ワタシは過去記事「リズムボーイズ ― スロットマシンの必勝法の話」で、かつて存在したスロットマシンの必勝法「リズムシステム」について述べました。しかし、その時点では他にその必勝法に言及している資料が見つからず、都市伝説の一種である可能性も疑っていました。
その後ワタシは、スロットマシンメーカーのジェニングス社が「Anti Rhythm(リズム防止)」の宣伝文句を使用している1960年代のスロットマシンのフライヤーを発見し、「リズムシステム」が確かに実在したであろうことを確認することができました(関連記事:セガの歴史を調べていたら意外な話につながった話(2) リズムシステム実在の証拠発見)。しかし、それだけではまだ十分に資料が揃ったとは言えず、さらなる資料を探し続けていました。
先日、かつてアメリカで発行されていた、スロットマシン(骨董品含む)及びギャンブル、もしくはそれらに関連する事柄をテーマとする雑誌「Loose Change」のデジタル版をつらつら眺めていたところ、1996年4月号の表紙に「How To Cheat The Slots (スロットマシンのインチキの方法)」の見出しがあることを発見しました。
「Loose Change」1996年4月号の表紙。下の方に「How To Cheat The Slots」の記述が見える。イラストは1996年6月に開業したラスベガスのカジノホテル「モンテカルロ(現パークMGM)」の完成予想図。
これはひょっとしてと思い本文を読んでみると、期待したとおりそこには「リズムシステム」を「リズムメソッド(The Rhythm Method)」と呼んで紹介していました。
「How To Cheat The Slots」の見開きページ(上)と、左ページの拡大図(下)。赤枠内が「リズムメソッド」の記述部分。
当該部分を訳してみると、殆ど既知の資料(Scane's New Complete Guide To GAMBLING)に書かれている内容と同じでしたが、「リズムメソッド」はこの資料独特の表現であり、またスロットマシンのリールの回転をつかさどる部品「クロック」について、既知の資料には書かれていない動作が述べられていて、既知の資料とはまた別の資料があることが窺われます。
とは言うものの、独特の表現であることは決定的な証拠とはならず、またクロックの動作原理はアンティークスロットマシンを扱う人であれば知っていてもおかしくないことで、既知の資料を基に独自の理解を述べているだけである可能性もあります。
ワタシの「リズムシステム」の証拠を探す旅はまだ続きそうです。
*************
ところで、「Loose Change」は、1977年9月に創刊され、原則として月刊で刊行されましたが、80年代半ば以降はしばしば短い期間休刊することもあり、1998年06月号を最終号として刊行が終了しています。
出版元の「Mead Publishing」社は、「Loose Change」全228冊をデジタル化して1枚のDVDにまとめ、「Loose Change Magazine Digital Edition」として販売しています。ワタシは2010年にシカゴで開催されたコインマシンの骨董市「シカゴランドショウ」(関連記事:歴史の語り部を追った話(2):シカゴランドショウ(Chicagoland Show))でこれを購入しています。「Loose Change Magazine Digital Edition」は現在も購入が可能ですので、興味がある方は版元のウェブサイトを参照してみてください。