アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

みよしイオンモールの吉十でアンティマキとこころざし工房、Artisan MIKIの品を販売します。

2018-01-29 13:43:21 | 奥三河three trees+
     みよしのアイモール商店街内のお店、吉十で奥三河Three trees+の商品の販売が久々にはじまります。  

     アンティマキの商品は7種類。いなぶの固いおかき~プレーン・アーモンド入り~、穀物クッキー~カカオニブ入り・全粒粉と有機クルミ入り~、ココアグラノーラ、アニスシード入りオートミールビスケット、ココアとまるごと甘夏ジャムのクッキーです。 

     ココア入りの焼き菓子2種類は、バレンタインデーのプレゼントにおすすめ。グラノーラは、ココアパウダー、カカオマス、カカオニブを使った味に厚みのあるグラノーラです。ココア入りのクッキーのほうは、皮も実もまるごと煮たジャムをココアと合わせ、ほろ苦くてちょっと甘酸っぱい、大人向けの焼き菓子です。

     本日、みよしまで納品に行く予定でしたが、昨日夕方から降り出した雪が積もり、朝起きたらこんな風景に。国道は多分走れるし、午後には溶けそうとおもいましたが、大事を取って出かけるのはやめて郵送しました。明日午前中アイモールに届き、午後には店頭に並ぶ予定です。
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倉橋さんのパン教室のこと

2018-01-25 00:35:07 | アンティマキの焼き菓子とパン
   通いだして丸3年ほどたつ、倉橋知栄さんのパン教室。岡崎市旧額田地区のご自宅まで、ほぼ毎月一回通っています。

   彼女は9年ほど前、岡崎市の市街地康生町で「べーぐる庵」という名前のパン屋を開業。アンティマキの焼き菓子もおいてくれていました。べーぐる専門の店としてかなりの人気を博しましたが、2年足らずで惜しまれながら閉店しました。
   
   しばらく自宅での営業を続けていましたが、それもやめて育児に専念。そして数年前、小規模のパン教室を開きました。独学でこねないパンを作って売ることを始めていたわたしは、いつかちゃんとしたところでパン作りを学びたいと思っていましたが、習うなら、倉橋さんのところで、とずっと前から心に決めていました。だから、教室開催を知ってからすぐ、通い始めました。

    私が彼女に出会ったのは、13年ほど前にさかのぼります。まだ稲武が豊田市に合併される前、町おこしの一つのこころみとして、ハウスポニーという町の施設に大きな石窯を作るワークショップが開かれました。その石窯が完成し、パンを焼く会が町役場主導で生まれました。わたしも誘われて参加したその最初の会合で、石窯作りWSに参加した彼女に初めて会いました。

    私たちの会は、パン作りに情熱を燃やす彼女に時々の講師を依頼。彼女の教えてくれたパンは、アウトドアでも手軽にできるもので、それまで敷居の高かったパン作りのハードルが一挙に低いものにかわりました。当時彼女が教えてくれたパンは、「放置してちょっとだけこねる」というもの。パンはこねるのが当たり前。でもそのこねるのが難しい。そう思いこんでいた私には、おどろくべき方法でした。

    稲武での石窯の会とのかかわりはしばらくの間だけでしたが、その後、彼女が自宅で開業してからも付き合いは続き、いまに至ります。彼女の教室に通いだしてから、彼女のヒントやアドバイスを元に、アンティマキのパンをいくつも生み出すことができました。

    その辺で手軽に入る材料で比較的簡単に作れるパンを目指す彼女。素人でも気軽にパン作りができるよう、いろいろな工夫をしています。

    わたしがもっとも重宝しているのがこちら。膨らんでいるかどうかを見極めるために、あらかじめ生地の一部を手前の透明のカップの中に入れておきます。2倍に膨らませたいときは、カップの半分量、3倍に膨らませたいときはカップの三分の一の量を入れ、ふちぎりぎりになるまで膨らんだら発酵完了、というわけです。私が作る全くこねないパンのある種類は、水分をおおめにしているため、発酵の見極めが難しいのですが、この倉橋方式だと一目でわかるのでとても便利です。

