本日29日の未明、拙ブログではおなじみのカナダのCaitlynから、「今、ピンボールトーナメントに参加している。その風景を見せたくて」とのメッセージとともに2枚の画像が届きました。どうやら個人のピンボールコレクターが自宅の屋根裏部屋にマシンルームを作って、仲間を招いてプライベートのピンボール大会を行っているようです。画像には全部で10台のピンボール機が写っており、このような環境が持てることに大変羨望を感じるのですが、これらのコレクションのうち、1台だけ見たことも聞いたこともないマシンがありました。
Caitlynから送られてきた画像の中にあった、ワタシが見たことも聞いたこともない1台。まだCaitlynから画像の掲載許可を得ていないため、部分のみ切り出している。
スペインとかフランスとかベルギーなど欧州産の機械なら知らない機種があってもさして驚きませんが、このフロントドアはBallyが1972年以来使い続けているものです。ワタシは、米国の三大ピンボールメーカー(Bally、Gottlieb、Williams)の1960年台半ば以降の機械は殆ど把握しているつもりだったので、大変に当惑しました。そもそも、バックグラス部分を拡大してもタイトルの読み方すらわかりません。
バックグラス部分の拡大図。画質があまり良くない上に隠れている部分があり、詳細がよくわからない。隣は「Bobby Orr Power Play (Bally, 1978)」。FATHOMと同じフロントドアを持っている。
思い当たる可能性で検索を繰り返して、タイトルには「FATHOM」と書いてあることはわかりました。オンライン辞書で調べると、名詞的用法として「主に海で用いる長さの単位(6フィート)」、動詞として「(海などの)深さを測る」と言う意味で、その比喩的な用法として「推し測る」、あるいは「探る」などの意味があるようです。改めてバックグラスを見ると、ヘビか竜のような体の長い生物と、深海魚のような魚が描かれているように思えます。
メーカーとタイトルが判明すれば、IPDBで調べることができます。さっそく調べると、Ballyが1981年にリリースしたもので、3500台しか生産されていないことがわかりました。IPDBにはバックグラスの詳細がわかる画像やプレイフィールドの画像などもありますので、ぜひ上記ハイパーリンクから参照してみていただければと思います。
IPDBにはFATHOMのフライヤーも掲載されていました。その内容は、マンガでこの機械のストーリーを語る、ちょっと変わった形式のものでした。
FATHOMのフライヤーのおもて面(上)と裏面の冒頭(下)。このゲームのストーリーが、裏面の冒頭まで続くマンガで描かれている。画像はIPDBより拝借。
せっかくなのでマンガも読んでみようと、四苦八苦しながら超訳してみました。
********* 以下、フライヤーのマンガの超訳 ***********
FATHOMの謎 バミューダの沖合のどこかで
作・Greg Freres 画・Kevin O'connor
男:奴はなんだってこんなところに一人で潜ったりしたんだろう。奴は俺たちを待ってるだろうから行ってくるよ。
女:救助隊を待った方がいいと思うの。まだ酸素も残ってるだろうし。
男:心配ないよ。たぶん海底洞窟で迷っているんだろう。5分で戻るよ。救助隊が到着するのはその後さ。
女:胸騒ぎがする。ゆうべ土地の老人が海の妖精や人魚の話をしなければ良かったのに。
女:あんなのただの作り話よね。訪れるダイバーを楽しませるための・・・ え? あれは? あれは何?
女:何なのこの泡! 彼に何かあったんだわ! 救助隊はまだ? 助けて! 誰か助けて!
(次ページ)
女:たすけてええええ!!
救助隊は間に合うのか? 老人の話はただの作り話? FATHOMを遊んで謎を解明せよ!
********* フライヤーのマンガの超訳ここまで ***********
マンガはなんともスリルとサスペンスに溢れるところで終わり、先を知りたければFATHOMを遊べ、と言うストーリーにしています。まあ、これもアイディアだとは思います。
さて、ここまで調べはついたものの、やはりワタシにはこの機械に思い当たる記憶はありません。遊戯機械総合年鑑の81年版、82年版、83年版も調べてみましたが、いずれにも記載はありませんでした。生産台数は3500台と比較的少なく、ひょっとすると日本には輸入されていないのかもしれません。もし、この実機を見たことがあるという方がいらっしゃいましたら、いつごろ、どこでご覧になったのか、コメント欄でお知らせいただけると嬉しいです。
最後に余計な蛇足。フライヤーのマンガに描かれる女性キャラは、黄色いビキニと髪の色が一致しているから同一人物と理解するものの、コマごとにずいぶん顔が違います。アメコミはキャラの顔の描き分けがずいぶんいい加減だとはかねがね感じていましたが、この辺の感覚が日本とは違うのでしょうね、たぶん。
フライヤーのマンガに描かれる女性キャラ。ストーリー上ではこれらは全部同一人物とされている。
nazoxさんが珍しいと仰るマシンだとは思いもしませんでした。
Elektra
Embryon
Vector
とかも入っていました。
別の方でいただいたお返事では「某ゲームメーカー系の有名店舗」とのことですが、Williamsを扱っていたところとなるとセガかタイトーだと思いますが、どちらかな?
