いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
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私的な財津和夫論。(第20回) private essay about k. zaitsu

2011-07-08 19:56:35 | 日記
 「私的な財津和夫論」の第20回は、作曲論・作詞論です。
 20 作曲論・作詞論
 類(たぐい)まれなミュージシャン、コンポーザーである財津和夫さんは、40年近い音楽活動の中で800曲余りの楽曲を作曲しています。年間20曲程度の作曲ということになり、毎年40年間アルバム1枚分は発表している多作の計算になります。
 多作で多様なメロディラインは、流れるように揺れてスピード感のある清流のような美しくきれいなメロディラインが特徴です。

 天性の特異なメロウな水あめのような透明感のある財津さんのハイトーンボイスをいかした楽曲のために、総じて難解な曲想が多くて財津さんのスキルの高さ、歌のうまさならではのわかりやすい平易な歌唱法で聞かせるが、歌ってみるとなかなか手ごわいメロディラインがよくわかります。

 あこがれたビートルズがそうであったようにコード進行にも斬新性を求めて、ギター奏者としても卓越した鈴木康博さんも、財津作品の編曲では難解なコード進行(「逆回転」)に驚いたと言っています。

 作詞は、情景描写にすぐれてドラマ性が高く、日常用語(会話ではない)をドラマに組み立てて芸術的インプレッション(impression)を引き出す効果に優れています。韻を踏むスキルも豊富で好きです。
 「サボテンの花」のただの洗濯機の中を「シャボンの泡がゆれていた 君の香りがゆれていた」で家を飛び出した女性のいない無情感を見事に表現してみせています。

 言葉(lyrics)とメロディに一体感があって、言葉(lyrics)をいかすメロディのすばらしさがひかります。日本語をポップスに不自然なくのせて歌う作曲先駆者とも言われています。
 
 これからは財津さんの作曲法、作詞法、音楽を人生に賭けたフロンティアな「生き方」は、後輩ミュージシャン、音楽を志す人にも教授していってほしいものです。すでに芸術大学では「ビートルズ」を通してポピュラー音楽の歴史的考察の授業も不定期ではありますがはじめています。性格どおりの大変真面目な(当たり前ですが)教授法で、授業開始30分前には教卓に座って待ちうける授業法だそうです。

 音楽専門学的な分析はさておいて(わかりません)、財津和夫さんの作曲法は「ギター」か「ピアノ」というのが通則です。チューリップとしての実質デビュー曲の「魔法の黄色い靴」はイントロのギター奏法、テンポ、リズムから、これは「ギター」で作曲したものでしょう。
 弦がはねるような軽快なリズムに上下に揺れるように流れるメロディラインに発想の豊かさ、斬新さが秀逸な財津メロディです。

 財津さんは作曲法について、練って計算しつくして作った曲想よりも、「ふっ」と頭の中に「天から降っておりてきたかのように」浮かんだ曲想の方がヒットして、受け入れられることが多いと言っています。

 チューリップ定番の「銀の指輪」は、当時、大磯で合宿中に海辺で浮かんで数分間で仕上げた曲だと財津さんが言っていました。前奏から波が浜辺に打ち寄せるアレンジがよく出ています。流れるように揺れてスピード感のある、これぞ財津メロディの特徴のある名曲です。

 「心の旅」は、いきなりサビの部分からピアノの音階を踏んで、これは「ピアノ」による作曲でしょう。「虹とスニーカーの頃」、「青春の影」、「ブルースカイ」、「夢中さ君に」は「ピアノ」作曲法による特徴があります。
 財津メロディ作品集(市販)のスコア(score)を見ていると、主旋律以外のリズム表記にピアノ連弾の特徴がよく出ているのがわかります。

 総じて財津さんがコンサートでピアノ(キーボード)で歌う曲は「ピアノ」作曲法によるものが多いのは自然のスタイルです。
 「サボテンの花」は、スコアから見れば「ギター」作曲法によるものと思われますが、間奏のピアノの特徴もありこの作曲法はどちらともわかりません。

 「聞こえるよ 今年も雪の音・幸せを道にまいた店の明り」(冬のメインストリート)、「ほんの小さな出来事に 愛は傷ついて」(サボテンの花)、「わがままは男の罪 それを許さないのは女の罪」(虹とスニーカーの頃)、「自分の大きな夢を追うことが 今までの僕の仕事だったけど 君を幸せにするそれこそが これからの僕の生きるしるし」(青春の影)、「まっ赤な車でいつもやってくる そよ風が髪によく似合う女の娘」(夢中さ君に)、「朝もやけむった駅のホーム じっと見送る年老いた人 動き出した汽車にむかい その人は娘に初めておじぎをした」(wake up)などなど、財津さんは感性豊かな作詞者でもあります。
                              〔転載禁止です〕

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