いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

犯罪と更生。 criminal act and possible regeneration

2010-11-30 20:17:41 | 日記
 (1)刑法は報復主義(retaliationism)をとらないから、それは「社会正義」のパラダイム
(paradigm:模範)としての「公平性」、「公正性」の維持を目的とする。
 被害者の将来、原状回復の可能性がない場合の、加害者だけの将来性、原状回復
〔更生の可能性(possible regeneration)〕を論じる、判断するのは、公正ではあっても
「公平性(justice style)」を欠く。

 (2)殺害の行為(criminal act)は、年令に関係なく逆に未成年だからの抑制のきかない
残虐、非人間的なものであった。直接、殺害行為者本人とは関係のない当事件被害者の
友人までも無情にも残酷に殺害している。
 未成年者による石巻市3人殺傷事件の裁判員裁判は、最高裁判例の死刑判定基準(9
項目)に則して審議し、死刑判決にあたって①加害者本人の反省度、②当時18才(現在
19才)の少年の更生の可能性が論議の焦点となった。

 殺害方法の残虐性、動機の身勝手、反省のなさの悪質性からの死刑判決の妥当性に、
最後の障害となったのが当時18才の未成年者の「将来」にわたっての「更生の可能性
(possible regeneration)」だった。

 (3)判決では、裁判審議の経緯を述べたあと、「少年の更生可能性は著しく低いと評価せ
ざるを得ない。」と結論付けて、死刑判決を決定した。
 世界は、国際世論は死刑廃止が主流だが、それを基本理念に置いても(本ブログの死刑
廃止のテーマ参照)刑法に最高刑として死刑規定が存在し、最高裁判例に死刑判定基準
が存在している日本で、今回の事例はそれでは行為の残虐性に則しても、「その後」反省
も深く、少年の「更生可能性」が高いと判断されればその非人間的な「行為」にかかわらず、
死刑は適用しないことが、社会正義のパラダイム(paradaigm)としての公正、公平というこ
とになるのか。

 (4)「行為」そのものでもなく、「年令」、「将来性」で差別される人的要素が法的判断に存
在することが、人が人を裁く不条理の中で社会正義のパラダイムとしての公平、公正性を
欠く司法の現実観だ。だからこその死刑廃止の理論的妥当性でもある。
 最近の一部高年令者に犯罪行為が増加している。将来性のないことを担保にして、犯罪
で公然と国に生活を保障してもらう(刑務所勾留生活)というものだ。
 年令、将来性を基準とする社会正義のパラダイムへのひとつの弊害だ。

 (5)少年の更生可能性に期待するということは、一生拘束されて罪を償う無期刑でもなく、
少年のこれからの長い一生、将来の中で「社会復帰」をして被害者の分まで社会貢献を果
たすことに期待するものとなる。
 人道上のせめてもの救えるものは救うという、可能性としては考えられる公正性はあるが、
しかし、年令、将来性の差別化で「公平」ではない。

 もちろん、将来の長い少年にとって期限を切らずに長い一生を拘束されて罪を償う無期刑
の残酷さは、パラドックス(paradox)として刑法が報復主義をとらない理念にそぐわないこと
になる。

 (6)分かりやすい仮定で言うなら、それでは余命幾(いく)ばくもない老人の「同様」の犯罪
行為は死刑判決に障害はなく、将来の長い若者であれば「同様」の犯罪行為でも社会復帰
の可能性を残すということになる。
 年令で、将来性で人間を差別化して、犯罪行為の悪質性は二次的な判決判断の構成要
件としてしまう。それでは、社会正義のパラダイムを維持することはできない。犯罪はむしろ
人を憎まず行為(罪)を憎むと言うのが哲学だ。

 (7)刑法の報復主義をとらないスタンスから、死刑適用に当っては社会正義のパラダイム
への公正、公平性の発信、維持が趣旨だ。考えによっては、死刑判決より「苛酷」な期限を
切らずに一生拘束されて罪を償う無期刑も、人間性否定の観点から考えものだ。

 犯罪は、「行為」の「社会正義」のパラダイムからの「距離観」を見計らっての公正で公平
な基準により裁かれるものだ。
 本来そこには「行為の同質性」があれば、年令とか将来性とか更生可能性とかが介在す
るものではない。