例え遊んでいなくても、一度見れば記憶には残っているつもりなのですが、このFATHOMはついぞ見かけた覚えがありません。Elektra、Embryon、Vectorはどこでも見かけました。
FATHOMは、歌舞伎町にあった「プレイシティキャロット一番街」に、おそらく1984~85年ごろに設置されていたはずです。
自分の当時の記憶には残っていないのですが、友人が当時PC一番街に勤めていて「FATHOMがあった」と言っていたので、間違いないと思います。
今でも連絡は取れるので、もう少し詳細な情報を聞いてみましょうかね?
また、すでにご存じかも知れませんが、同台はThe Pinball Arcade(以降PA)のシーズン7に含まれていて、PCやPS4上でかなりの再現度で遊べました。
http://www.pinballarcade.com/
しかし、Bally社からのライセンスが2018年6月末で終了してしまい、2018年7月以降はFATHOMも新規に購入・DLすることができなくなっています。
私などは当時すでにPS4版PAを購入・DLしていたので、今でも遊ぶことが可能です。
てか、今でも面白くて、たまに遊んでいます。
マルチボールを駆使して青/緑2種類のボーナスを貯めまくるのが楽しく気に入っている台です。ExtraBallを取るのが難しい。
ちなみにPA版FATHOMには当時のFlyerデータなども格納されています。合成音声で「ファザム」としゃべってもいます。
プレイシティキャロット一番街店ですか。新宿に行った折にはほぼ必ず覗いて、i.RobotやJoustを遊んでいた記憶はあるのですが、FATHOMがあったことには気づきませんでした。全く不覚の極みです。
今後もいろいろ教えてください。どうもありがとうございました。
ちなみにPS4版PAはシーズン1なら北米、シーズン2は欧州版でパッケージ版が存在したので、頑張って中古等で入手すれば今でもPS4上でBally/WMS台が遊べます。
しかしPS4シーズン3以降や他機種版ではDLのみの販売のはずなので、新規導入は無理でしょうね。
また、今回私もググって初めて知ったのですが、2021春頃のニュ-スで「Haggis Pinball」なるオーストラリアの新興ピンボールメーカから「Fathom Revisited 」という名称でリメイクされた実機が存在するようですね。
https://www.pinballnews.com/site/2021/04/26/fathom-revisited-announced/
現時点でも新品が買えるようです。
https://haggispinball.com/index.php?option=com_ecwid&view=ecwid#!/Fathom-Classic-Edition/p/389776044/category=59083038
見た感じ、照明や7セグはLED/カラー化して賑やかにリメイクされていますが、フィールド構成はBally版をかなり忠実に再現してそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=EUAMtX7Ar1E
こちらのリメイク台も是非遊んでみたいところですが、おそらく日本には存在しないでしょうねぇ。
ちなみに自分も当時ピンボールを結構遊んでいたはずで、PC一番街にも出入りしていたのですが、Fathom についてはサッパリ覚えていません。
ワタシはかつては熱狂的なナムコファンで、キャロットは贔屓にしていたはずなのですが、一番街店の記憶がひどく曖昧になってしまっています。このブログも、薄れゆく記憶をとどめておこうという目的もございますので、これからも昔のお話を色々教えてください。
私もこのピンボールの記憶はなかったのですが、IPDBでフィールドの写真を見たら左右のアウトレーン/リターンレーンが変な形になっており、見た様な気がしてきました。残念ながらどこで見たのかは思い出せません。IPDBによるとこの形は"crossover return lanes"と呼ぶそうです。
なお変なアウトレーン/リターンレーンの機種として"Top Card"(Gottlieb,1974)や"Quarterback"(Bally,1976)を覚えていますが、これらは結構プレイしました。
それでは。
「crossover return lanes」は、Ballyが結構多用していたような気がするのですが、確かな記憶に残っているゲームは「Paragon」です。
アウトレーンからインレーンに生還する構造として、Gottliebが「Jacks Open」や「Atlantis」などで採用していた「open elbow inlane」も類似のコンセプトと思いますが、こちらはトラップでとらえたボールがインレーンを遡ってアウトになってしまうこともあり、諸刃の剣でした。片やcrossover return lanesでは、やはりインレーンを遡ったボールがゲートに弾き返されて勢いよく戻ってきて、そのスピードに対応できずアウトにしてしまうということがありました。