はじめにお詫び。前回の記事で「今回と次回の2回に分けて」と申し上げましたが、思いのほか長くなってしまい2回では収まらなくなってしまいました。見通しが甘くて申し訳ありません。
前回のあらすじ:ある方より「NEW FARO」の部品の写真をいただいたが、見たことも聞いたこともなかったので調べたところ、「NEW FARO」は、「FARO (1974)」、「FARO II (1977)」に次ぐファロシリーズ第三弾で、1980年に発売されたものであることが判明した。そのころは折からのビデオゲームブームに押され、ゲーセンではメダルゲームの営業面積が著しく縮小した時期であり、「NEW FARO」はほとんど普及せずに消えていったものと思われる。
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「ニューファロ」が発売されてから3年後となる1983年、セガは「ファロ III」を発売しました。
「ファロ III」のフライヤー。片面印刷で裏面はない。
「ファロ III」の盤面は初代と同じ36分割の電光ルーレットに戻っています。並び順は異なるものの、目の構成も初代と同じです。ただし、盤面の内周に新設した小ホイールによる「カラーマッチ」フィーチャーが加わっています。
「カラーマッチ」とは、赤、青、緑のいずれかに塗り分けられている外周の目の当たりとなった色と、小ホイールで停止した色が一致すると配当が2倍になるフィーチャーです。小ホイールは12分割されており、赤、青、緑が1カ所ずつ配されているので、カラーマッチは12ゲームに1回の割合で成立する理屈です(外見上では)。
「ファロ III」の盤面の拡大図。外周の目(数字)は赤、青、緑に塗り分けられており、盤面の内周には12分割された小ホイールがある。
「ファロ III」の目の構成は初代と同じなので、出目の決定に作為がなければペイアウト率は初代よりも約2.3%高い87.5% 92.3%となります(ペイアウト率の誤りを修正・2023/06/10)。この数字は、この時代のメダルゲームとしてはかなり高い方です。そんな「優良機」ですが、ワタシは「ファロ III」をロケで見た記憶が僅かしかなく、それほど多くは普及していなかったように思います。
ところで、「ファロ III」の前には「ファロ」、「ファロ II」、「ニューファロ」の3機種があるのに、その後に発売されたこの機種がなぜ「III」と命名されたのでしょうか。フライヤーでも「”ファロ”シリーズ第3弾堂々登場!!」と謳っており、「ニューファロ」の存在は完全に無視されています。当時のセガに何があったのかはわかりませんが、「ニューファロ」がつくづく不遇な機械であることに同情の念すら湧いてきます。
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ファロシリーズは、初代こそ殆どすべてのメダルゲーム場に設置されたかと思われるくらい大ヒットしましたが、後継機でそこまで普及したものはなかったように思います。それでもセガはしつこくも、1985年にシリーズ5作目となる「ファロキング (FARO KING)」を発売しました。
ファロキングのフライヤーの表と裏。
「ファロキング」は、これまでずっと垂直に立てていた盤面を初めて水平にしたところが斬新とは言えましょう。しかし、非常にがっかりさせられる機械でした。
「ファロキング」では、ボールを表すランプにLEDが使われていましたが、1985年当時のLEDはまだ発達途上の技術でした。現在でこそ車のヘッドライトに使用されるほど強い光を発するLEDも、この当時のLEDは照度も輝度も低く、「ファロキング」の一つの円の中に仕込まれている5個のLEDは、点灯すればその光点は見えるものの、円全体を明瞭に発光させるほど明るいものではありませんでした。
しかしがっかりするポイントはLEDではなく、「ファロキング」の目の構成と並び方、そしてゲーム内容が「ファロ III」と全く同じものだった点です。「ファロキング」は、「ファロ III」を従来の例を破った新筐体に入れただけのものでした。しかもその筐体は、「ファロ III」が発売された同じ年に発売された「ルーレットキング」というメカ式のルーレットゲーム機の使い回しでした。