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たけとよ輝きホール。 k. zaitsu live & talk concert 2010

2010-11-29 20:01:11 | 日記
 愛知県武豊町のゆめたろうプラザ輝きホールに来ています。武豊町は芸術文化に関心の高
いところで、このプラザでは多種多様なイベントが開催されて多くの観客を集めています(ホー
ムページ参照)。今日の財津和夫さんのLive & talkコンサートも、早い段階で完売(sold out)と
なっていました。

 ゆめたろうプラザ輝きホールは、外観も内装も大変芸術的な様式のきれいな円形のコロシア
ムのような建築物で、周りが全面ガラス張りで薄暮に明りが灯って建物の周りを囲む人工の
池の中に見事に浮き上がって見えます。
 輝きホールは、外観同様、円形のオペラハウスを思わせる空間様式で2階、3階の両脇には
バルコニー席がステージに向かってせせり出ています。芸術の香りの高さを発信しています。

 PA(public address)担当の女性が自分の頭の位置に合わせて、財津さんが使うセンターマ
イクの高さを何度もセッティングしています。一生懸命の本人には申し訳ないけれど、その仕
草に和(なご)みます。結局は財津さんが適当にマイクを自分で調整(adjust)するんですけど
ね。

 午後5時半すぎにダークグレーのシャーツスタイルの財津和夫さんがステージのセンター
マイクに登場して、ビートルズのスローバラードにアレンジした「抱きしめたい」でオープニング
です。スローバラードの説得力のある財津ボーカルに聴衆観客からいくつも感嘆の声が上が
っています。
 円形のオペラハウス仕様のホールにちょっと硬質のはっきりとしたよく通る音響音、反響音
がひろがります。こういうホールは、言葉(lyrics)を的確に伝えるよく前に出る発声の財津ボ
イスが実によく合っています。ホールを圧倒します。

 「愛の力」、「サイドシート」のシンプルなメロディライン、言葉(lyrics)が実に心地よく、歯切
れよく鮮明に伝わってきます。「愛の力」は、このホールにマッチして財津メロディ、ボイス、
発声がまるでオペラを想わせる曲想にして伝わってきます。

 「この武豊町は、実はこのコンサートのプロデュサーの出身地、故郷なんです。本人はすご
くやる気を出していまして、私たちメンバー全員いっちょう、やってやろうぜと気合がはいって
ます。スポーツ競技と違ってやる気を出してもどこまで反映されるかわかりませんが、あまり
やる気を出さない方がかえってリラックスしていいように思うんですが、最後まで精一杯がん
ばってやってみたいと思います。」、
 との財津さんの言葉通り第1ステージは、シンプルできれいなメロディラインを言葉(lyrics)
ひとつひとつを丁寧に繊細な表現力でホールに伝え、聞かせます。

 10分休憩後の第2ステージでは、バンドサウンドを今度は力強く、時には激しくメリハリの
効いた厚い財津ボイスでホールに伝え、聞かせます。

 「こんなに多くのみなさんに来ていただいて、もう少し私もがんばって歌い続けてみてもいい
のかなという気持ちになります。今日は、本当にみなさんからいいものを頂いたような、何か
強い力、勇気をもらいました。」

 「naked heart」、「愛はちっとも難しくない」は、時にはテンポよく軽快にリズムポップスにし
て、また分厚い壮大なサウンドに力強い財津ボイスで、これぞ財津メロディを伝えて財津さん
のギター弦をかき切るかのような激しいギタープレイも出て、ホールを圧倒します。コンサート
のメインディッシュですね。
 オクターブの幅の広い「wake up」、「青春の影」を音程の安定したメロウな高音の力強い財
津ボイスで見事に歌い切りました。最近では特にすばらしい「wake up」、「青春の影」です。
 「急行の停まる街」は、どちらかと言うと激情型の強い財津ボイスで歌い切りました。「ふた
つめのクリスマス」は、財津ボイスがすっかりクリスマス気分をひろげて、雪の歌は財津さん
の深い感性にマッチしていいですね。
 「この世の端でも」、「心を開いて」では、メッセージをよく響く強い財津ボイスでホールに発
信しました。

 アンコールの「虹とスニーカーの頃」、「夢中さ君に」、コンサート最後の締めくくりの財津コ
ンタクトは、「いっちょう、やってやろうぜ」の言葉通り、キーボードの連弾を何度もくり返して
リクエストして、興奮の中での終演でした。

