オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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ヘンなゲーム機「GRAND PRIX FOUR」(SEGA, 1977-8?)の記憶(2)

2018年04月15日 20時04分51秒 | ピンボール・メカ
メダルゲームとしても、通常のAMゲームとしても運用できると謳う「グランプリ・フォー」のフライヤーには、メダルゲームで遊ぶときのルールが述べられています。


フライヤーより、ゲーム料金とオッズ表の部分。

グランプリ・フォーでは、メダルを4枚から2枚おきに最大16枚までベットできますが、ミニマムベットではメダルの払い出しがない、単なるAMゲームとして遊ぶだけになります。メダル10枚の貸出料金が200円だったこの時代に、メダル1枚で遊べるようにはできなかったという事情は理解できます。それにしても、このオッズ構成は変です。ベット数が低いうちは、例え配当が得られるだけのゲーム結果を出しても、ベットしたメダル数よりも必ず少ないメダルしかもらえません。メダルが増える配当を得るためには最低でも10枚のメダルをベットする必要があります。

おそらく、「グランプリ・フォー」は、「スロットレーシングでメダルゲームを作ったらイケるんじゃね?」という単純な発想から開発が始まったのだと思います。しかし、その時点では、スキルゲームと払い出しのあるゲームとは相性が悪いということがまだよく理解されておらず、また、ゲーム料金の設定と機械の売値の関係もそれほど深く考えられてはいなかったのではないでしょうか。

いざ開発が進んでこれらの矛盾点が明らかとなるにつれ、さまざまな議論が重ねられたことは想像に難くありません。しかし、もともと無理のあるコンセプトだったために迷走し、最終的には「メダルゲーム&AMゲーム両用」という、腰の定まらない機械となってしまったのではないかと思います。

結果的に、「グランプリ・フォー」が日の目を見ることはありませんでした。ワタシは30年ほど前に、この「グランプリ・フォー」の開発に携わったという方から少しだけお話を伺ったことがあります。その方は、ワタシが「メダルゲームが好きだ」と言うのを聞いて、「俺も昔(その時点で10年くらい前のことになる)メダルゲーム作ってたけど、お蔵入りになっちゃってさ。『グランプリ・フォー』っていうんだけど」とおっしゃっていました。せっかく作ったのに発売できなかった機械というものは世の中にいくらもあることとは思いますが、「グランプリ・フォー」の場合は、コンセプトの揺れから、メダルゲーム機としては魅力の薄い、しかしAMゲーム機としては(当時の常識としては)異例なほどに大きくまた値段の高い機械となってしまったのだと思われます。今さらそれを批判しても仕方がないことですが、失敗作が生まれる一つのケースとして、含む教訓は多い機械であるように思います。


「グランプリ・フォー」の「救援車」(真ん中のコースにある赤い車)。スピードの出し過ぎでスロットから外れて操作が不能になった場合は、コールボタンを押してこの救援車を呼び、近づいてきたら「アームオープンボタン」を押してコースに戻してもらうという操作を要する。実際にどのような動作を行ったのかは知る由もないが、別のプレイヤーが同じようなタイミングでコースアウトした場合の動作を考えると、ゲームシステム的に問題が大きそうに思う。


コースの途中にある踏切。汽車がコース上を通過するときは遮断機が下り、プレイヤーの車がこれにぶつかると、それまでの周回数がリセットされてしまうとのこと。

最後に、ちょっとだけ余談。グランプリ・フォーでは、メダルだけでなく100円硬貨が併用できるとも言っていますが、現在は、メダルと現金が併用できるメダルゲーム機は、業界団体の自主規制によって禁じられています。とは言え、子供用のメダルゲーム機であれば、10円硬貨を併用することは許容されています。また、子供用ではないのに一見メダルと現金が併用できているかのように見えるメダルゲーム機も増えていますが、それらは、「メダル貸出機を備えたメダルゲーム機」という理屈でこの規制をすり抜けています。

(おわり)

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9 コメント

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Unknown (nazox2016)
2020-09-17 20:58:04
まとめレスで失礼いたします。

>onitamaさん
onitamaさんもご覧になっていましたか。羨ましいです。
スロットレーシングは子供には結構難しく、ましてや100円で1分くらいしか遊べないようではわけが分からないうちに終わってしまうのも無理はないと思います。羽田空港国際線ターミナルの5Fモールにある博品館TOYパークでは、今もスロットレーシングが遊べますので、今度リベンジしてみてはいかがでしょう。

teranokunさん、質問にご回答くださりありがとうございます。「6枚賭けて8週なら6+2=8枚払い戻し 16枚賭けて13週なら16+80=89枚(これはひょっとして96枚では?)」とのご記憶が正しければ、なんとなく稼げそうな機械に見えてしまいますね。
そして、コースアウトは完全に外れるわけではないことが判明したのは嬉しいです。コースから外れるとアクセルが効かなくなるというところに技術を感じます。