「ファロキング」の筐体のオリジナルである「ルーレットキング(1983)」のフライヤーの表と裏。裏面に記載されている筐体のサイズは、「ファロキング」と全く同じ。
「ルーレットキング」は、高温多湿の日本の気候では木製のホイールが反ってしまう障害が相次いだそうです。ついでに余談を付け加えれば、「ビンゴサーカス」(関連記事:セガのマスビンゴゲーム(3) ビンゴサーカス(Bingo Circus, 1989)とその後継機種)の回転盤が木製ではなく金属(アルミ)製だったのは、「ルーレットキング」での教訓があったからと聞いています。
「ルーレットキング」については別の機会に改めて言及することとして、「ファロキング」とは、邪推するなら「ルーレットキング」が思いがけぬ障害のために在庫が残り余った部材をなんとかするために既存の「ファロ III」を載せて売り出した「敗戦処理投手」だったのではないかと思えます。その勘繰りが正しいかどうかはもちろんわかりませんが、「ファロキング」も他の後継機と同じくあまり普及していた印象がありません。
(つづく)
ファロシリーズ、面白いですね。ファロⅢが83年ですか。私はSS機ピンボールが面白くなくなってゲーセンにほとんど行かなくなっていた頃だと思います。
ファロⅢはファロのままではまずいので何か新フィーチャーを追加しないと、という事でカラーマッチを追加したのでしょうか。これが独立に回っているとすれば、どの当たりも12回に1回は配当が倍になるのでペイアウト率がファロの13/12倍になる、と考えてしまうと90%を越えてしまいます。87.5%という数字はどの様に算出されたのでしょうか。
ファロキングはルーレットキングの筐体利用ではないかという所はすごく納得できました。なおプレイヤー対応部とルーレット表示部はファロⅢのものを流用してパネルを新設計した様に見えます。(でも大きさが合わないか?)
ファロキングとルーレットキングのフライヤー写真を比較すると前者の側面にはスリットを開けた2個の黒い四角が追加されています。これは筐体内の放熱用に思えるのですがなぜこんな位置にあるのでしょうか。もっと上部に取り付けた方が効果的なのに。
ルーレットキングはルーレットを物理的に再現してやるぞというセガの意気込みを感じさせます。しかもプントバンコで実現できなかったルーレットテーブルの再現と様々な賭け方をモニター画面を使って可能にしている所が素晴らしい。どうやってルーレットの1区画に落ち着いたボールを排除して次ボールをオートディーラーから打ち出すのか知りたいです。
ルーレットは0/00のアメリカンスタイルでもペイアウト率が36/38=94.7%と高くなりすぎるので4個のハズレ区画(ホイール写真では何が描いてあるのか分かりません。数字ではなさそうですが)を追加してペイアウト率を36/42=85.7%に調整している様です。本物と同様に0/00にも賭ける事が可能な仕様なのでしょうか。
フライヤー写真側面に見える1個の黒い四角穴は低い位置にあるので外気吸い込み用ファン開口部だと思いますが、排気口が見当たらないので反対側側面に排気口があったと思われます。しかしブラウン管カラーモニタ4個使いなので熱がこもりがちになって、ルーレット板の木材が湿気と温度変化で反ってしまったのかなと思いました。
それでは。
再調査したところ、確かに間違えておりました。原因は明白で、エクセルでまず初めに1個しかない30の目が12回出た時の払出数を計算し、他の目についてはその式をコピペしたのですが、その際に2から10までの目も30の目と同様1個ずつしかない式になっていたため、総払出数が実際よりも少なく出ていました。計算しなおしたところペイアウト率は92.3%になりました。この数字は少し高いので、ひょっとすると内周の停止位置は制御が入っていた可能性も感じます。いずれにせよ、全くお恥ずかしい限りです。本文は訂正しておきます。今後もお気づきの点がございましたらご指摘ください。
