オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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SEGA MAD MONEYがやって来た!(6):MAD MONEYの解剖その5 ペイアウト率の検証

2022年12月31日 18時50分08秒 | スロットマシン/メダルゲーム

「SEGA MAD MONEYがやって来た!」シリーズも今回が最終回です。これまではその知識などろくにないワタシが当てずっぽうや知ったかぶりを交えて大汗をかきながらメカ(ハードウェア)を見てまいりましたが、最後はペイアウト率(ソフトウェア)について検証していこうと思います。

MAD MONEYには3本のリールがあり、それぞれが20個のストップ(stop=停止位置)を持っているので、この機械で発生しうる事象は20の3乗=8000通りになります。

リールには、リールの各ストップに対応した20個のシンボルが描かれている帯(リールストリップ=reel strip)が巻き付けられています。シンボルはレモン、チェリー、オレンジ、プラム、ベル、スイカ、BAR、MAD(アルフレッド. E. ニューマン)の8種類があり、その個数や配置はリールごとに異なります。


左列から順に第1リール、第2リール、第3リールのストリップのシンボルの配置。gooブログの推奨サイズでなるべく大きく表示するため、前半10段と後半10段の二分割としている。

ペイアウト率を検証するには、それぞれのリールに何のシンボルが何個配置されているかを把握しておく必要があるので、数えて整理しました。

各リールに何のシンボルが何個配置されているかを調べた結果。

各リールには「」シンボルが1個ずつ配されていますが、第1リールはレモン、第2リールは4個のオレンジのうちのひとつ、第3リールはBARに重ねられているので、リールのストップ数20は変わりません。

なお、シンボルがペイラインに並ぶと、スイカやBARと同じジャックポットの扱いとなります。ジャックポットでは、機械が自動的に払い出すコイン20枚の他に、ハンドペイで150枚のコインが支払われるので、合計で170枚のコインが払い出されることになります。

さて、これで当たり役のそれぞれが発生する確率とペイアウト率を導き出すことができるようになりました。その計算結果を整理した図がこちらです。

当たり役が発生する回数とそれによる払出し及びペイアウト率をまとめた図。

上図の「払出し」は、そのゲーム結果で払い出されるコイン数です。「組合せ数」は、8000通りの事象のうち、そのゲーム結果が何通りあるかを数えたものです。「総払出し数」は、そのゲーム結果の「払出し」と「組合せ数」を掛けたもので、最後の「Contribution」は、そのゲーム結果による払い出し数が払い出し全体に占める割合です。

以上の結果から、このMAD MONEYのペイアウト率は82.1%、ヒット率は17.5%であることが判明しました。ペイアウト率は現代の感覚からするとずいぶんと低い印象を受けますが、この当時の水準から言えば、標準的であったのだろうと思います。また、5.7ゲームに1回の割合で当たるヒット率は、当たれば必ずコインが増えるゲーム性を考えればわりと満足のいく数字ではないかと思います。古いタイプのスロットマシンのペイアウト率は長年の関心だったので、ここまで知れたことは大変に目出度く、ここで大団円としたいところ

なのですが、

ワタシのMAD MONEYは、チェリー2個では1コイン、オレンジ以上の当たりでは2コインを、規定よりも多く払い出すのです(実はスイカ、BAR、では確認できていないけれども、状況からおそらくそうなるものと思われる)。

ミルズのサービスマニュアルやオリンピアのサービスマニュアルを見ると、予期し得るトラブルとして「規定数以上のコインを払い出す」という項目があって、そうなる原因として、サイズが適正でないコインが混入しているか、またはペイアウトスライドの不具合が挙げられています。

サイズについては、確かにワタシの機械で使用している10円硬貨は、アメリカの25セント硬貨よりも0.25mm薄い(直径は0.76mm小さい)ですが、これはどうしようもありません。そしてペイアウトスライドの問題だとすると交換部品が必要となり、これもお手上げです。

現状を変えることができないのであれば、現状でのペイアウト率を別途算出するしかありません。その結果が次の図になります。

現状でのペイアウト率計算。チェリー2個の払出しを規定+1、オレンジ以上での払出しを規定+2で計算している。

オリジナルでは82.1%だったペイアウト率は、現状だと91.5%に跳ね上がりました。これは昔の水準からすればけっこうな「優良機」ではあったかもしれません。とは言え、現在のラスベガスにおけるスロットマシンのペイアウト率とほぼ同じ水準(地域やデノミにもよるが、概ね88%前後から93%前後くらいであることが多い)であり、営業に全く使えないというほどでもなさそうです。