    ものを作ることが大好きな彼女。これまで彼女が意を注いだのはパン作りだけではありません。とても柔らかいこんにゃくを作ってマーケットで販売したり、木工や革細工にもいそしんだり。ユニークな縫いものを見せてもらったこともあります。訪れるたびに増えている机やいす、収納庫は彼女の手掛けた作品。つくづく作るのが好きな人なのだな、と感心します。

     残念ながらこの教室は3月で終了となったのですが、アンティマキのパン作りに欠かせない存在の彼女と教室のことを、紹介しました。

     彼女の次の目標は町おこしの拠点になるような場所づくり。具体的には決まっていないようですが、きっとまたおもしろいことをはじめそう。それで、教室はひとまず閉じて、次のステップへの準備に入りたいとのこと。毎月の楽しみがなくなるのは寂しいことですが、彼女の次のチャレンジ、期待を持って見守りたいと思います。
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Caie 種の実さんの生ハム切り出し体験講習会に参加しました。

2018-01-24 16:57:20 | 手作りのたべもの
ずっと昔、料理のレシピ本ではなくて、食べ物エッセイを読み漁っていたころ、あるエッセイストがかいていたハモン・セラーノにいたく興味を惹かれました。スペインでは、ある季節になると人々が肉屋(ソーセージ屋かも)にいって、豚の脚を塩漬けした、ハモン・セラーノというものを買って、そのまま肩に担いで家に持ち帰る。担いだまま通りを歩き、地下鉄に乗る。そういう人々にたくさんお目にかかる、というのです。パリの人たちはフランスパンをはだかのまま小脇に抱えて歩いている、と聞いたとき以上に驚きました。

   その当時、その辺で簡単に生ハムが手に入る時代でもなかったし、あってもとても高価で手が届かなかったと思う。その生ハムの塊を一本まるごと一家の保存食として買って帰るとは、なんて贅沢なことなのだろうとおもったから、たぶんその個所だけ覚えたいるのでしょう。

   その生ハムの原木(というのだそうです)を切り出す体験講習会に昨日参加しました。昨年、この講習会の存在を知り、ずっと参加したかったのですが果たせず。今年は友人たちとグループで申し込んで、開いてもらいました。

   講習会の主宰者は、Caie種の実さん。ヘルシーメイト岡崎店で、毎月何回かユニークな料理の講習会を開いておられる方です。彼女が昨年春ころから仕込んだ塩漬けの豚の脚1本をまるごと開催場所に持ち込んでの体験講習会。こんな講習会、めったにないと思います。

   切り出しているCaieさん。よく切れるスイス製のナイフでナイフが透けて見えるくらい薄く切るのがこつ。けれども、この「薄く切る」がとても難しく、切れぎれの厚めの肉片になることしきり。

   切り進むと骨が現れ、さらに切りづらくなります。切る場所によって色はさまざま。そのさまざまの色の違いは味の違いでもあって、どれもコクがあってうまい! 厚くても薄くても、それぞれ食感が違い、それもまたうれしい。

   この生ハムは一昨年1月に入手して塩をすりこみ、半年で影響はなくなるという防腐効果のある添加物もすりこみ、仕込み開始。気温が20度を超えると腐るので、5月頃、八ヶ岳の山荘に預けて保管。夏に現地に行き、いったん水洗いし、再び乾燥開始。そして昨秋山からおろしたという、かなりの手間と時間のかかったもの。

    今回しみじみ感じたのは、生ハムは発酵食品だということ。ふわっと香ってくる味噌に似たにおいで、それと知りました。

    メニューは、生ハム入りのディップや生ハムをまいた里芋ステーキ、生ハムのパテを添えた野菜スープなど数種。主食は、手打ちオレキッティのブロッコリーソース和え。オレキィティ、はじめてつくりました。人と一緒につくるなら、こういうの楽しい。

    Caieさんの講習会に参加したのは今回で3回目。いつもお得でも盛りだくさんの内容なのですが、今回はいつも以上に豪華! デザートは彼女が朝焼いたレモン風味のスコーンに、生ハムで巻いた洋ナシ。

    料理を食べながらさらに切り出した生ハムを。こんなにいちどきに食べたのは多分初めて。ワインがないのがもったいない。帰りがけには、さらに好きなだけ切り出してお土産に。ほんとはきのうは雪の予報が出ていたので、講習会後すぐに帰宅するつもりだったのですが、お土産欲しさについつい長居してしまいました。、案の定、帰りは雪道を恐る恐る走る羽目に。

