謎のフライヤー。印画紙のようにも思えるが、カラー写真にありがちな退色はあまり感じられない。裏面は白紙。
一見したところ、バーリーの「スーパーコンチネンタル」なのですが、シンボルがフルーツではなく、そして何より表記が漢字です。
機械の顔部分のアップ。表記が漢字ということは中華圏向けの機種と言うことなのだろうが・・・
ちなみに、こちらがオリジナルとなるバーリーのスーパーコンチネンタル
オリジナルのスーパーコンチネンタルが発売されたのは1970年ですので、このフライヤーが作成されたのも1970年代と思われますが、この時期に中国人向けのスロットマシン市場があったという話は、ワタシは他で聞いたことがありません。
中華圏におけるスロットマシンは、2002年にマカオのカジノ市場が外国資本に開放されたことを機に、欧米のスロットマシンメーカーがこぞって中国文化をテーマとする機種を積極的に開発するようになったここ数年で、ようやく中国人客にも浸透してきたように見えますが、それ以前は全くの異文化で、遊び方さえろくにわからない人までいたくらいのゲームでした。謎のフライヤーは、そんな市場に向けて果敢にアピールを試みた証拠なのでしょうか。
リールに描かれる絵柄は、標準的なフルーツシンボルを廃し、独特のキャラクターに置き換えらえれていますが、これが何をテーマとしたものかが良くわかりません。かろうじて、京劇の面と思しきシンボルが、オリジナルのBARシンボルに当てられているという見当が付くくらいです。
また、ワタシは中国語に暗く、しかもここに記されている漢字がどうも北京語ではなさそうなこともあって、正確なところはわかりませんが、この中華版スーパーコンチネンタル機の漢字表記にはいくつか気になるところがあります。
一つは、横書きの部分は、どうも右から左に読むようになっていると思われる点です。このような表記をする中国語というものが果たしてあるものなのでしょうか。何となくあったような気もしないこともないですが、わかりません。
また、配当表の右下部にある「此機 僅供娯楽 為限」という記述も気になります。これはおそらく、「本機は娯楽専用」の意味であろうと思います。アメリカの業界においても、特にゲームの結果によって払い出しがあるゲーム機では、公序良俗に反する賭博機であるという指弾を避けるための呪文として、「For Amusement Only(賭博に非ず)」と言う一文を筐体に明記するということが行われており、これは、それをそのまま中国語としたものではないかと思われます。しかし、マカオのカジノに置くつもりであれば賭博が咎められることもないと思うのですが、この中華版スーパーコンチネンタルは、いったいどこに設置するつもりだったのでしょうか。
もう一つ、4つのリールの右の黄色い部分に、「如以記■方式請按記■▲」(■=貝へんに長 ▲=金へんに丑)」とあります。オリジナル機のこの部分には、「TO PLAY CREDIT PRESS CREDIT BUTTON(クレジットで遊ぶにはクレジットボタンを押す事)」という記述があり、つまりこの機械は、コインではなくクレジットで払い出す設定になっているように見受けられます。なお、オリジナル機は、コインモードとクレジットモードをキースイッチ一つで簡単に切り替えることができました。
これに気づいて改めてキャビネットを見直すと、キャビネットにはコインボウル(ホッパーが払い出すコインを受ける大皿)が存在せず、代わりに、おそらく投入されたコインが不良であった時の返却用の小さな受け皿が付いているだけです。
コインボウルが無く、小さな受け皿が付いているのみ。
更によくよく見ると、このキャビネットには、「One Armed Bandit(片腕の追剥)」とも呼ばれるスロットマシンの象徴であるはずのハンドルすらありません。確かに、コインを投入するだけで勝手にリールが廻り始める機種も僅かとは言え存在するので、全くあり得ないことではないにしても、腑に落ちるものではありません。また、コンチネンタルは、1ゲームに最大6枚までコインが投入できるので、「コインを入れれば勝手に回る」という仕様は考えにくく、もしかすると、キャビネットの前面、リール窓の下に付いている二つのボタンのどちらかが、スピンボタンになっているのかと想像しています。
フライヤーは、大量に頒布するのであればしっかりと印刷するものですが、それほどの量でない場合は、説明文のみ印刷して、画像は印画紙に焼いたものを添付するということが良くおこなわれます。ひょっとして、さして大きいとは言えないアジア向けということで、これもそのようなモノとして使用されたものだったのかもしれません。