今回は「ビンゴサーカス(Bingo Circus、1989)」について述べるつもりでしたが、前回はその元ネタである「グループビンゴ」についてあまりに軽く流しすぎたので、予定を変更して、ピンボールビンゴのもう少し詳しい説明とともにその特徴を述べておきたいと思います。
セガは、国産初のメダルゲーム機である(とワタシが考えている)「ファロ(Faro)」と「シルバーフォールズ(Silver Falls)」を1974年の春ころに発売し(関連記事:初の国産メダルゲーム機の記憶)、同年の秋には多人数競馬ゲーム「ハーネスレース(Harness Race)」を発売しました。今回のテーマである「グループビンゴ」はその翌年、1975年の初夏ころに発売されています。つまりグループビンゴは、セガのマスメダルゲームの第4作目であり、初のマスメダルビンゴとなるわけですが、メダルゲームの開発が始まってまだ間もない、しかもデジタル技術が普及していなかったこの時代に、これだけ複雑なゲームが作れたことには驚きを感じます。
グループビンゴの筐体。
さらにプレイフィールド部分のアップ。見にくいが、円形のプレイフィールドに番号が付された穴20個と、中央にボールリターンホールが開いている。ここに投入されたボールが入った穴の番号でビンゴゲームを行う。
業界誌「アミューズメント産業」の1975年7月号にはグループビンゴの広告が打たれ、同じ号の新製品紹介記事では、グループビンゴについて、「セガでは大型機の需要が増大するものと見ており、グループビンゴはそれに対応した」という趣旨の説明があり、まだマスメダル機が少なかった当時のメダルゲーム場の様子が垣間見えます。
業界誌「アミューズメント産業」1975年7月号に掲載されたセガの広告。「『ファロ』『ハーネスレース』で高収益が実証されたセガ・グループ・ゲーム機の最新作登場!」との文言がある。後に「マスメダル」と呼ばれる多人数用メダルゲーム機を、このころは「グループ・ゲーム」と呼んでいることも興味深い。
グループビンゴが「20穴タイプ」と呼ばれるタイプのピンビンゴをマスメダル機に翻案したものであることは前回述べました。ビンゴ・ピンボール機は1950年代から作られていますが、20穴タイプが初めて現れたのは、1965年に米国バーリー社が発表した「Folies Bergeres(フライヤーはこちら・他のサイトに飛びます)」のようです。それ以前は、ごくわずかな例外を除き、全て25穴タイプでした。
25穴タイプのビンゴカードは、我々にもなじみ深い縦5×横5の正方形で、縦横と対角に結ばれた線上にスポットを並べることを目的とする「インラインタイプ」でしたが、20穴タイプのカードは縦4×横5となり、スポットを線上に並べる代わりに、赤、青、黄、緑の4色に色分けされたエリアにスポットを集めることを目的とする「カラーセクションタイプ」でした。
フライヤーより、サテライト上の各ランプ及びボタンの意味が説明されている部分のアップ。
ビンゴ・ピンボールでは、勝ち易くする「キーフィーチャー」と呼ばれる仕掛けを搭載したものが多くあります。キーフィーチャーにはいくつかの種類がありますが、グループビンゴではこのうち「マジックライン」が採用されました。
「マジックライン」とは、カード上の数字の並びを変更するフィーチャーの一つで、縦列または横列の単位で、数字の並びを上下または左右にずらすことができました。このように数字の並びを変えるフィーチャーは他にもあり、変更の形態によって、「ミスティックライン」、「マジックスクウェア」、「マジックナンバー」と区別されています。グループビンゴで採用された「マジックライン」は、米国バーリー社のビンゴ・ピンボールでは25穴タイプでのみ用いられ、20穴タイプではすべて「ミスティックライン」が用いられていたのですが、そこはセガの独自の工夫と言って良いと思います。