    夕食は、このごろ試作し続けているまったくこねないで作る大型パンに、いただいた生ハムとブルーチーズをのせ、ワインを開けました。満足。Caieさんの講習会は、4人一組で開いてもらえます。こちらからどうぞ。
    
   
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フェアトレードの材料でチョコレートを作る講座に参加しました。

2018-01-18 10:21:32 | 手作りのたべもの
   先週の日曜日、14日に、どんぐり工房で開催されたチョコレートづくり講座に参加しました。

   講師は、愛知県のフェアトレードショップの草分け的存在「風s」の代表土井ゆきこさんとそのお仲間。フェアトレードやカカオ豆の産地で働く子供たちの現状などのお話を交えての、講習会でした。

   カカオニブ、カカオマス、ココアパウダー・・こういったものはアンティマキの焼き菓子やパンの材料として使っていますが、ほんとのチョコレートをつくるのははじめて。

   この日どんぐりに集まったのは15名ほどの親子。ミルク入りとミルクなしのビターを作る班にまず分かれました。わたしはビターチョコ。使う材料は、カカオマス、カカオバター、砂糖だけ。

   カカオマスは、カカオの種を粉砕したカカオニブを溶かして、冷却したもの。チョコレートのもとです。作業は、このカカオマスとカカオニブを細かく刻むところからはじまります。

    刻んだものを湯煎。まだ砂糖はいれません。

    よく溶けたら砂糖を投入。混ぜ続けます。チョコレートの温度が45度になったら、今度は外側のボウルに水を入れて冷やします。27度まで。ここまで下がったらまた温度を上げます。29度まで。この工程をテンパリングというのだそうですが、本格的なチョコレートは何と72時間混ぜ続けるのだそうです。滑らかさがここで決まるのだとか。

    温度が29度になったら、講座では終了。型に流し込みます。

    途中何度か味見。使った砂糖がじゃりじゃりした有機粗糖だったため、なかなか溶けませんでしたが、それはそれで素朴なチョコの味がしました。

     30分以上冷蔵庫で冷やし固めたら出来上がり。2週間ほど寝かせるといいのだそうで、この日は一かけらだけたべてあとは冷蔵庫にしましました。

     同じ班の5歳のMちゃんがかいた感想。絵入りです。自分の顔の口の周りは茶色。チョコレートのおひげです。字は右から読みます。

     講座のあとは、媒染したてのフェアトレードの豆でいれたコーヒーをいただきました。こちらもおいしかった。

     土井さんご夫婦は、昨年春から稲武地区野入町の古民家を手に入れ、週の何日かを過ごしています。今年の春からは、カフェの営業も始める予定だそう。稲武にまた一つ、面白いお店がうまれそうです。
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今冬のおかき、製造をはじめました。

2018-01-11 00:19:11 | アンティマキの焼き菓子とパン
   昨年の冬は玄米もち米のいいものがほとんど手に入らなくて、おかきの製造が数回しかできなかったのですが、今年は、大野瀬町の筒井重之さんが低農薬栽培した玄米もち米を通常通り仕入れることができました。

   そこで、正月明け早々に仕込み、本日焼成。あしたヘルシーメイト岡崎本社店に納品します。

   玄米おかきは、玄米もち米を蒸しておいて少しつき、国内産粗糖と海塩を加えてさらに搗き、型に入れます。包丁を入れられる程度に乾燥したらきり分け、さらに薄く切って、ざるに広げます。

   室内の乾いた場所に置き、2日ほど干し続けます。しならず、ぱりんと割れるようになったら乾燥終了。オーブンで焼いて完成です。昔ながらのこのお菓子、子供のころは祖母の家に行くと缶から出してくれて、火鉢でやいて食べさせてくれました。

   ヘルシーメイト岡崎店に納品するのは明日の午後。店頭に並ぶのは午後の遅い時間になるかもしれません。今月22日と来月16日にも納品の予定です。甘すぎず、こめの味がちゃんとするアンティマキのおかき、どうぞお試しください。。
   
