(1)経団連の十倉会長が日経平均株価が史上最高値を更新していることにバブルではないかとの指摘があり、これに「突破したときぐらいは素直に喜んだらいいのではないか」(報道)と述べた。株高を維持、上昇させるには「賃金を増やすという『成長と分配の好循環』を実現することが大事だ」とも述べている。
(2)史上最高値を記録する株高は企業の賃上げ材料とはなるが、大企業、富裕層と中小企業、仕事を持つ人、労働者と65才以上の高令者との格差をより鮮明に拡大するものであり、「素直に喜んで」ばかりはいられない。
経済学者のトマ・ピケティは格差社会の解消には世界同時での大企業、富裕層への課税強化が必要と唱えているが、十倉会長が賃上げで「成長と分配の好循環」を実現することが大事と主張しても賃上げだけで成長と分配の好循環が国民全体の利益につながるものではない。
(3)むしろ、内部留保数百億円の大企業、株高恩恵を受ける富裕層への課税強化は必要で、これは経済成長、景気対策として政府、日銀の問題といいたいのだろう。内部留保数百億円の企業に経済成長維持、景気腰折れ解消の責任はある。
円安、株高、物価高は大企業、富裕層には好都合の経済情勢であるが、国民生活には賃金が上昇してもそれ以上に物価が上昇してこれまでは実質マイナス賃金となり国民生活は楽にはならない。
(4)岸田首相が物価上昇率を上回る賃上げ率実現を主張しているのも屋上屋を架すで、原因を自らつくってその解決のために苦労するという皮肉なパラドックス性(paradoxical)だ。65才以上の人口が全体の3分の1を占める高令化社会で仕事を持つ人、労働者と仕事を持たない65才以上の高令者との格差をどう解消していくのか、政治、社会の問題であり異常な株高社会を素直には喜んでばかりはいられない。
(5)少子化現代社会では大企業と労働者は利益共有体構造であり、企業も人材確保のために賃上げには前向きで賃上げ意識も共通目的として共有できるが、仕事を持つ人、労働者と仕事を持たない65才以上の高令者の格差社会は円安、株高効果の大企業、富裕層への課税強化により格差是正、解消する必要がある。