ルーレットキングのホイールには実際のルーレットにはないハズレの目が4個追加されていて、42のセグメントになっています。ハズレの4個には黒い星と赤い星の2種類が描かれていますが、赤黒のベットもハズレになっていたように記憶しています。
ルーレットキングの、おっしゃるスリットは吸気孔で、排気口は下にあるファンだと思われます。排気口の取り付け位置は、通常は背面や普通の人の背の届かない高い位置に取り付けられますが、センターピース構造で背面が無くいこの筐体で、中途半端に高い位置に排気口を付けると、プレイヤーや周囲の人に排気がかかったり、あるいは体などで塞がれてしまう可能性があるということでこんな位置になっていたのではないでしょうか。しかしそれがホイールが反ってしまう原因である可能性はあると思います。
ルーレットキングのボールの回収方法は残念ながらはっきり覚えておりません。ポケットの穴は底が抜けているので、回転盤が持ち上がっり、ボールが底面から回収口に落ちて行っていたような気がします。
カラーマッチ導入後のペイアウト率 : そうでしたか。私も内部制御をした可能性が高いと思います。もうマイコン制御でしょうから各プレイヤーのベット内容を見てメインの36区画のルーレット部にも制御をかける事が可能だったはずで、ペイアウト率は操作できたのではないでしょうか(フライヤーには未記載だけれどもオペレーターズマニュアルには記載があったりして)。
ルーレットキングのハズレ目 : 緑の地に黒い星と赤い星なのですね。星を赤黒に塗る意味は無いけれども違和感を少なくするためにそうしたのかもしれません。なお0/00賭けについては、モニタ上でカーソルを動かして好きな番号に賭けられるのだから0や00の所にもカーソルが動いて賭けられるのかな?と思ったのでした。
側面のスリット : スリットが見えるのはルーレットキングではなくてファロキングの方です。ファロキングで吸気スリットが追加されて黒い四角が排気ファンだとすると、ルーレットキングでも黒い四角が排気ファンだった可能性が高いと思いますが、そうだとすればどこから吸気して筐体上部の熱くなった空気をどうやって排気ファンまで導いていたのか。実機内部が見られたらいいのに、と思います。
ボール回収方法 : なるほど、本物の様なポケットではボールを出すのが大変だと思いましたがうまく考えられていますね。
それでは。
ルーレットキングでは、0と00の目にもベットできたように記憶しています。
シグマは確かにナチュラルを是とするマシンづくり(最もSigma Gamesの絡みで海外に売るんだから当然の話)でありましたが、末期に出した「DOWN THE RIVER」と「SEVENS WILD PLUS JOKER'S DOUBLE」は配当表と表面出現率では整合が取れなかったため、「蹴飛ばし」の制御を行っていると見られています。あと「COOL104」も1stの終盤では蹴飛ばすことがあったと聞いています(ポーカーは関係者証言あり、COOLは伝聞です)。cron(サミー協力時代のcron含む)はこれを踏まえて、デッキ選択率やジョーカー混入率で先に配分抽選を行うようなことをしているとも聞きます(ALL THAT JOKERなど)。
まあ、ペイ設計は表面上のバランスと分散をうまく作ることって難しいし、メダルゲームの場合は設定の問題もありましたから…。
「計算できる人がいなくなった」はあくまでも邪推であります。念のため。
「くすぐってもらわないと楽しめないプレイヤーが多い」は、理解できるところです。自分でどこに熱さがあるのかを理解できずにマシン自らが「ここが盛り上がりどころです!!」ってやっちゃうのは、まあ最近(2019年時点)ネバダでもスロットの一部で認められ始めたところではありますが、大山鳴動して鼠一匹の時の冷え方が半端ないので、善し悪しがあるというかトータルでは良しがないようにも思えます。いきなりスコンと大きい配当が告知も何もなしに停止する、その瞬間にサプライズとインパクトが有る、って考えのつくり手、日本では少ないものなあ。