ちょっと横道に逸れますが、25穴タイプでは、数字の並びを変えない「マジックスクリーン」というキーフィーチャー採用するものも多くありました。これは、色分けされたシートをビンゴカード上にオーバーレイすることで、ゲームの途中でインラインタイプからカラーセクションタイプに変更するキーフィーチャーです。後にsigmaが独自に開発した「ICビンゴ」は、ほとんどがマジックスクリーンタイプです。
グループビンゴの「マジックライン」は、縦4×横5のビンゴカードの最上段から下段に向かって順にA、B、C、Dと分けて、それぞれに対応するボタンを押すことにより、カードの数字を左右に一つずつずらすことができました。
ビンゴカード部分のアップ。最上段から下に向かって、横の行にマジックラインを示すA、B、C、Dの表示がある。
ただし、マジックラインフィーチャーは、メダルをベットするごとに機械の内部で行われる抽選で当選しないと有効になりません。これはバーリー社の時代から連綿と続くルールです。抽選の結果、有効となったマジックラインは、ここでランプの点灯という形で示されます。
抽選では、メダルを投入するたびに ⇒⇒A⇒B⇒C⇒D⇒⇒OK のランプが、1~2秒間ほどランダムに点滅して、抽選を行っていることを示す演出を行います。この演出は、「ミステリーインターバル(Mystery Interval)」と呼ばれます。抽選に当たると「⇒」のランプがすごろくのように進んでいき、ランプがAまで進むと初めてマジックラインのA列が動かせるようになります。
グループビンゴのコンパネの上半分のアップ。
⇒⇒A⇒B⇒C⇒D⇒⇒OK のランプが見える。
1回の抽選で進むステップ数は決まっておらず、全く進まないこともあれば、進むとしても1ステップしか進まないこともありますし、数ステップ進むこともあります。運が良ければ一気に最後の「OK」まで進むこともありました。こうしてベット受付時間までに点灯した列のみが、ゲーム中で動かせるラインとなります。プレイヤーは、なるべく多くのラインを有効とするために、そしてあわよくば今回のゲーム条件を次のゲームに引き継げるフィーチャーである「OK」まで進めるために、何枚ものメダルを投入します。ミステリーインターバルの間、ランプを進めようとサテライトの左端をトントンと叩くプレイヤーが多く見られましたが、当然そんなことをしても結果には影響しません。
ランプが「OK」まで進むと、次のゲームはメダルを1枚投入するだけで、今回のゲームのスコアとキーフィーチャーを引き継いでゲームができました。
キーフィーチャーランプの上にあるスコア表では、ゲームに勝った時に得られるメダル数(スコア)がランプで表示されます。同じカラーセクションに3個以上スポットが集まれば勝ちとなるので、スコア表は、下段から3インカラー(同じカラーセクションにスポットが3個点灯する)、4インカラー(同4個点灯)、5インカラー(4インカラー+対応するホワイトセクションが点灯)の順になっています。このスコアも、メダルを投入するたびにミステリーインターバルが始まって抽選を行い、当選するとより高いスコアにランプが移動します。一度上がったスコアは、そのゲームでは下がることはありません。
ゲームが始まると、まず4個の金属製のボールがプレイフィールドに投入されます。ビンゴカードには、ボールが入った穴の番号が点灯します。4個の番号が決まると、15秒くらいゲームが止まるので、プレイヤーはこの間にマジックラインを使って、同じ色に点灯したスポットを集める操作を行います。その後最後の1球が投入され、最後の番号が決定した時点で、ゲームの結果が判定されます。
プレイフィールドは浅いすり鉢状となっており、また番号が付された穴の縁はベベルが取られて(面取りされて)いました。ボールの動き方によっては、このベベルの上にボールが留まってしまうこともたまにあり、そのたびに係員がドームを取り外して対処する必要がありましたが、この抽選機構自体はなかなか楽しく、理解が難しいゲームであるにもかかわらずグループビンゴは多くのロケーションに設置されました。
