治茶色です。ほかに、月桂樹も煮出しました。一番液はあまり色が出ませんでしたが、硬い葉が少し柔らかくなっていたので、2番液は少しは濃い色が出そうです。来週のことになりそうですが、続行します。

   さびだらけの古い大鍋で月桂樹を煮出して染めをしたことのある友人によれば、媒染せずに、美しいオリーブグリーンが生まれたそう。私はそういう重宝な古鍋を持っていないので、木酢酸鉄の溶液で普通に媒染して美しい色を出したいのですが、うまくいくかしら。
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聞き書き「山を拓き ここに暮らしを創る」

2014-07-04 15:58:58 | 映画とドラマと本と絵画
   稲武の隣村設楽町には、駒ケ原、沖ノ平というふたつの開拓集落があります。国道153号線からそれてしばらくいったところに位置し、どちらも広々した畑や牧草地のある美しい集落です。

   このふたつの集落は戦後、「愛知県段戸山麓戦後開拓集落」として拓かれた地域。昨年春、この集落に住むお年寄り達から取材した聞き書き集が、出版されました。

   集落に住む知人からこの本をいただき、とても興味ぶかく読みました。戦後から今に至る彼らの暮らしぶりと生き方が、方言そのままの口調を残した文の随所にうかがえます。そして、戦後をたくましく生きてきた彼らの姿に、感嘆をおぼえます。

   開拓がはじまったころは、満州からの引揚者が主でした。彼らは食べるために山でできることを次つぎにこなします。きこり、木ん馬ひき、土方仕事、炭焼き。そういう仕事をしながら、田畑を開墾し、広げていきます。

   平地の荒地を耕すのとは違って、木を切り、切り株を掘り起こしてつくるのですから、相当の苦労です。
   
「えらいとこきちゃったなあと思って。はっはっは。ほんとっに話にならんな。山ん中だもんな。木ばっかだな。」  

    重労働に比して食べられる食物はわずかです。

   「食べるときはみんな一緒。米のご飯じゃないわ。農協でコーリャンだか米の落いたやつをまた拾って持ってきたり、うどん屋のうどんの割れたような、ボロボロのやつ、そんなのを食べとった」

   「マムシは(中略)生の骨がうまいんだ。皮むいたらまだポンポン跳ねとる。それを生で食ったよ。イボのあるヒキガエル(中略)割合白い肉でうまかった。そりゃあ何もないもん。今どきくう気せんよ。ウサギもわなで捕ってのう。何にも肉がねえもんだい。のら犬を叩いて焼いて食ってみたり。」

   彼らは、さまざまの農産物の栽培を試み、失敗と成功を繰り返しながら、しだいに暮らしの基盤を築き、今に至ります。

   「キャベツ作って、下の昔の農村の人を追いのこして、よそから来た開拓者が、こういういい農家になったということは、ちょっと大きな顔ができるわなあ。来たばっかの時は、あんな山の中へ入っても、生活ができんて、ほんとみんな言ったもんな。まあ今じゃあ下じゃあ暮らせんなあと思う。ここだでこれだけの事ができたなと。俺ぁ五○年足らずで、これだけやっただなと。」

    駒が原、沖の平地区にも、離村した人もあり、耕作放棄地もあると聞きますが、和牛の牧場や花卉栽培農家、高原キャベツ専門の農家など、地の利を生かした農業にいそしんでいる方々がたくさんおられます。

    一方、彼らの言う「下の村」にあたる稲武地区も設楽町も過疎化が急速にすすみ、専業農家はほとんどなく、兼業農家も、どんどん減っている現状だと聞きます。

      最後に、もっとも印象に残った言葉を紹介します。、

   「お金のない生活はものすごいあったわ。日銭なんてなくても暮していけるもん、ここなら。自分で穫ったもん食べて贅沢せにゃあね。何でも自分でつくりゃあいいんだからね。そうやって暮してきたからね」