さて、これにて「MAD MONEYがやって来た!」シリーズは終了です。これまでお付き合いくださったみなさま、ありがとうございました。今後何か新たな発見がありましたら改めてこちらでご紹介することもあるかもしれませんが、その時はまたご笑覧いただければ幸いです。

いよいよ今年も終わりです。皆様におかれましては、良いお年をお迎えされますように。来年もよろしくお願いいたします。


SEGA MAD MONEYがやって来た!(5):MAD MONEYの解剖その4

2022年12月25日 20時08分22秒 | スロットマシン/メダルゲーム

これまでリールユニットの背面及び両側面と見てまいりましたが、今回はいよいよ正面から見てみます。

リールユニットを正面から見たところ。

上図で青矢印で示しているのは、リールストップレバー(前回参照)と、これを保持する「リールストップレバーシャフト(Reel Stop Lever Shaft)」です。しかし、クロックファンがこれらにどのように作用しているのかはいまだに謎です。

赤矢印で示している黄銅色の筒は「コイン・チューブ(Coin Tube)」で、この中に今後払い出されるコインが積み重なっています。投入されたコインはこのコイン・チューブに入りますが、コインチューブが一杯で収納しきれず溢れたコインは、コイン・チューブの前を袈裟に横切っている「コイン・オーバーフロー・チューブ(Coin Overflow Tube)」を通じて「キャッシュ・ボックス(Cash Box)」に落ちて行きます。

コインチューブの下端は、6個の「スライド(Slide)」という部品を積み上げて構成される「ペイアウト・スライド(Pay Out Slide)」に繋がっています(右下の赤色に着色している部分)。ここにはコイン・チューブから続く20枚のコインが収納されており、6個の各スライドは下から順に2枚、3枚、5枚、4枚、4枚、2枚のコインを収納する厚みがあります。機械が自動的に払い出すコイン数は、チェリー1個の2枚から、5枚、10枚、14枚、18枚、20枚の6種類があるので、何番目以下のスライドを引くかを制御することによって、目的のコイン数を払い出せるようになっています。

ペイアウト・スライド部分の拡大図。上は平常時で、全てのスライドが定位置に収まっている状態。矢印と数字は、それぞれのスライドが払い出すコインの枚数を示している。下はチェリーが2個出現して5枚のコインを払い出したときのペイアウト・スライドの状態。最下段のコイン2枚と、その一つ上のコイン3枚を収納するスライドが引かれており、合計5枚のコインが払い出されている。もしオレンジ(コイン10枚)が揃った場合は、更に一つ上の5枚を収納するスライドも引かれて、2+3+5=10枚のコインが払い出される。

ペイアウトスライドでスライスされたコインは、リールユニットの基部である「ベース(Base)」の穴を通って「マネー・ボウル(Money Bowl)」に落ち、プレイヤーの手に渡ります。

リールユニットのベースの、コインが払い出される穴を底面から見たところ。次に払い出されるコインの一部が見えている。この状態からペイアウトスライドが右(この図で)に引かれると、コインは穴の位置まで運ばれて落ちてくる。

さて、これまでMAD MONEYの構造をざっと見てきたわけですが、コイン周りの機構は見なかったことにして無視してきました。と言うのは、昔のスロットマシンは、現代では電気的に行っているコイン周り部分をすべてメカ的に行っているので、現代の機械には無い概念の理解が必要です。しかしそれが、ワタシにはまるっきりちんぷんかんぷんだったのです。

とは言うものの、まるっきり触れずにいるのも気持ちが悪いので、一応こんなものもあるというメモとして残しておこうと思います。

コイン周りのメカ部分を水平方向から見たところ(上)と、やや上アングルから見たところ(下)。

両図の①は「チェック・ディテクター・レバー(Check Detector Lever)」と言い、リールユニットの①’「チェック・ディテクター・オペレーターレバー(Coin Detector  Operator Lever)」に作用します。また、①’’「チェック・ディテクター・ピン(Check Detector Pin)」が①と連動して動作します。

両図の②は「コイン・ディテクター・レバー(Coin Detector Lever)」と言い、リールユニットの②’「コイン・ディテクター・オペレーター・レバー(Check Detector Operator Lever)」に作用します。

