数年前に読んだ本ですが、紹介しそびれていたので書きます。著者は社会心理学者の山崎俊男。題名に惹かれて読み始めましたが、なるほどと思えるところがいっぱい。軽く読める一冊です。
たとえば、こんな項目があります。
「日本人は「会社人間」か」
筆者は「日本独自の「和の文化」が、日本人の愛社精神や滅私奉公の精神を作り出した」という話は、「眉ツバ」で、戦国時代、足軽から大名まで、武士たちはみな実力守護。主君が自分の能力をきちんと評価してくれないないなら「さっさと見限って転職するべしということが戦国時代の常識であったといいます」。
本当に自分の会社を愛しているなら、業績が落ち込んだときには「率先して自分たちの給料を下げてくれと願い出るのが当然で」、「会社の存続こそが大事と考えてこそ、本物の会社人間というものでしょう」。
そこまで忠誠心を持っていないのに、会社のために懸命にはたらく理由は、筆者によれば次のようになります。
「日本のサラリーマンが会社に忠誠心を示すのは、そうやって振る舞うことが日本の社会において最も適した行動であるから」つまり、「忠誠心を示したほうが何かとトクをするから」会社人間になったというわけです。
でも、近年、功序列制度や終身雇用制が壊れ始めると、転職は当たり前になり、非正規の社員も増加しています。だからいわゆる「会社人間」が一気に減ったと思われます。「結局のところ、「日本人らしさ」とはけっして普遍のものではないし、日本独特のものでもない」と断言します。
本書で、印象に残っているエピソードがあります。
アメリカの大学生と日本人の大学生を対象にした調査結果。ボールペンをいくつか見せて好き嫌いなどを答えてもらいます。アメリカの大学生たちは、個性的で目立つボールペンを選ぶ人が多く、日本の大学生は地味な目立たないボールペンを選ぶ傾向があるのですが、それは表向き。つまり、他人がいるところで選ばせると、日本人は地味なものを選ぶ。でも、個別に意見を聞くと、アメリカの大学生も日本の大学生もほぼ同じく、派手めなものが好き、という結果が出たのだそうです。
「他人が見ているかどうか」が判断基準を左右するというわけ。上記の「会社人間」同様、人と同じように振る舞うと得するとおもう、そういう人が多いということなのでしょう。ほんとに「得」するかどうかは、今の時代、簡単にはわからないとおもうのですが、考えはなかなか変わらないかもしれません。
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