いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

国際紛争を解決する方法。 diplomatic scenario

2010-09-25 20:07:25 | 日記
 (1)日本は、国際紛争を解決するための戦力を保持しない(憲法)国だ。方法は、外交(diplomacy)。
 外交は交渉ごとだから、起承転結の筋書き(scenario)を書かなければ進まない。そのため
外務省は24時間体制で情報収集し、それだけのための専門担当者を置いて分析、解析、検
証、対応している。

 尖閣諸島近海の日本の排他的領海内で起きた中国漁船と日本巡視船との衝突事件で、日本
は知り得る事実関係に基づいて国内違法問題として逮捕した中国人漁船員を国内法に基づいて
法的措置で処分する対応を取るとした。

 中国は、かっての中国民間人の尖閣諸島不法上陸事件時の「政治的解決」を念頭に一時現場
海域に派遣した調査船を引き返すなど、政治的解決目論見で事態収拾を考えていた柔軟行動も
見られた。
 ところが、日本(政府)は当初の方針どおり国内法に基づいて処分する対応を重ねて表明して
中国人船長の勾留を続けて、中国も抗議を民間レベルまでに拡大し日本への輸出禁止の経済
制裁にまでエスカレートさせる方針も見せて、双方引くに引けない強硬姿勢を示していた。

 そこへ、日本企業の中国現地日本人社員(4人)の不法活動による逮捕拘束が起きて、昨日
突如という形で船長を勾留して事件を取調べ中の沖縄地検からの中国人船長の容疑否認、処
分保留のまま、釈放するという決定だ。
 
 (2)事件の構図がはっきりしていて、外務省も国内法に基づいて対処する事件と表明しビデオ
映像もあるという事件を、地検が一転自らの判断(日本政府発表)で容疑否認、処分保留のま
ま容疑者を釈放する自己否定などとは、法律解釈上あり得ない。

 日本政府に本事件解決の全体構図のシナリオがあったのか、あったとしてもまずくて、結果
として政府が地検に結論を押し付けた政府関与見栄見えのシナリオは衆知のことだが、ここで
「問題」にするのは、そこまで中国の出方(エスカレートする強硬姿勢)を読み切れずに日中双
方引くに引けない事態にまで、手もなく中国のエスカレート一方の強硬姿勢に屈した形での
「政治決着」を押し付けられた日本外交だ。

 皮肉なことに、国連総会出席のための日本首相が訪米中に日米双方で東シナ海問題は日米
安保体制の対応問題だとの、米国の認識もあったばかりだった。
 中国の当初の目論見(政治的解決)とその後の出方(エスカレートする強硬姿勢)を見誤り、
最悪のタイミングで国民の失望と国際信用を損なう、遅きに失した「政治決着」だった。

 (3)それなら、日本政府の一貫した方針どおり法律解釈上の整合性から国内法による法的
措置で突き進んだらどうなったのか。一般論的方針としては、はっきりした当然の対応(法的
対応)であった。
 国際関係は、相互に利益、不利益を共有する関係にあり、双方の立場、環境を踏まえた初
期交渉が大事だ。

 国際情勢、政治風土、力学的にはどうなのか。日本もかってのような軍事国家であったなら
ば武力介入による国際紛争に発展するのは必至な情況ではあるが、今は、「国際紛争を解決
する手段としての戦力を保持しない」国だ。日米安保体制はあるが、事は不法漁船と巡視船
の衝突事件だ。米国がこの問題で介在するようでは、国際社会から日本外交、政治力の力量、
能力を疑われるとこだ。

 国際問題を国内法に基づいて法的対応をとるという日本(政府)の強硬姿勢は、日本のよう
な政治風土、力学(国際紛争を解決するための戦力不保持)では解決の見通しのないシナリ
オしか描けなかった。
 日本には、そもそも当初から政治外交交渉しかまともに対応できる道筋(scenario)はなかっ
た。当初、問題解決のキャスティングボード(不法漁船、漁船員)を持っていたのも日本。スピ
ードある外交交渉で優位に事を進める外交シナリオが求められた。

 こういう時のために、それだけのために働いている外務省の情報分析力、解析力、解決能
力のレベルに驚くばかりだ。
 結果論ではない。情報分析、解析、解決能力の「先見性(foresight property)」のレベル
の問題だった。

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