と、このくらいまでは見ればわかりますが、ワタシがこれから先を理解するには特別な勉強が必要です。

謎の部分はまだ多く残っています。例えば今回も言及していますが、クロック・ファンがリールストップレバーにどう作用しているかは謎のままですし、そもそもリールがどうやって回転しているのかさえ突き止められておりません。そればかりか、前回で「ペイアウトディスクにはシンボルごとに割り当てられた同心円状に穴が開いている」と述べていた理解は、その後の調査でどうも正しくなく、ディスクの同心円はペイアウト・スライドに対応しているのではないかと言う疑念も出てきました。

今のワタシにはこれらの謎を独力で解くのは極めて困難ですが、いつの日か、少しずつでも理解を深めていきたいと思っています。

(次回・「リールストリップとペイアウト率の解剖」につづく)


SEGA MAD MONEYがやって来た!(4):MAD MONEYの解剖その3

2022年12月18日 22時11分38秒 | スロットマシン/メダルゲーム

今回はリールユニットの側面を見ていきます。便宜上、正面から見た左側を左側面、右側(ハンドルが付いている方)を右側面と呼ぶことにします。まずは左側面から。

リールユニットの左側面。

左側面はメカっぽいものが少ないですが、第1リールの「リールストップレバー(Reel Stop Lever・赤く着色している部品)」と「リールストップスター(Reel stop Star・緑に着色している部品)」が見えます。リールストップレバーはクロックファンの回転でゆっくりと起き上がり、最終的に先端に付いている「リールストップレバーブロック(Reel Stop Lever Block)」がリールストップスターの歯に嵌まってリールの回転が停止します。

リールストップレバーの先端にあるリールストップレバーブロックがリールストップスターに嵌まっている部分の拡大図。①=リールストップレバー ②リールストップレバーブロック ③リールストップスター。

リールストップレバーブロックの取り付けにはいくらか遊びがあり、回転しているリールストップスターに触れても浅い段階では嵌まらずに逃がします。その間、リールはパチスロで言う「スベリ」に似た挙動を見せます。

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次にリールユニットの右側面を見ることにします。こちら側には、コインの投入を感知してレバーを引けなくしているロックを外し、レバーが引かれることでリールを回転させる機構が見えています。それらの部品の名称はサービスマニュアルを調べればわかるのですが、ただ、それらの部品がどこにどのように作用しているのかが全然見当が付かず、単に「こういうものがあるのだなあ」と思う事しかできません。

リールユニットの右側面。

しかし、ゲーム結果を検知して払い出しを行うメカニズムについては、かすかに見当が付かないこともありません。まず上図の赤く着色している円盤(の一部)ですが、なぜかサービスマニュアルには名称が記載されていません。ネット上を検索すると、「リールディスク(Reel Disc)」とか「ペイアウトディスク(Pay Out Disc)、あるいは単に「ディスク(Disc)」などと呼ばれています。拙ブログでは文字数が少なく済む「ディスク」と呼ぶことにします。このディスクには、シンボルごとペイアウトレバーごとに割り当てられていると思しき(緑文字部分は2022.12.17に修正)同心円上の然るべき場所に穴が開いています。

ディスクの模式図。一つの同心円が一つのシンボルに割り当てられているが、どの同心円がどのシンボルに割り当てられているかまでは究明できていない

ディスクは3枚が重なるように並んでおり、外側から順に第1リール、第2リール、第3リールに同期して回転します。全てのリール(とディスク)の回転が停止すると、次に7個の「ペイアウトレバー(Pay Out Lever)」が一斉にディスク向かって倒れていきます。この時、ディスクに穴が開いていると、そこに対応するペイアウトレバーはより深く倒れます。

後方上から見た、7個のペイアウトレバーと3枚のディスク。

さて、この次がよくわからないのですが、ペイアウトレバーの動きが、フレームの下の方に見える水平のレバーにどうにかして作用します。この水平のレバーの名称もサービスマニュアルではよくわからず、ネット上では「ホライゾンタル・ペイアウトレバー(Horizontal Pay Out Lever)」としているサイトを発見したので、拙ブログでもそう呼ぶことにします。

ホライゾンタル・ペイアウトレバー(赤く着色した部分)。

このホライゾンタル・ペイアウトレバーの動きがどうにかなって6段に重なっている「ペイアウト・スライド(Pay Out Slide)」のうち適正な段を引くことで「ペイアウトチューブ(Pay Out Tube)」内のコインが払い出されるのですが、その詳しい仕組みはまだよくわかりません。