「メダルゲーム発祥の店」ゲームファンタジアミラノ(関連記事:ゲームファンタジア・ミラノ:メダルゲーム発祥の地)に設置されていたグループビンゴ。
(次回、ビンゴサーカスにつづく)
セガは、国産初のメダルゲーム機である(とワタシが考えている)「ファロ(Faro)」と「シルバーフォールズ(Silver Falls)」を1974年の春ころに発売し(関連記事:初の国産メダルゲーム機の記憶)、同年の秋には多人数競馬ゲーム「ハーネスレース(Harness Race)」を発売しました。今回のテーマである「グループビンゴ」はその翌年、1975年の初夏ころに発売されています。つまりグループビンゴは、セガのマスメダルゲームの第4作目であり、初のマスメダルビンゴとなるわけですが、メダルゲームの開発が始まってまだ間もない、しかもデジタル技術が普及していなかったこの時代に、これだけ複雑なゲームが作れたことには驚きを感じます。
グループビンゴの筐体。
さらにプレイフィールド部分のアップ。見にくいが、円形のプレイフィールドに番号が付された穴20個と、中央にボールリターンホールが開いている。ここに投入されたボールが入った穴の番号でビンゴゲームを行う。
業界誌「アミューズメント産業」の1975年7月号にはグループビンゴの広告が打たれ、同じ号の新製品紹介記事では、グループビンゴについて、「セガでは大型機の需要が増大するものと見ており、グループビンゴはそれに対応した」という趣旨の説明があり、まだマスメダル機が少なかった当時のメダルゲーム場の様子が垣間見えます。
業界誌「アミューズメント産業」1975年7月号に掲載されたセガの広告。「『ファロ』『ハーネスレース』で高収益が実証されたセガ・グループ・ゲーム機の最新作登場!」との文言がある。後に「マスメダル」と呼ばれる多人数用メダルゲーム機を、このころは「グループ・ゲーム」と呼んでいることも興味深い。
グループビンゴが「20穴タイプ」と呼ばれるタイプのピンビンゴをマスメダル機に翻案したものであることは前回述べました。ビンゴ・ピンボール機は1950年代から作られていますが、20穴タイプが初めて現れたのは、1965年に米国バーリー社が発表した「Folies Bergeres(フライヤーはこちら・他のサイトに飛びます)」のようです。それ以前は、ごくわずかな例外を除き、全て25穴タイプでした。
25穴タイプのビンゴカードは、我々にもなじみ深い縦5×横5の正方形で、縦横と対角に結ばれた線上にスポットを並べることを目的とする「インラインタイプ」でしたが、20穴タイプのカードは縦4×横5となり、スポットを線上に並べる代わりに、赤、青、黄、緑の4色に色分けされたエリアにスポットを集めることを目的とする「カラーセクションタイプ」でした。
フライヤーより、サテライト上の各ランプ及びボタンの意味が説明されている部分のアップ。
ビンゴ・ピンボールでは、勝ち易くする「キーフィーチャー」と呼ばれる仕掛けを搭載したものが多くあります。キーフィーチャーにはいくつかの種類がありますが、グループビンゴではこのうち「マジックライン」が採用されました。
「マジックライン」とは、カード上の数字の並びを変更するフィーチャーの一つで、縦列または横列の単位で、数字の並びを上下または左右にずらすことができました。このように数字の並びを変えるフィーチャーは他にもあり、変更の形態によって、「ミスティックライン」、「マジックスクウェア」、「マジックナンバー」と区別されています。グループビンゴで採用された「マジックライン」は、米国バーリー社のビンゴ・ピンボールでは25穴タイプでのみ用いられ、20穴タイプではすべて「ミスティックライン」が用いられていたのですが、そこはセガの独自の工夫と言って良いと思います。
ちょっと横道に逸れますが、25穴タイプでは、数字の並びを変えない「マジックスクリーン」というキーフィーチャー採用するものも多くありました。これは、色分けされたシートをビンゴカード上にオーバーレイすることで、ゲームの途中でインラインタイプからカラーセクションタイプに変更するキーフィーチャーです。後にsigmaが独自に開発した「ICビンゴ」は、ほとんどがマジックスクリーンタイプです。