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今年度の醤油絞り、おわりました。

2018-01-10 14:15:17 | 稲武醤友クラブ
    稲武醤友クラブは、わたしを含めた稲武在住の3人(もとは市街地のメンバー1人も在籍。いま彼女は市街地で新しい醤油醸造グループを結成)でつくる、自家製醤油醸造なかま。醸造を始めて今年度で4回目になります。最初は半樽。翌年から1樽に。絞り師の井上時満さんに来ていただくようになったのは2回目から。今冬の絞りは、昨年12月18日におこないました。
     
    昨年3月に仕込んだ醤油は、9か月たって、豆の形はあるもののどろどろの状態になっています。醤油樽を収めた小さな小屋は、近寄ると五平餅のタレのような香ばしいいい香りがしています。

    南信州のご自宅から井上さんが到着したのは午前8時。今回は、私たちとは別に、昨年から始めた友人グループも参加。初めて2組の樽の絞りをお願いしました。まず、醤油樽のふたを開けて井上さんが味見。緊張の一瞬です。

    「お、いいじゃん」言ってもらえました! 今年度は最初に入れた倉庫から、外にある小屋に早めに運び出し、陽のあたる期間を長くとるようにしました。それでも、梅雨時には白いカビ上のものが1,2度浮かんだように見えましたが、カビかどうか見分けがたかったこともあって、駅の中に押し込んで放置。しきに次の天地返しの時には現れずに済みました。

     どろどろの醤油のもとに竈で沸かした湯を入れて溶きます。溶いた液体を絞りの器械にしつらえた袋に流し込み、いっぱいになったら器械の底に順番に積みます。そして最後に圧搾。でてきたのがこちら。生醤油です。

     うまい! 私たちの樽がほぼ絞り終わったところで、お昼ご飯。メンバーの一人の家で平がいしているニワトリの卵に、この生醤油をかけたごはん、極上のおいしさです。写真を撮るのを忘れました。他に私たちが用意したものは、湯豆腐にうどん、野菜汁。いずれも醤油のうまさがストレートに味わえるシンプルな料理です。 

     絞り終わった生醤油は、加熱します。このとき、これまでだと塩を入れるなど味の調節をするのですが、今年は一切不要とのこと。うれしい。

     醤油のもとをいれた袋は搾りかすを出してから、湯で何度もよく洗います。その洗った湯がなかなか気持ちいいものだと、井上さんが言うので、さっそく足湯が始まりました。

      私は入れそこないましたが、とっても温まるそう。来年は入りたい。

      さて、この10日後、瓶詰め作業を。一樽で、一升瓶28本と4合瓶10本近くがとれました。3世帯の一年分の醤油の量としては十分。米と塩と味噌と醤油。この4つの備蓄があれば、何とか最低の食生活は維持できます。心強い。

      醤油絞りがおわると、一年かかわった一つの仕事がおわり、なんだかほっとします。仕込みとその後のひとつきは少々手がかかりますが、その後は、毎月一度程度の天地返し以外は仕事はなく、その天地返しも、わたしはほかのメンバーに任せっきり。ほとんど手をかけることなく醤油ができているのですが、それでも、自分たちが手掛けた醤油が今年も無事に出来上がったとおもうと、感無量です。次の年度の醤油の仕込みは来月末。それまで、醤油仕事はお休みです。
    

    
   

    
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映画「グランドマスター」

2018-01-08 10:36:32 | 映画とドラマと本と絵画
   ブルース・リーの師匠に当たるイップ・マンの半生を描いた映画。「花様年華」のウォン・カーウェイ監督の作品なので、迷わず借りました。

   冒頭から映像がすごい。アクションもすごい。時代は1930年代に始まる。ヒロイン役のチャン・ツイィーは「東北」のカンフーの強豪の娘。その強豪の葬列のシーンから始まります。海辺を歩く遺族たちが持つ旗が潮風にたなびくようすがうつくしいのですが、その葬列を遮る敵方の登場で旗が倒されるシーンがまた美しい。

   一方、トニー・レオン扮するイップ・マンは、ヒロインの父が死ぬ前に後を譲った、中国のカンフー(ある流派の中の話かもしれない)の新たな担い手。彼とヒロインの闘いのシーンも、まるで舞踊のように美しい。これほど美しくカンフーのアクションを撮った映画は、これまでなかったのではなかろうか、とおもうほど。