ペイアウトスライドもペイアウトチューブも前面からでないと見えませんので、続きは次回といたしますが、最後にオマケ情報を一つ。マーシャル・フェイ(Marshall Fay)氏の著書で、6版まで重版している「Slot Machine America's Favorite Gaming Device」には、マーシャルの祖父、チャールズが19世紀末に開発し現代スロットマシンの原型となった「リバティ・ベル(Liberty Bell)」機の構造略図が各版を通じて掲載されています。それを見ると、このセガ(Mills)の払い出し機構の基本的な構造は、リバティ・ベルからほとんど変わっておらず、改めてチャールズの発明の偉大さに驚かされます。

「Slot Machine America's Favorite Gaming Device」に掲載されている、リバティ・ベル機の機構の概念図。この図は第5版の45ページより。

((次回・「リールユニット前面」につづく)


SEGA MAD MONEYがやって来た!(3):MAD MONEYの解剖その2 リールユニット背面

2022年12月11日 18時00分55秒 | スロットマシン/メダルゲーム

今回から、リールユニットの構造を見ていこうと思います。とは言うものの、ワタシはこのメカニズムをそれほど理解できているわけではありません。むしろ、ほとんど何もわかっていないと言う方が実情に近いです。謎に引っかかるたびにいちいち調べながら書いているため、話の進行がひどくのろくなることが今後も予想されますが、なにとぞご了承ください。では、あくまでも目についた部分に関して調べた結果をメモしておくに留まると言う前提で、まずはバックドアを開けてすぐに見える背面側から始めます。

リールユニットを背面側から見たところ。

スロットマシンの部品には大事でないものなど一つもありません(と思います)が、上図の赤破線で囲った「クロック(clock)」は、スロットマシンの心臓部とも言える最重要な部品です。コインを入れてレバーを引くと、赤矢印で示している「クロック・ファン(clock fan)」が扇風機のように回転し、これと連動する大小の歯車がリールを止める「リールストップレバー(reel stop lever)」を作動させています。従って、クロック・ファンの回転を無理やり止めてしまうと、リールストップレバーは作動せず、リールは止まりません。

1940年代終わりころから1950年代初めにかけての機械のクロックには、レバーを引くタイミングによってリールストップレバーが作動するタイミングをコントロールできる欠陥がありました。これに気づいたある男は攻略法を編み出し、荒稼ぎをしたのですが、スロットマシンメーカーは当初どうやってそれを実現しているのかがわからず困惑しました。

しかし、後に件の男がその攻略法を「リズムシステム」と命名して有料で公開したため、クロックの構造に問題があることが明らかになりました。メーカーはクロックの回転具合が毎回ランダムとなるよう、クロックに「バリエイター(variator)」と言う部品を取り付けたので、スロットマシンの歴史上最もプレイヤーに有利だった時期は終焉を迎えたのでした。(関連記事:リズムボーイズ ―― スロットマシンの必勝法の話)。

この「バリエイター」なるものがどんな部品なのか、実はまだよくわかっていません。ネット上を検索すると、バリエイターの解説が少数ですがみつかります。スロットコレクターたちの掲示板「CoinOpCollectorForum.com」では、アームの先端に付いているフェルト製のパッドがクロックファンの回転軸に間欠的に接触することでファンの回転速度に変化を与えていると説明して、その部分の画像を載せています。

クロックファンのシャフトに接触するフェルト製のパッドの画像。ソースは「CoinOpCollectorForum.com」のスレッド「Antique Mills slot - clock part question ?」より。

しかし、ワタシの手元にある機械のクロックにはこのような部品は見あたりません。このMAD MONEYが製造された時期は1960年代ですから、リズムシステムに対する何らかの対策はされているはずです。

ところで、クロックとは全く関係ないところで、ワタシは意味の分からない部品があることに気づいていました。それは、リールユニットのフレームに蝶ネジで固定されているスクリューネジに取り付けられている1本の針金で、その針金は先端に近いところでリールの軸受けに接触しています。

意味が分からない部品(赤矢印)。赤矢印のすぐ下のところでリールの軸受けに接触している。針金の下の方は一部隠れて見えないが、下端は輪状になって、蝶ネジで留められている長いスクリューネジに引っ掛けられている(青矢印)。

この針金をMillsのサービスマニュアルで調べると、「リールブレーキワイヤー (Reel Brake Wire)」と名付けられていました。確かに、リールブレーキワイヤー自体は結構硬く、それなりに強いバネの力でリールを押さえつけているようには思われます。そしてこの機械には、リールブレーキワイヤーは第2リールにしか付いていません。おそらくは、純粋にクロックだけで回転数が決まるわけではないリールが1本でもあれば、リズムシステムを無効化できるということなのかなあと、とりあえず理解することにしました。

(次回・「リールユニット側面」につづく)


SEGA MAD MONEYがやって来た!(2):MAD MONEYの解剖その1

2022年12月04日 21時19分47秒 | スロットマシン/メダルゲーム

今回譲り受けた「SEGA MAD MONEY」は、セガが1960年前後頃に開発したと推察される「スターシリーズ筐体」に収められていますが、その内部に残されている検査証には、インクが薄い上に染みが多く判読しづらいものの、「FEB. 4 1969」と読めるように思える印字がされています。

筐体内に残されていた検査証の日付部分。「FEB. 4 1969」であろうか。

1969年だとして、しかしスターシリーズの次世代機である「コンチネンタルシリーズ」の開発は遅くとも1966年には行われており、更にその次のシリーズで旧セガ時代の最後のメカスロとなる「ウィンザーシリーズ」は、1967年の時点で英国で新製品として発売されており(関連記事:セガ60周年記念・1960年以前のプレセガ期(4) セガのスロットマシンその2)、旧型機であるスターシリーズ筐体にそれらよりも遅い日付けが記されているのは、あり得ないことではないとしても、多少の違和感を感じざるをえません。

1969年にスターシリーズが製造され続けていた理由を何とか考えるならば、スターシリーズは稼働に電力を要しなかったので、新製品が出た後でもそのような旧型機にはまだ需要があったのかもしれません。もしくは、単に在庫部品があっただけなのかもしれませんし、更にアクロバット的推測をするなら、旧型機を整備して準新品としていたのかもしれません。この問題はこれ以上考えても答えは見つかりそうにないので諦めて先に進みます。まずはメカの中身の概観から見てまいります。

筐体の背面は、上部の青い部分は鋳物で出来た「トップ」、その下の黒い部分は板金で出来た「バックドア」となっています。

筐体の背面。上部の青い部分がトップ、下の黒い部分がバックドア。

まず鍵でバックドアを取り外し、次にトップを固定する左右ふたつの「トップロッキングレバー」を引いてトップを外します。

鋳物製のトップとバックドアを取り外したところ。左右の赤矢印はトップロッキングレバーの動きを示す。

次に、土台の下部にあるレバーを外すと、リールユニットが取り外せるようになります。このレバーは、1956年に発行されたミルズのユーザーズマニュアルにはなぜか記載がなく、名称がわかりません

リールユニットを取り外した後の筐体内。赤矢印はリールユニットを固定するレバー(名称不明)の動きを示す。

筐体の内側の、左右の壁の向かって左側は、ゲームを起動するハンドルが付いている側です。ここにはハンドルの操作によって作動する機構が見えますが、このどの部分がリールユニットのどの部分に作用しているのか、メカには暗いワタシには理解できていません。

リールユニットを取り外した後の筐体側面の、ハンドル側。この機構のどこがどのようにリールユニットに作用しているのだろうか。

反対側の壁にはメカはありませんが、トッパ―と筐体内の照明に使われている蛍光灯の安定器とスターターが4個ずつと、電源と思しき部品1個が並んでいます。しかし、これらはおそらくもう使い物にはならなくなっていることと思います。蛍光灯は取り外されていました。これら電気系統はミルズの時代にはなかったもので、ユーザーズマニュアルには記載がありません。

筐体側面の、ハンドルの反対側。並んでいる電気系統の部品は、トッパー、ペイテーブル、それにウィンドウ内を照らす蛍光灯のためのもので、これらが機能しなくてもスロットマシンとしては稼働する。

土台の下には、右側に「キャッシュボックス(Cash Box)」、左側には何やら意味ありげな部品があるように見えます。これは「ハンドルポンプ(Handle Pump)」と言って、ハンドルを引いた後、手を離したハンドルが勢いよく戻らないように抑制するための部品です。

筐体の中の下部。右はキャッシュボックス、左はハンドルポンプ。

ハンドルポンプの拡大図。暗くて見えづらい。

(次回「リールユニット編」につづく)