調べたところ、78年の秋にグランプリ・フォーを定価425万円で発売するとのニュースリリースがありましたが、一体何台が作られたのでしょうか。
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グランプリ・フォー (teranokun)
2020-09-15 22:32:20
nazox2016さん、初めまして。多分あっていると思いますが..6枚賭けて8週なら6+2=8枚払い戻し 16枚賭けて13週なら16+80=89枚と思います。時間内に8週すれば払い戻しがありました。自分のベットした箇所の車はレールから完全に外れたりはしなくて、コース上で止まり足元のアクセルがノーアクティブになり救援ランプが点いた様に思います。救援車は止まることなくコースを走っていまして、自分の止まった所の直ぐ後ろを走っているとアームオープンボタンで10センチほど引きずられてアクセルが復活しました。カーブのところが難しく直線でフルスロットするとよく止まりました。私の記憶では現金を入れて遊んでる人は、いませんでした。あまり人気がなかったかな? そこでは SEGA FARO Ⅱ BLACK JACK で遊んでおりました。
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Unknown (onitama)
2020-09-15 22:00:33
実は私も子供の頃にグランプリ・フォー見たことがあります。
長らく見間違いかもと思っていましたが、他に見たという方がいて少し安心しました…。
自分が見たのは、ニュー八王子シネマという映画館のゲームコーナーで、設置場所から考えるとメダル機ではなかったように思います。
ただただ大きさに圧倒されて、1回遊んだと思うのですが、何をやっているのかサッパリわからないまま終わった気がします。
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Unknown (nazox2016)
2020-09-15 21:19:18
teranokunさん、はじめまして。ワタシは「グランプリ・フォー」の現物を見たことが無いので、体験者の貴重な証言は大変ありがたいです。この機会にお聞きしたいのですが、メダルを16枚ベットしてゲームを始めた場合、8周した時点から払い出しが発生するのでしょうか。資料の記述ではひょっとすると13周しないと配当が付かないようにも解釈できそうなのですが… また、レールから外れた車は、コースから完全に外れたりはしないのですか? ご記憶にありましたらご教示いただければ幸甚です。

量産に至らなかった試作品がロケテストなどで設置された後そのまま稼働を続けるということはままあるようです。そんなゲーム機が後に思いがけないところで発見されてマニアの間で騒ぎになったなどと言う都市伝説っぽい話も聞きますが、さすがにグランプリフォーのような大型機が後々まで残るなんてことは残念ながらないでしょうね。これからも昔のAMゲームについて何かエピソードがございましたら、ぜひお聞かせください。
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これか! (teranokun)
2020-09-14 22:10:41
すみません、あまりにも懐かしくて...このグランプリ・フォー 実際に設置されていましたよ。今は吉本のNGKシアターになっていますが、元はSEGAのゲームセンターでした。高校生のときによく遊びに行きまして、これが置いてありました。結構得意でして最高払い戻しは何回も経験あります。コツは救援車にあります..絶えずコースを走っていまして、この救援車の近くでコースを外れることです。直ぐにコースに復帰できるかどうかで勝負決まりますね。遠いとひたすら待ってゲームオーバーです。救援車のアームがパカット開くのが面白かった。今でも目に浮かびます。
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Unknown (nazox2016)
2018-05-13 16:17:38
kt2さん、お返事が遅くなってしまってすみません。情報をありがとうございます。
ワタシが遊んだ覚えのあるジャックポットフリッパーは、ウィリアムズの「SUPER STAR」を元ネタとしていたものだったように記憶しているのですが、それと思しきものは、kt2さんが挙げてくださったリストの中にはありませんね。チラシ類をご提供いただけるとは非常にありがたいです。感謝感激です。ご厚意に甘えて、以下のアドレスまでご送付いただければありがたく存じます。
cxx04566@nifty.com
(@の部分を半角文字に変換していただけますようお願いいたします)
お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
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Unknown (kt2)
2018-05-08 21:51:40
セガのジャックポットフリッパーですが、下記8機種が出ていたようです。

STRETCH DRIVE
NOTTINGGHAM
APOLLO 6
DO DO BUG
SPANISH BEAUTY
BEST HAND
WHITE FESTIVAL
SURF CLUB

チラシはありませんでしたが価格表には載っていたと思います。
基本的にオリジナル機種があり、その転用のようです。
最大払い出し枚数は256枚で、条件に応じてランプが付く確立が変化するようなペイアウト設計に見えます。

あと別の記事で書かれていたユニバーサルの最初のビデオゲームですが、おそらくソナーアタックだと思います。チラシはS51-9となっていました。
自分でスキャンした提供できるチラシ類もありますので、必要でしたらメールアドレスなど教えて頂ければお送りいたします。
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Unknown (nazox2016)
2018-04-22 10:51:24
kt2さん、コメントいただきありがとうございます。
ジャックポットフリッパーは遊んだ記憶があります。そしてつい最近、何かを調べるつもりでセガのフライヤーをひっくり返していた時に、その名をどこかで見たのですが、それがどのファイルにあったのか、いま改めて探してみても見つかりません。ワタシが持つ情報も少ないので、kt2さんがご存知の情報をできる範囲でご教示いただければありがたく存じます。
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Unknown (kt2)
2018-04-20 21:28:56
記事にして頂きありがとうございます。
これはメダルゲーム機としても相当謎に包まれていたので、色々とわかりすっきりしました。
セガのメダルゲーム機と言えばピンボールからのコンバージョンであるジャックポットフリッパーも情報が極端に少なく調べております。
出た機種や内容は大体わかったのですが、当時の位置付けなどに非常に興味があります。
もし遊ばれた経験がございましたら記事にして頂けると嬉しいです。
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