 ミュージシャン 財津和夫(V G Pf) 山内和義(B Ft Pf) 小泉信彦(Pf) 
           尾上サトシ(G) 田中トオル(Dr)

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茶のかおりかめやま。 k. zaitsu live & talk concert 2010

2010-11-27 19:45:50 | 日記
 グランドピアノを置いた型の外観の亀山市文化会館に来ています。今、午後9時半近く、
財津和夫さんのlive & talkコンサートが終りました。満員の聴衆観客が一斉にホールの出
口に向かって移動しています。横の二人連れの男性が、「今日は楽しかった。昔を思い出し
た。あそこまでやったら、もう1曲ぐらい聞きたかった。」と楽しそうに話しています。

 さかのぼって午後6時半。亀山市文化会館のホールに入ります。アイボリー(ivory)の内
装のホールは、外観よりは天井がすごく高くてホール空間が広く、扇型の客席は観客席の
スロープが急傾斜でステージが近く感じて見やすいホール設計です。

 午後7時すぎにダークグレーのシャーツスタイルの財津和夫さんがステージに登場して、
スローバラードにアレンジしたビートルズの「抱きしめたい」でオープニングです。財津さんの
英語の歌詞の発音がネイティブ(native)で、スローバラードと相まって気持ちがよく伝わっ
てきます(ピーター・バラカンに財津さん、若い時に相当鍛えられました。本ブログ注)。
財津さんならではの、唯一のビートルズが聞けます。このホールは天井が高いこともあり音
響効果もよく、音がクリアーに伝わってきます。

 「亀山には初めておじゃまします。亀山ローソクで有名ですが、最近ではシャープ工場進
出で話題になりましたね。今日は、天気が良かったので熱田神宮に行ってきました。玉砂
利を歩いていましたら、天気が良かったんですが鬱蒼(うっそう)とした大木に太陽が遮(さ
えぎ)られて、すずしいというよりは寒い感じでした。神殿にお参りして、今日のコンサート
楽しくやれますようにと祈ってきました。」の財津さんのあいさつで、「愛の力」も「抱きしめ
たい」のスローバラードアレンジとのつながりが良く構成されて、財津さんのメロウな高音
が語りかける曲想ときれいなメロディラインをうまく引きたてて、随分といいですよ。

 「私から年老いたあなた方へ」では、ベースギターの山内くんがフルートで情感を高めま
す。フルートの管楽器の音がよくホールに響きます。山内くんは「抱きしめたい」ではベー
スの他、キーボードもところどころ弾いています。

 「だんだん年をとってくると女性化してきます。男性ホルモンが低下してきまして、老症
候群と言うそうです。女性の子育てとか大変さ、気持ちがよくわかるようになってきました。
私も娘がいますが、今ではもう相手にもされませんが、それはそれで親離れをしていると
いうことでいいんですが、その娘が子どもの頃の寝ている顔を見てこんな歌つくりました」
と「my dear」。淡々としたメロディラインの中に、財津メロディの「ひねり」がいくつも効いて
いて、「切手のない贈り物」と同じ流れの財津サウンドのひとつの特徴です。

 フルートやシンバルの反響音も取り入れたアコースティック・バージョンの第1ステージ
は情感をゆったり、たっぷりと伝えて、10分の休憩のあとの第2ステージでは「naked
heart」のバンドサウンドでオープニング、財津さんはここでは力強く、はぎれのいいボー
カルを聞かせます。
 第2ステージは、第1ステージとのコントラスト(contrast)もよく効いて、特に財津ボー
カルを鮮明にして聞かせて言葉(lyrics)のひとつひとつをこれでもかとはっきりと伝えて、
実に心地がいい。とにかく、財津さんうまいです。

 「ふたつめのクリスマス」も、財津さんのメロディライン、ボイスはどうしてか心地いい
クリスマス気分にするのが不思議です。
 「愛はちっとも難しくない」は、流れるように揺れてスピード感のある財津サウンドの特
徴がよくでた楽曲で、厚い深いサウンド構成ですばらしい出来栄えとなりました。コンサ
ートのメインディッシュです。第2ステージは財津さんの鮮明な声がよくのびて、特にいい
ですね。