グループビンゴの「マジックライン」は、縦4×横5のビンゴカードの最上段から下段に向かって順にA、B、C、Dと分けて、それぞれに対応するボタンを押すことにより、カードの数字を左右に一つずつずらすことができました。
ビンゴカード部分のアップ。最上段から下に向かって、横の行にマジックラインを示すA、B、C、Dの表示がある。
ただし、マジックラインフィーチャーは、メダルをベットするごとに機械の内部で行われる抽選で当選しないと有効になりません。これはバーリー社の時代から連綿と続くルールです。抽選の結果、有効となったマジックラインは、ここでランプの点灯という形で示されます。
抽選では、メダルを投入するたびに ⇒⇒A⇒B⇒C⇒D⇒⇒OK のランプが、1~2秒間ほどランダムに点滅して、抽選を行っていることを示す演出を行います。この演出は、「ミステリーインターバル(Mystery Interval)」と呼ばれます。抽選に当たると「⇒」のランプがすごろくのように進んでいき、ランプがAまで進むと初めてマジックラインのA列が動かせるようになります。
グループビンゴのコンパネの上半分のアップ。
⇒⇒A⇒B⇒C⇒D⇒⇒OK のランプが見える。
1回の抽選で進むステップ数は決まっておらず、全く進まないこともあれば、進むとしても1ステップしか進まないこともありますし、数ステップ進むこともあります。運が良ければ一気に最後の「OK」まで進むこともありました。こうしてベット受付時間までに点灯した列のみが、ゲーム中で動かせるラインとなります。プレイヤーは、なるべく多くのラインを有効とするために、そしてあわよくば今回のゲーム条件を次のゲームに引き継げるフィーチャーである「OK」まで進めるために、何枚ものメダルを投入します。ミステリーインターバルの間、ランプを進めようとサテライトの左端をトントンと叩くプレイヤーが多く見られましたが、当然そんなことをしても結果には影響しません。
ランプが「OK」まで進むと、次のゲームはメダルを1枚投入するだけで、今回のゲームのスコアとキーフィーチャーを引き継いでゲームができました。
キーフィーチャーランプの上にあるスコア表では、ゲームに勝った時に得られるメダル数(スコア)がランプで表示されます。同じカラーセクションに3個以上スポットが集まれば勝ちとなるので、スコア表は、下段から3インカラー(同じカラーセクションにスポットが3個点灯する)、4インカラー(同4個点灯)、5インカラー(4インカラー+対応するホワイトセクションが点灯)の順になっています。このスコアも、メダルを投入するたびにミステリーインターバルが始まって抽選を行い、当選するとより高いスコアにランプが移動します。一度上がったスコアは、そのゲームでは下がることはありません。
ゲームが始まると、まず4個の金属製のボールがプレイフィールドに投入されます。ビンゴカードには、ボールが入った穴の番号が点灯します。4個の番号が決まると、15秒くらいゲームが止まるので、プレイヤーはこの間にマジックラインを使って、同じ色に点灯したスポットを集める操作を行います。その後最後の1球が投入され、最後の番号が決定した時点で、ゲームの結果が判定されます。
プレイフィールドは浅いすり鉢状となっており、また番号が付された穴の縁はベベルが取られて(面取りされて)いました。ボールの動き方によっては、このベベルの上にボールが留まってしまうこともたまにあり、そのたびに係員がドームを取り外して対処する必要がありましたが、この抽選機構自体はなかなか楽しく、理解が難しいゲームであるにもかかわらずグループビンゴは多くのロケーションに設置されました。
「メダルゲーム発祥の店」ゲームファンタジアミラノ(関連記事:ゲームファンタジア・ミラノ:メダルゲーム発祥の地)に設置されていたグループビンゴ。
(次回、ビンゴサーカスにつづく)