   つらい日々であっても、自分ががんばりさえすれば、食べるものも着るものもなんとか直接手に入る、とおもえるのは、とても心づよいことだろうとおもいます。

   20数年前の話になりますが、当時20歳そこそこの若い女性が、結婚したら住みたい場所として、「歩いてすぐのところにコンビニのある場所」を挙げました。

   彼女に言わせれば、コンビニは「大型冷蔵庫兼収納庫」。自宅が狭くてもコンビニがあれば便利で豊かな生活ができる、というのです。私は彼女に向かって、「それはほんとの豊かさではないわ」と反論しましたが、説得には至りませんでした。開拓者の妻として、夫と苦労を共にしてきたこの婦人の力強い言葉を、もしあのときの彼女がきいたら、彼女はどうこたえたかしら。

   
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漫画「凍りの掌」

2014-07-03 18:01:17 | 映画とドラマと本と絵画
   集団的自衛権行使容認が閣議決定された7月1日の晩、一気に読み終えたのがこの漫画です。

    「凍りの掌~シベリア抑留記」(おざわゆき著)は、第16回文化庁メディア部門新人賞を受賞した漫画。作者の父親の体験がもとになってできた作品です。

    昭和20年1月、東京の大学の予科に通っていた作者の父は出征。名古屋を出発して兵庫で訓練を受けます。それもたった2週間で終り、行き先を知らされないまま博多へ。途中列車の窓を開けることは禁止されていたのですが、彼は窓の隙間から「開けてはならぬ理由を」垣間見ます。それは、沿線の都市の空襲の跡。真実を国民に知らせないまま、どんどん戦争を拡大していったのです。そして船に載せられ釜山へ。満州のハルピンを過ぎ、さらに北上して真冬の2月末、北満州の関東軍の兵舎に入ります。

    彼らは補充兵としてつれてこられたのですが、当地にいたのはわずかな兵だけ。日ソ不可侵条約をたのみにしていた関東軍は、「将校以下すべて」を南のレイテに投入していたのです。わずかな訓練のみで、しかももったいないからと実弾の射撃訓練をしていない初年兵と、二ヶ月後にやってきた古参兵だけを、敵国との国境近くの警備に残しておくとはおどろきです。

    そして8月9日、ソ連軍が突如侵攻。彼らはソ連軍に捕まり、捕虜としてシベリアに送られます。収容所までの広大な原野をひたすら歩かされた彼らは、「絶望の入り口に飲み込まれるよう」な恐ろしさを味わいます。

    捕虜に支給する食料はなく、ソ連兵は荒れた農園のような場所を指差すだけ。そこで兵隊達はカチカチのジャガイモを掘り出し、生で食べさせられます。収容所到着後も、食事は、黒パン一切れに高粱のおかゆが1日2回だけ。氷点下30度というのに、暖房はほとんどなく、夜具は毛布二枚。この劣悪な環境で重労働を強いられるので、当然栄養失調で捕虜は死にます。

    彼が最初にいた収容所では、この年、半数が犠牲となったそうです。酷寒でも病舎や兵舎にはしらみがいます。ベッドに寝かされていた病人がなくなったとたん、病人の体中にたかっていたしらみがぞろぞろと宿がえをはじめる光景を主人公は目撃します。

    「病院の死亡者は(中略)解剖に舞わされる。頭をまっふたつにしてその中も調べる。終わったら裏山の白樺林に埋められるのだ。(中略)オレらは・・・白樺の肥料になりに来たんか・・・」どんなにつらくても、希望があれば我慢できるでしょうが、絶望しかないときは、つらさにおしひしがれそうになるとおもいます。

    その後、収容所を転転とするのですが、しだいに、共産主義教育が収容所の捕虜に対してすすめられるようになります。スターリンへの賞賛の言葉を口にしないと帰国できないといううわさが立ち、中国の文化大革命のときのように、同輩をつるし上げ自己批判させる日々がつづきます。

    シベリアの捕虜の悲惨さは、過酷な環境の下での重労働を強いられたというだけでなく、旧日本軍の上下関係をそのまま温存して、捕虜同士で統制させたところにもある、という話を聞いたことがあります。つまり、戦争に勝つためという大義がなくなってからも、上官によっての理不尽なしうちは存在し続けたのです。