 満員の聴衆観客のアンコールの圧倒的な拍手が音響のクリアーなホールに響いて、
「虹とスニーカーの頃」、「夢中さ君に」でコンサートは午後9時半近くに終演です。
 バンドのアンサンブル(ensemble)も随分とよくなりました。もっと、もっと進化しましょう。

 ステージ向かって左から、首と肩のこってる田中トオル(Dr)、左肩のこってる山内和義
(B Ft Pf)、同じく左肩のこってる尾上サトシ(G)、どこもこっていない小泉信彦(Pf)との
メンバー紹介に合わせて、その都度それぞれ首、肩、手をグルグル振って回して見せま
す。そして、財津和夫(V G Pf)。



 

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無効率24%と35万人。 high level of invalid rate 24%

2010-11-25 19:31:02 | 日記
 (1)名古屋市の議会リコール(解散請求)の署名活動(signature movement)は、署名者
46万6千人のうち無効率(invalid rate)が24%に昇りリコールに必要な法定数の36万6
千人に1万2千人不足して、住民投票の請求は実質上(現在、縦覧中)不成立に終わった。
 署名ルールの周知に問題があったとは言え、議会の解散はそれだけ重い、むづかしいも
のということだ。

 直接市民が選ぶ直接民主主義の市長には、また市民が選ぶ議員で構成する市議会の
解散権はない。リコール署名による解散請求の住民投票の結果により、議会解散が可能
となり、署名活動の期間、収集方法、署名者数でのハードルは高い。
 名古屋市の場合、審査機関である市選管委員会が事前説明と署名活動後とで審査基
準(署名判定基準)をより厳格なものに変更する「不手際」があり、また結果から見れば双
方での書式、手続き上のルールの確認が不十分だったことが、無効率24%(全国平均10
%)と高い数値になった可能性がある。

 (2)ルール周知の不手際はあったと言え、最終的な署名判定基準は極めて常識的な内容
のものであった。政令指定都市での大規模な署名活動の内容、収集方法の複雑化に双方、
適切に説明、確認等対応できなかったことが無用の混乱を生み無効率の高さ、リコール請求
の不成立につながったと考えられる。
 もちろん、事前説明と署名活動事後とで審査基準を変更するなどとは、常識に添った厳格
化とは言え、審査そのものへの信頼関係を大きく損なうものだった。リコール請求側は、異
議申し立てを検討中のことだが、無効率24%のハードルは高いのが現実だ。

 立法府としての市議会の解散は、市民の意思決定、市民生活への評価、影響力も大きく、
それほどむづかしいと言うことだ。ただし、今回の名古屋市のような大規模な政令指定都市
でのリコール署名活動では、現在の画一的な全国制度、方式に適切に適正に対応できない
ものも判明(期間、区単位、受任者、収集方法)して、また審査機関も政令指定都市規模で
の初めての事例と言うこともあり、説明、手続き、運営に不十分なところがあったことは見直
しが求められる。審査への公平性を損なったことは、公正性にも影響して問題を残した。

 (3)事の発端は、市民税恒久減税を政策のプライオウリティ(priority)として打ち出して、市
民の圧倒的支持(51万票獲得)で当選した市長が、政策実行の段階でこれを財源問題にす
りかえた市議会と対立して拒否(1年間限定の市民税減税と)されたことから、市長と議会が
対立して政策論議不毛の感情的対立にまで発展してのリコール署名活動となったものだ。

 市長の圧倒的な市民支持を背景とした強引な政治姿勢と、市民の意思を多様な見地(政策
のプライオウリティ)から論議しない固執した市議会の不毛の対立構図だ。

 ①市長には政治理念、政策提案では市民の支持も多く(議員報酬削減政策に70%の市民
支持。市議会は反対構図)、政策の方向性、理論はいままでの市政にない画期的な見るべ
きものがあるが、議会対策、スタッフの活用「なし」での政策提案の繰り返しの強行突破型市
政では、民主的な議会運営とは言えずに議会の協力は得られない。

 ②市議会には、市民の意思への高い配慮、市長との具体的な政策のすり合わせに欠けて、
立法府としての機能を果たしていない。

 議会リコール活動は、ひとまず不成立で決着すると思われるが、有効署名35万人の市民が
市議会に政策問題改善を突きつけたことは、市議会側も市長側も的確にこの市民の意思を取
り込む議会運営、市行政に努めて、相応の「果実」を市民に示すことが必要だ。

