eラーニングの現状と展望

ネットラーニングHD、ネットラーニング、WIWIW、Phoenix Consulting、各代表取締役 岸田徹

eラーニングとは

2005-02-28 12:47:31 | eLearning
eラーニングとは何かについて、さまざまな考え方が存在する。新しく登場した教育なので、見方が定着するまでいろんな議論もあるだろう。
以下にのべるのは、ネットラーニングが考えるeラーニングである。
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■ネットで実現するまったく新しい教育

eラーニングは、ネットをつかった教育といっていいだろう。したがって、双方向の教育であること、個別教育であること、大規模教育であることなどに最大の特徴がある。また、デジタルでもあるので、音声や動画などを駆使した総合教育でもある。

このような特徴をそなえたeラーニングは、これまでにまったくない新しい教育なのである。教室における教育や、書籍や、通信教育などとまったくちがう。したがって、それらの教育を保管したり代替したりするものでもない。
まったくちがう新しい教育としてeラーニングをとらえることができるかどうかは、きわめて重要なポイントである。これからの教育研修全体の中でeラーニングをどのようにいかしていくのかということにふかくかかわる。

■集合研修との対比

これまでの教育の主流は、集合教育であった。学校がその代表だ。それに対する本格的な個別教育としてeラーニングが登場している。
これまでは、集合教育以外に効果的な教育方法がなかったために、本来個別教育でなければならないものまで、集合教育に代行させてきた。
「学習」ということばには、「学ぶ」と「習う」という2つの教育が含まれている。「学ぶ」は知識を身につけること。知り、わかるようになること。「習う」は、技術をみにつけること。つまりできるようになること。
この「習う」は、練習ということばがあるとおり、くりかえし練習しみにつけることだ。これは、本来個人が自分でやるしかない。九九をおぼえたり、計算問題をたくさん解いたりするのは、学校では宿題にした。集合教育には、スキルの習得はむかない。
個人教育であるeラーニングが、まず、情報技術者のスキル教育からはじまったのは、本来スキル教育が個別教育であるからである。

この個別教育は、「学ぶ」にあたる知識の習得でも大きな役割をはたす。各個人の学習目標がちがい、習得レベルがちがい、学ぶ速度がちがう以上、知識教育においても、個別教育はきわめて効果的なのだ。資格取得は、試験対策なので、現状では知識学習が基本だが、eラーニングの合格率の高さが目立っている。報告されている多くの事例では、ほぼ集合教育の倍の合格率をあげている。
個別教育であることから、eラーニングは、高度の教育にも適している。米国のMBAなどでひろく普及していることもその例のひとつだ。

■eラーニング=双方向の個別教育

eラーニングが個別教育であることは、学習履歴をとることができることと双方向性による。双方向であることにより、チュータなどの指導員と学習者が頻繁にコミュニケーションをはかることができる。個別の学習履歴により個別指導ができる。

週に2回、1回2時間塾で教えてくれるとしよう。予習復習をしても、週に4時間の教育だ。もし、家庭教師がついて同じ時間教えたとする。優秀な家庭教師なら、その4時間以外のすべての学習を指導し、4時間には、あらためて解いた問題でできなかったところだけを有効に指導する。この方法は、個別教育でしかできない。ぼんくらな家庭教師は、塾と同じ教育をする。
ぼんくらなeラーニングは、集合教育や、書籍や通信教育と同じことをする。そして、ちがいは、音や動画がつかえて学びやすいことですという。
そうではなくて、eラーニングは、教育そのものがまったくちがうのである。まだ、そのeラーニングの活用ははじまったばかりであり、特徴を十分ひきだせているとは言えない。しかし、すばらしい可能性を秘めている。
 
 企業がもとめる教育研修も個別の時代にはいりつつある。

■大規模かつリッチな教育

ところで、eラーニングのもうひとつの特徴は、大規模教育であることだ。海外の拠点まで含めて、何十万人でも、機動的にいっきに教育を実施することができる。しかも、その全員の学習履歴をとり、個別指導も可能だ。

ネットの時代になって、はじめて、リッチネス(内容豊かなサービス)とリーチ(サービス規模)を同時に実現できるようになったといわれている。これまでは、その二つはトレードオフ、つまり片方を実現するには片方を犠牲にしなければならない関係にあった。ネットは、その両方を同時に実現することを可能にした。
教育においても同じだ。ネットの教育は、個別教育であり大規模教育である。

最近、個人情報保護やコンプライアンスの全社員教育にeラーニングを活用する事例が急速にふえている。実際、数千人・数万人の全社員教育を集合でおこなうことは、不可能に近い。eラーニングしか方法がないといってよいだろう。これなどもeラーニングが大規模教育に適していること、学習履歴がとれることなどによる。
内定者教育でeラーニングが急速に拡大しているのは、このようなeラーニングの特徴のほかに、ある場所にきまった時間に集まらなくてもどこでも学習できることや、コミュニケーションツールとしてもすぐれていることなどにもよるだろう。

■教育効果の測定

ところで、eラーニングには、別の特徴もある。これまでの教育研修の方法にくらべて、きわめて効果が高いこと、そして、コストが大幅に低いこと。
さらに、個別学習履歴、個別成績管理により、教育効果の測定が可能になったことだ。これまで、企業で費用をかけて教育を実施しても、それが業務にどのように効果があったのかほとんど測定できなかった。集合教育では、ほとんどその教育実施による受講生の教育効果は測定されていない。eラーニングでは、一人ひとりの教育効果を測定し記録する。そのデータがあるので、業務側のパフォーマンス測定ができれば、トータルの教育効果を測定できるようになる。
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このようなまったく新しい教育としてのeラーニングの登場により、企業教育のニーズの変化も背景にしながら、米国では、企業教育そのものが大きく転換しつつある。役員の中に、CLO、つなり、チーフ・ラーニング・オフィサーがおかれ、企業戦略の核心に教育研修が位置づけられるようになった。eラーニングは、企業変革のキラーコンテンツともいわれる。

まったく新しい教育としてのeラーニングは、企業教育をかえ、学校教育をかえ、生涯教育をかえる。抜本的に。

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