    しかし、つらいのはそれだけではなかった。仕事場への行きかえりに、日本の流行歌や唱歌を全員で唱和するのがわずかな慰めだったのに、それも、「インターナショナル」や「赤旗の歌」を歌うことを半ば強制されます。唯一ロシア語が話せて、捕虜の待遇改善に尽力した元記者?は、人民裁判にかけられ、半死半生の目にあいます。

    4年後、突然帰国命令が下ります。しかし、ナホトカにつくまでに、「(共産主義にそわない)反逆者は選別され」「そわない連中はまたここで強制労働に逆戻り」するので、気が抜けません。そしてようやく日本の船に乗船。

    昭和24年11月、船は舞鶴港に入港します。日本は戦後の混乱が落ち着き始めた頃なのですが、彼らシベリア抑留から帰ってきた人たちは、今度は「アカ」とみなされて就職できなくなります。他国で捕虜になった人もふくめて、復員兵には補償金が出たのだそうですが、抑留者は「終戦後は捕虜とはみなされない」とされて、補償金がもらえなかったことも、今回知りました。

   そして、1956年、日ソ共同宣言が採択。その際、両国は倍賞請求権を互に放棄します。
裁判所に提訴した抑留者もいたそうですが、原告側の敗訴がつづいたということです。

   つい、ながながと紹介しましたが、ほんわかとした軽いタッチの漫画なのに、描いてある現実はとても重い。単純な描線ががかえって想像力をかきたてるのか、つらさが直接しみこんでくるような気がしました。

   作者の父は、娘に聞かれるまで、妻に対してすら抑留時代の話はほとんどしなかったそう。尋ねられて初めて思い出したことなどもあり、封印しないでいられないほどの非常につらい記憶だったことがわかります。

   抑留という言葉すらしらない世代が増えている現在ですが、せめて、簡単に読めるこうした漫画で、ひどかった時代があったことを知ってほしいとおもいます。

   本の帯に、ちばてつやがこう書いています。

   「暖かく、やさしいタッチのマンガ表現なのに そこには「シベリア抑留」という氷点下の地獄図が深く、リアルに、静かに語られている。日本人が決して忘れてはいけない暗く悲しい67年前の真実。次代を担う若者たちには何としても読んで貰いたい衝撃の一冊。」

   同じ作者で、名古屋の空襲を扱った作品があり、ただいま1冊だけ単行本が出ています。続編の刊行が待たれます。  

    

    

  

    
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アンティマキのパンとスコーンの講習会、終わりました。

2014-07-03 17:52:39 | アンティマキの焼き菓子とパン
   先月の9日、どんぐり工房で、「アンティマキの優しく易しいパンとスコーンとスープの講習会」を開きました。

   この講習会は、数年前から、年に1度から3度ほど開き、稲武地区以外での出張講習も何度かおこなっています。今回の講習会は、工房では1年ぶり。定員15名をうわまわる申込みをいただきました。いらした方のほとんどは、豊田市街地、安城、岡崎そのほか遠方から。妊婦さんほか小さいお子さん連れの方も目立ちました。

   メニューは、こねないパンのうち、玄米ご飯パンと小豆パン、有機小麦のパンとハーブのフォカッチャの4種、ジャムスコーン、クルミ黒糖スコーン、カカオニブスコーンの3種、それに動物性食品もスープの素も一切入れない野菜と豆のスープです。
  
   このスープ、これまでとは違う方法で作っていただきました。違う点はふたつ。ひとつは、鍋を熱しないで、常温から野菜をいため始めること、もうひとつはいためる時間を長くし、煮込み時間を短くすること。この方法だと、材料のうまみがにげずに、味わい深いスープになります。ただし、ニンジンが少々大きすぎて固めだったのが難点でした。

   スコーンはひとり6個ほど、パンは3個ずついきわたりました。到底食べ切れないので、おみやげです。お子さんたちが元気にパクパク食べて下さったようで、うれしかった!

    今回も、和気藹々のうちに終了しました。アンティマキのパンとスコーンの講習会は、5名以上あつまり、稲武から車で1時間~1時間半の距離内であれば、出張して開きます。右ブックマーク欄のアンティマキの問合せからご連絡下さい。どんぐり工房では、この秋に再度開きたいと思っています。
   
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