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戦争をマグマの休火山。 dormant volcano of war magma

2010-11-24 19:33:44 | 日記
 (1)首相の顔から笑顔が消えて久しい。しかし、連日の朝、官邸に入る時から眉を寄せた
苦渋の表情でちょっと前かがみで足早に通り過ぎる(映像)、いかにも自信なさげな姿勢は
いただけない。
 笑っていられるような政治情勢ではない難問山積で、にっちもさっちもいかない内外を取
り巻く四面楚歌の国政運営だ。内閣支持率も20%近くに急落して国民の失望も大きい。
 もちろん誰のせいでもない、首相のリーダーシップ不足というよりは不作為のせいだ。

 もっと真面目に「有言実行」型で国政運営に当ってもらいたいものだが、大言壮語で言う
言葉がむなしくて、今や誰もが信ぴょう性のあるものとは感じていない。4か月前の「これ
からが本格的な仕事内閣」、「有言実行内閣」のキャッチ(catch phrase)がむなしい。
 国民は毎日、首相の顔を見せられているのだから、せめて振舞いだけでも普通でいいか
ら自然に振る舞って、国民にストレスを感じさせない配慮をするべきだ。

 昨年、国民の圧倒的支持を受けた民主党の政治理念、「志」に原点回帰して「有言実行」
をひとつひとつ実績として積み上げていくしか、ない。いつもより意識的に歩く姿勢は背筋
を伸ばして、ゆっくりリズムを取り、顔を上げて余裕を意識して見せて歩いてごらんなさい。
 今の首相は、まるでしかられた子どものようだ。

 (2)内外の政治情勢は、緊迫を加えた。朝鮮半島は、「戦争」をマグマ(magma)にして不
安定な「休火山(dormant volcano)」だ。過去に幾度となく小噴火を繰り返して、この23
日に今までのように軍事施設への標的に留まらずに、北朝鮮側からの韓国側の島への
住民無差別の2時間にわたって断続的な170発程度の砲弾攻撃(報道)が起きた。

 北朝鮮の特異な軍事独裁、全体主義(先軍政治)体制から、国連決議による国際的な制
裁措置により、ひとり北朝鮮は国際社会から孤立を深めていった。最近は、後継者問題もあ
って国際社会(とりわけ米国)に向けて挑発的な行為で注目を引く行動が目立っていた。

 今回の攻撃も、着弾映像からは規模の大きな攻撃とは思えずに事態は国内外に向けた自
己満足型の問題注意喚起のつもりだろう。しかし、死亡者も出て民間への被害も拡大してお
り、そもそも「戦争」をマグマにした「休火山」地帯だけに到底理解できない国際世論に逆行
した国家蛮行だ。エスカレート(escalate)次第では、韓国、米国、日本に中国を巻き込む不
測の戦争休火山だ。

 (3)北朝鮮からの攻撃のあった海域は、韓国、北朝鮮が双方の主張する排他的海域(境界
線)がクロスするところで、韓国、米軍がここで軍事演習を実施していることが北朝鮮を刺激
したとの見方もある。世界から孤立する軍事独裁国家への軍事的な外的刺激は、「戦争」と
いうマグマを抱える休火山地帯では、無用だ。

 経済発展に軍事強化の中国にとって、アジアでの唯一の同盟国とも言える北朝鮮だ。何
かと北朝鮮を擁護する中国だが、中国の国際社会での立場も一定の存在感を持ってきてお
り、ここは国際世論が中国に働きかけて北朝鮮の無謀な挑発を抑制させる責任を負わせる
必要がある。

 国際社会はイデオロギー闘争の時代から、経済協調主導のグローバル化共益世界にす
でに転換している。ひとり世界から孤立して遅れてイデオロギー闘争にすがる北朝鮮に対し
て、影響力を持つ中国がマイ・バランス(my balance)で北朝鮮を擁護するだけでなく、相応
の働きかけで東アジアの安定に努めるべきだ。
 そうでなければ、それはまた中国の国際社会からの孤立化、批判による経済発展の国力
にも翳(かげ)りを見て、中国自身にも降りかかってくる火の粉だ。

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