世界最大のスロットマシンメーカーであるIGT社は、2015年にイタリアの宝くじ会社GTECH社に買収され、GTECH社は後に「International Game Technology PLC」と社名変更しました。買収した方がされた方の名前を名乗るのは良くあることで、昨年はアルゼ(のスロットマシン部門)を買収したPlay Synergy社が買収したアルゼ(のスロットマシン部門)の名を引き継いで「Aruze Gaming Global」に社名変更した例があります(関連記事:新ラスベガス半生中継2023年G2Eショウ(5) DAY 3・G2Eショウ(後半))。このような社名の移り変わりは企業の歴史が追いにくくなって、ワタシのような野次馬にはたいへん迷惑なことです。
GTECH社のトレードマーク(左)と、GTECH傘下のIGTのトレードマーク(右)。
さて、その「International Game Technology PLC」は、これまで宝くじ運営、スロットマシン製造、それにオンラインゲーミング運営を行ってきましたが、今年の2月29日、そのスロットマシンとオンラインゲーミング部門を切り離し、米国ネバダ州のスロットマシンメーカーであるEVERI社と合併させて、新たな社名を「IGT」とすると発表しました。
EVERIのトレードマーク。
え? ちょっと待って、てことは宝くじ運営会社の「International Game Technology PLC」社とスロットマシンメーカーの「IGT」社が並立するわけ? この辺、まだよく理解できていません。ただ、この合併は、米国の「アポロ・グローバル・マネジメント」という投資会社によるとのことで、新IGTは「International Game Technology PLC」の傘下から「アポロ・グローバル・マネジメント」の傘下となるということのようです。
アポロ・グローバル・マネジメントのトレードマーク。
これにより、業界地図がどのように変化するのでしょうか。少し古い、2019年のデータですが、スロットマシンの市場占有率は、1位がIGTで33.2%で群を抜き、2位が24.7%のサイエンティフィック・ゲーミング(現ライト・アンド・ワンダー)、3位が21%のアリストクラートでした。以下は大きく水があき、EVERIは4位コナミの9.0%に次いで3.2%の5位でした。
つまり今回は業界トップと5位の合併ということですが、その思惑が謎です。ニュースリリースでは、シナジー効果がどうとか株主価値創造を推進するとか、よくわからないことばかり述べられています。2015年にサイエンティフィック・ゲームズがBally(シャッフルマスター含む)とWMSを買収した時(関連記事:新ラスベガス半生中継2023年G2Eショウ(4) DAY 3・G2Eショウ(その1))ほどの変化でもないようにも思えます。
ただ、EVERIはもともとキャッシュディスペンサーのメーカーで、ラスベガスではEVERI製の多機能両替機を備えているカジノも多く、現金の取り扱いやトランザクションのインフラが既に広く普及しているので、「今後ギャンブルのキャッシュレス化が進む際にはそれが優位に作用することでもあるのかなあ、知らんけど」などと想像しています。
今年も来たる10月5日(土)からG2Eショウの見物にラスベガスに行って参りますので、この合併による変化も大きな興味の一つになっています。EVERIのブースはおそらく無くなっていることと思いますが、昨年出展されていた「Project Moon」や「Big Bubble」のようなアバンギャルドなスロットマシン(関連記事:新ラスベガス半生中継2023年G2Eショウ(5) DAY 3・G2Eショウ(後半))が果たしてどうなってしまうのかがちょっと心配です。メインストリームとはなり得ずとも、こういうヘンなことをしてくれるところが無くなってしまうのは寂しいことです。
昨年のG2Eに出展された「Project Moon」(上)と「Big Bubble」(下)。どちらもまだ製品化されていない試作段階だった。