(1)トランプ大統領の相互関税発動は世界を相手に対立、断絶を招いているが、最大は中国との高関税のかけ合いだ。双方120~140%以上の異次元の関税発動となった。中国側からこれ以上はつき合わないとなって、トランプ大統領も関税引き下げに言及した。
(2)中国習主席はトランプ大統領の関税発動に対抗するために、アジア諸国の協力関係強化を求めて歴訪している。石破首相も4月末にベトナム、フィリピンを訪問して、連携、協力関係の強化をはかっている。
中国、日本ともにアジア経済関係強化、安全保障体制の連携を目指しているが、トランプ関税発動での米中対立が米国とアジア経済の対立に向かえば、戦前の大東亜共栄圏の維持名目で旧日本軍のアジア侵略支配につながり第2次世界大戦に突き進んだ欧米と日本の対立に似たような構図にもなって、今の世界経済協調時代に逆行する危険なものだ。
(3)トランプ大統領としては政権1期目は米中経済戦争を仕掛けて、中国がともにアジア経済をけん引する日本に接近して協力、活路を求めたことがあり、今回のトランプ関税発動では例外のない相互関税を打ち出して日本も関税発動の対象として中国が日本に活路を求める道をふさいだともいえるが、中国も日本もアジア諸国との連携、協力関係強化に動いていることが想定のものだったのかはわからない。
(4)中国はトランプ関税対策として昨年からEUに王毅外相を派遣して外交関係の強化をはかっており、EUは近年中国との経済協力関係の強化に向かってアジア、EUのトランプ関税包囲体制ができつつあるようにみえる。
中国とアジアは中国の軍事力強化、海洋進出で対立、紛争が続いており、トランプ関税対策として連携、協力をはかることはむずかしく、日本としてもGDPが下降してアジア経済をまとめてトランプ関税貿易に対抗することは簡単ではない。
(5)現在、赤沢関税交渉担当が訪米をして日米関税交渉を進めているが米国は日本だけを特別扱いできないといっており、日本には他の国と連携、協力する余裕はない。米国と中国、日本のアジア経済の対立ということになれば、安全保障も含めての深刻で危険な問題をつくりだす。