アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

ハッピーマウンテンで牛のうんこ染めWSを開きました。

2024-08-07 14:25:47 | 草木染め

 8月最初の土曜日、お隣の長野県根羽村のハッピーマウンテンで、草木染めワークショップを開きました。

 ハッピーマウンテンは、山地酪農の牧場。10頭ほどの牛が、山に生えている草を食べて、畜舎に入ることなく外でずっと過ごしています。牧場主は幸山明良さん。7年前から、ほぼ杉やヒノキだけだった山の整備をはじめ、今は絶滅危惧といわれる鳥までやってくる、生態系豊かな森を、牛とともに作っています。

 その幸山さんが前からやりたかったという牛のうんこ染めワークショップ。その講師として参加させてもらいました。

  当日は朝から猛暑。標高1000m近い山だというのに、日差しが強くてつらいほど。

  前日の真夜中に東京を発って、朝5時頃根羽についたというお母さんと男の子3兄弟。彼らは牛が大好きで近県の牧場にはしょっちゅう遊びに行くのだとか。でも、野外での作業は始めてだそうで、さっそく幸山さんから薪割りの手ほどきを。

  牛のうんこ採取へ。こちらをはじめて訪れたとき、牛のうんこが臭くないのに驚きました。彼らが食べているのは山の草だけ。一般の牛舎で飼われている牛は濃厚飼料といって、脂肪の多い牛乳出すため、穀物もふんだんに食べさせられます。そして大きな違いは、運動量! 健康な牛のうんこは臭くないのだと、そのとき知りました。

  うんこの煮だし開始。参加者の皆さんが拾ってきたうんこは、私が前に手でつまんだ乾いたうんことは違ってできたてほやほやの柔らかいうんこ。そのせいか、煮だし始めると、やはり臭い。でも、嗅いだことのある牛舎の臭さとは違い、十分耐えられる臭さです。

  一月前に試作するために持ち帰ったうんことは微妙に匂いも色も違う気がしました。たぶん、食べた草が多少違うのでしょう。根羽はトウモロコシの産地なので、近隣の農家で売り物にならない🌽がこの牧場にやってくることもあるそうなので、そのせいもあるのかもしれません。

  なにせ、普通の哺乳類と違って、牛の反芻能力はものすごい。固い笹もバシバシ食べるくらいなので、煮上がった染め液を濾すのには、ずいぶん時間がかかりました。

  隣の竈で煮たのは、クロモジのチップ。牧場内には、近年価値が急速に認められ始めたクロモジが結構生育しています。

  そのクロモジを細かく刻んだものを染料に。たいして臭くないとはいえ、やはりうんこらしい匂いのする鍋の隣で、ず~っと嗅いでいたくなる品のある香りのクロモジの鍋。こんな取り合わせのワークショップ、めったにないとおおもいます。

  試し染めしたときは、きれいな黄色だったのに、チップの量が多すぎたのか、この日のクロモジの染め液は、ピンクに近い肌色に。

  うんこ染めの方は、濃い草色に。こちらも、試し染めの時よりずっと黄色みの少ない色になりました。ちゃんと浴比をしらべたわけではないので、なんともいえませんが、食べたものの違いが色に出たのかしら。

  こちらがうんこ染めです。

  アルミ媒染は薄め。銅媒染ははっきり草色に。鉄媒染だと暗い草色に。

  クロモジ染めの方は、色合いがはっきり分かれました。右の二枚は同じスカーフですが、右端は銅媒染、手前はアルミ媒染。グレーは鉄媒染です。この色いい。

 上記二枚の写真に写っている数枚の小さめの布は、参加者のお一人が子供さんの夏休みの自由研究にとお持ちになったもの。それぞれ4枚ずつ用意し、豆乳、牛乳、酢、オレンジジュースに浸けた布をご持参。草色のほうが牛のうんこ、肌色のほうがクロモジ染めです。酢やオレンジジュースに浸けた布は染まらないだろうとおおもいましたが、うんこ染めの方は予想に反してうっすらですが色がつきました。実験成功!

  RちゃんとAちゃん姉妹。お姉さんはクロモジ、妹さんはうんこ染めです。

  この日の昼食は、根羽にある村の施設「くりや」内の木村食堂のベジ弁当を頂きました。こんな田舎で、安心できる素材を使ったお弁当が頂けるのがうれしい。

  食後は、牧場内でわんさと生えているベニバナボロギクを使ったクッキーを、みなさんに召し上がっていただきました。

人間が食べても野菜のようにおいしいベニバナボロギク。なのに、なぜか牛は嫌って食べません。そのおかげで、なかなかうまく育たないこの草が、ハッピーマウンテンにはいっぱい。しかも牛のうんこで育っているので立派。そのベニバナボロギクの葉と花をゆでて刻んで、オートミールのクッキーに加えました。

 写真を撮り忘れましたが、クロモジのチップの水出し茶は、とてもいい匂いがして好評でした。

  皆さんが帰り、片付けが終わったあと、根羽のさらに飯田寄りの村、平谷に新しくできたアイスクリーム店のアイスクリームを食べに、幸山さんたちと行きました。場所はひまわりの湯のすぐ前。昔はAコープだった建物です。開いているのは、幸山さんと同じく、山地酪農を平谷の山で実践している林さんご夫婦。牧場の名前はペアツリーファームです。

  草だけを食べて育った牛乳から作られたアイスクリーム。喉のどこにも引っかかることなく、すすっと溶けます。なのに、豊かなコクを感じます。上にかけてあるのは、エスプレッソコーヒー。よく合います。

  牛とともに、この山で1年間寝泊まりしたこともある幸山さん。彼を見つけると牛は我も我もと寄ってきて、彼になでたりさすったり掻いたりしてもらいたがります。彼がいることで、安心して山の生活を続けているように見える牛たち。針葉樹だらけの不自然な森だったこの山が、牛と、整備を続ける幸山さんの手によって、本来の豊かな生態系に生まれ変わりつつあります。糞虫は、肥沃な土壌を作るに欠かせない存在なのだそうですが、いまや世界的に激減しているのだとか。その糞虫がこの山にはあちこちに。この日は、糞虫マニア(!)だという少年が、希少の糞虫を発見したそうです。すばらしい!

  牧場では鶏も放し飼いしています。子供たちは、このひよこに夢中。生き物の温かさ、ひ弱さ、可愛らしさをたくさん学んだようです。

 牛のうんこ染め、初の試みでしたが、参加した方たちはみな面白がってくださり、充実した一日を過ごしてくださいました。また別の季節に、今回とは異なる草を食べた牛のうんこを、いつか染め材料に使ってみたい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする