オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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【小ネタ】Nip-It(Bally, 1973)のメモ

2023年01月08日 22時25分01秒 | ピンボール・メカ

昨年12月18日、初めて「ナツゲーミュージアムin白鳥会館(高田馬場)」に行ってまいりました。事情があって1時間程度しかいられなかったためピンボールフロアしか見ておりませんので、ロケのご紹介は近日中に再訪した上で改めて行うこととして、今回はピンボールフロアの中でも特に気になった「Nip-It (Bally, 1973)」をメモしておこうと思います。

Nip-It(Bally,1973)。

ワタシは「Nip-It」を、新製品として世に出たばかりの頃から見ていたはずです。バックグラスに描かれている人物のタッチはその後も何機種かで描かれていたことも覚えています。しかし、右フリッパーボタンの隣に付いているもう一つボタンの用途がわからず、実は遊んだ記憶が全くないことに気づいてしまいました。

Nip-Itの筐体右側面についている2つのボタン。左側が通常のフリッパーボタン、右側が謎のボタン。

新しい機種であればとにかく一度は遊んでみるはずのワタシとしてはこれは全く奇妙なことで、内心激しく混乱をきたしました。まずはプレイフィールドをまじまじと見てみたのですが、2つ目のボタンに関係しそうな記述は見当たりません。さらにワタシを混乱させたのは、フリッパーが短い「2インチ」であることでした。ワタシの記憶では、Nip-Itは長い「3インチ」のフリッパーが主流となって以降の1970年代の機械だったはずです。

Nip-Itのプレイフィールド。フリッパーがこの時代には既に非主流となっていた短い「2インチ」が採用されている。

しかしそれは、中段中央の黄色いマッシュルームバンパーに「CLOSE FLIPPERS」と書いてあることで、「ジッパーフリッパー(Zipper Flippers)」フィーチャーが搭載されているためであることがわかりました。ジッパーフリッパーは1966年の「Bazzar」で初めて採用され、60年代のバーリー製マシンにはしばしば採用されたフィーチャーです。2インチの機械は、現在主流の3インチフリッパーが主流となる70年代の初頭まではいくらかは作られ続けてはいました。

とにかく遊んでみなければ話にならぬ思い、「往時であれば30円だったのになあ」などと思いながら100円硬貨を投入しました。機械が動き出し、ボールを打ち出してさっそく謎のボタンを押してみたところ、なんとプレイフィールド上段の右側にあるワニのプラスチックの下から、なんかヘンなものが出てきました。

プレイフィールド上段右のワニのプラスチック部分。

謎のボタンを押すと、ワニの口のあたりから「なんかヘンなもの」が出てくる。

なんかヘンなものをローアングルから見たところ。

何だこれは?

ボールを弾き飛ばすバンパーの類にも見えませんが、試しにボールがこの辺りに来た時にこのヘンなものを出してみたところ、ボールはヘンなものを押し上げてその内側に入って行き、そして謎のボタンを離すとボールはワニの口の中に掻き込まれていきました。ワニのプラスチックで隠されている中で何が起こるのかと思って見ていると、中段右のゲートからボールが出てくるだけでした。

何だこれは?

これで何か特別なアドバンスを得たようにも思えません。もやもやしたものを残して帰宅後にIPDBで調べてみると、このフィーチャーは「バリゲイター(Balligator)」と言って、Nip-Itの目玉フィーチャーのようです。フライヤーでは、バリゲイターによって「1000点とボーナス1000点を得る」とのことで、「今年最もトリッキーな新たなスキルデバイスは、長期間に渡るリピートプレイを保証します」と自画自賛していますが、なんだかセガがよくやる「何か一つヘンなこと」をやっているように思えました。

なお、このフィーチャーの名称である「バリゲイター」は、「ワニがボールを食べる」イメージから、「ボール(Ball)」と「ワニ(Alligator)」をうまく合成したつもりなのかもしれませんが、ひょっとすると自社名の「Bally」もかけているのかと深読みしてしまったりもします。

Nip-Itのフライヤーの表(上)と裏(下)。

なんだか文句ばかりに見えますが、では面白くないかと言うとそういうわけでもなく、次回行けばまた何百円かのお布施をしてしまうことになると思います。


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5 コメント

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Unknown (tom)
2023-01-09 07:22:04
Williams Blacknightより、古くから横ボタンが2個あるマシンが既に存在していた事を始めて知りました。

ボール取り込むギミックは、Pinballでは斬新なアイデアですね。
Unknown (nazox2016)
2023-01-09 14:25:03
tomさん、今年もよろしくお願いいたします。
フリッパー以外のインタラクティブなギミックでボールをコントロールするコンセプトは確かに斬新だと思います。だからこそBallyも前面に押し出してアピールしたのでしょう。
ただ、フリッパーほどの普遍性がなく、継承する機械が現れなていない事実が現実を物語っています。SS化された今なら他にやりようは出てくると思うので、どうにか再利用できないかなあと思ったりもします。
Unknown (EM好きおじさん)
2023-01-10 00:59:51
おお、"Nip It(BALLY, 1973)" 懐かしいですねこれは。よくプレイしました。ユニークなメカで楽しいのですが、これだけの大きさのバーを大きくスイングさせる機構は故障が多かったのではないかと思います。以降は説明の為に最上段のキックアウトホールをKH1、右中段のキックアウトホールをKH2とし、左中段のキックバックレーンをKLと記述します。
ボールがKH1かKLへ入ればキックされたボールがバーへ向かってくるのでタイミング良くボタンを押せば確実に引き込めます。もちろん単にバーの前を移動するボールを狙って引き込む事もできます。ボールが少し遠い位置にある時はバーをキッカーとして使えます(あまり強いキッカーではないが)。バーがボールを引き込むとボールは少し遅れて右ロールオーバーを通って落ちてきますが、その時ボーナス値が上がります。そしてボールアウト時にボーナス得点が入ってボーナス値は初期化されます。
このゲームのねらい所は、フリッパーをクローズさせてボールを保持し、左中段のゲートを狙ってボールをKLから上方へ打ち上げてバーで引き込む事の繰り返しです。さらに、ボーナス値が高い時はマルチボール(以降MB)もねらい所です。KH2からボールがリリースされてMBが始まる時にボーナス得点が入ってボーナス値は保持されるのです。
KH2へボールAを入れる→保持されてボールBがシューターレーンへ出るのでシュート→ボールBがターゲットをヒットする→KH2からボールAがリリースされてMB開始→KH2へボールAを入れる→保持される→ボールBがターゲットをヒットする→KH2からボールAがリリースされて…の繰り返しが望ましいのですが、どちらのボールもKH2に入ってくれずにアウトするとか、ボールAが入ってもボールBがターゲットをヒットせずにアウトする事が多いのでそう簡単ではありません。

IPDBで調べたらこれが70年代最後のzipper-flipper機種ですね。私にとってBALLYの"4 Queens(1970)""Four Million B.C.(1971)""Fireball(1972)""Nip It(1973)"は最高のEM機シリーズです。なお80年代にSS機でzipper-flipperを持つものが1機種だけ作られていますが、そちらは見た記憶がありませんでした。

それではまた。
Unknown (nazox2016)
2023-01-11 21:27:44
EM好きおじさん、よく覚えてらっしゃいますね。
ジッパー・フリッパーと言うと、1971~2年頃の目黒駅ビルの屋上で「Bazzar」をよく遊びましたが、2400点で1フリープレイであったこと以外、ゲームのルールはほとんど覚えておりません。ただ、フリッパーが閉じている時にボールが静止状態となるまで待っていると、その後の展開がろくなことにならないことは強く印象に残っています。

ナツゲーミュージアムへは今週末に再訪する予定ですので、今回教えていただいたことを意識してマルチボールを狙おうと思います。
Unknown (EM好きおじさん)
2023-01-12 15:24:43
"Bazaar(BALLY,1966)は最初のzipper-flipper機ですが、私は68年頃にプレイした記憶があります。家族で行ったボウリング場のゲームコーナーで、フリッパーが閉じるのを見て「うわ、なんだこれ」と驚いたものでした。その後Williamsからもzipper-flipper機が出て、「あれ、Bally専用じゃなかったのか」と思いましたがWilliamsはすぐに止めてしまいました。70年頃には3インチフリッパーがpinballの主流になっておりzipper-flipper機は1機種/年のペースで作られていた訳ですね。
ところで閉じたフリッパーでボールを中央にホールドした後はどちらかのフリッパーボタンをチョンチョンと叩いてボールを移動させてタイミング良くシュートするのが普通ですが、ボールが中央にいる状態から両方のフリッパーボタンを僅かにタイミングをずらして押す事でボールを狙った方向へシュートする人がいました。真似して見たのですがかなり難しかった事を覚えています。

それでは。

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