   しかし、日中戦争が激しくなり、カンフーの世界にも政治的思惑がはびこり、イップ・マンは孤立。ヒロインは父の敵を討ったあとはアヘン中毒にかかり、自滅の道をたどります。

    話の筋は単純で、セリフもとくになんということはないのですが、とにかく映像の美しさには舌を巻きます。ストーリーの展開も、さりげなくて、時代状況をよく知らないとついていけないかも。でも、何も知らなくても、画面に見惚れているだけで気持ちいい。血しぶきが飛び、死体がごろごろしているのだけれど、美しい。

     特に何度も描かれていて印象に残っているのは、満鉄の蒸気機関車の煙と、雨の中の闘いのシーンで跳ねる水たまりの水の映像です。どれだけの撮影と編集の手間をかけているのだろうかと、おどろきます。私の語彙がすくないので、この短いブログの文章に、「美しい」という言葉を7回も使ってしまった。ほかになんといっていいかわかりません。

      写真や映像にかかわるすべての人に見てほしい映画だと、わたしは思うのですが、みても、こういう映像を「作りすぎ」と思う人も多いのかもしれませんが。
   
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映画「人生フルーツ」

2018-01-03 16:06:24 | 映画とドラマと本と絵画
   前から気になっていた映画「人生フルーツ」。きのうのお昼に東海テレビで放映。やっとみられました。この映画、なんと観客動員数が20万人を越えたそう。こういう地味なドキュメンタリーはたいがい1万人が関の山なのだそう。20万人もの人々が、安くはない入場券を買ってみたとは、驚くべきことなのだそうです。

   津端夫妻のことは、だいぶ前に雑誌で知りました。畑にいっぱいたてたカラフルな立て札がかっこよくて、いつかちゃんと畑ができたら、真似したいと思っていました。

   夫君の津端修一氏は建築家。50年前、名古屋市郊外の高蔵寺にニュータウン建設の計画がたった時に、住宅公団の職員として基本計画を任された人でした。彼が立てた計画は、当時としては斬新(いまでも、かな?)。山をすべて切り開くのではなく、山の木々を一部そのまま残して家を建てる、というものでした。

   しかし,1軒でも多く家を作りたいと考えている公団にとっては、彼の計画は無駄の多いものと判断されたのでしょう。結局山はほとんど切り崩され、何棟もの高層マンションとたくさんの住宅が建てられました。

   一家はぽつんと取り残された小さな山を背にした土地、300坪を購入。そこから彼らの小さな里山づくりが始まります。30畳一部屋の平屋の住宅の周りには、実のなる木々~クリ、サクランボ、イチジク、カキ、柚子など~を植え、竹林までつくります。菜園の肥料は広葉樹の落ち葉と生ごみたい肥。次第に土は肥え、小さな菜園に豊かな実りをもたらします。

   彼らは、当時はげ山だった裏の小さな山に、どんぐりの苗木を植える活動もはじめます。その若木が今は大木に成長し、彼らの畑の肥やしとなっています。

   映画では、「こつこつとゆっくり」がモットーの彼らの生活が、春夏秋冬の庭の様子とともに淡々と描かれています。でも、映画後半で二つの大きな出来事が起きます。ひとつは90歳になる夫君の死。

   もうひとつ、こちらは製作スタッフも予想していなかったこととおもうのですが、彼の死の数か月前に届いた、彼への仕事の依頼。それは、彼が現職のおりに果たせなかった自然と共生する家づくりでした。彼は一気にその仕事をこなし、その数か月後、草むしりした後の昼寝から目覚めず、逝きました。

   このあたりで落涙。彼は本当にしたかった仕事に、最後に出会えたのだなとつくづくおもいました。まさに何度も繰り返されるこの映画のナレーション通り、彼のこころざしは実を結びました。

    最近よく思うのは、死ぬ間際の床の中で何を思うか、ということです。大金持ちだろうが、超有名人だろうが、死ぬときに思うことはそれぞれのはず。満足して死に臨めるかどうか、気になるところです。なんとか、「したいことはみんなやったな」とおもって、死の床につくこと。これが今からの課題です。その思いを新たにした、年初の映画鑑賞でした。
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