かつて、「データイースト(DECO/デコ)」というゲームメーカーがありました。創業は1976年とのことで、確かに言われてみれば、日本でビデオゲームが発達していく過程のかなり早い時期から業界で活躍していたことを思い出しますが、過去記事「それはポンから始まったのだけれども(5) ポストインベーダーの頃」では、不覚にもこの会社の名前を挙げておくのを忘れてしまっておりました。
データイーストは、1986年にピンボールに参入したり、1996年には「スタンプ倶楽部」をヒットさせるなど、メカが伴うコインマシンにも手を出していましたが、本業はやはりビデオゲームメーカーだったと思います。今回は、そのデータイーストの、ワタシが知る限り唯一のメダルゲーム(注)である「オーシャンツウオーシャン」(Ocean To Ocean、1982? 1980)に絞って述べておこうと思います。
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オーシャンツウオーシャンのフライヤーの表と裏。
ワタシはこのゲーム機を初めて見たのは、おそらく1982 1980年頃、自由が丘の「プリンス」というゲームセンターでした。そしてこれは、ワタシが初めて見る「9リール8ライン」のビデオスロットでした。
「9リール8ライン」と言えば、1983年にsigmaが発売した「スーパー8ウェイズ」(関連記事:ワタクシ的「ビデオポーカー」の変遷(5) sigma、ネバダのゲーミング市場に参入)
があまりにも有名ですが、実はそれよりも先に、データイーストが同コンセプトのゲームを出していたことはどれだけ知られているでしょうか。
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sigmaの「スーパー8ウェイズ」。発売開始は1983年で、オーシャンツウオーシャンよりも少なくとも1年程度は遅く出ている。
当時のデータイーストに、メダルゲームを開発するノウハウがどの程度あったのかは全くわかりません。米国バーリー社の筐体を流用しているように見受けられるところから、あまり資本力のない、どこか野心を持つ無名のメーカーが作ったものをデータイーストの名前で売り出したという可能性も感じますが、今のところその真相を知る資料は私の手元にはありません。
「オーシャンツウオーシャン」の最大のメダル払い出し枚数は、全てのリールに「7」が揃った場合の6800枚とされていますが、これは、プレミアムというものが殆ど無いと言っても良いオッズです。すなわち、「7の3並び 300×8ライン=2400」+「ビンゴ役 200×21種類=4200」+「ジャックポット役 200×1=200」=6800という計算です。
これに比べてsigmaの「スーパー8ウェイズ」は、全て「7」が揃うと10万枚を謳っており、プレイヤーに与えるインパクトは文字通り桁違いです。こんなところからも、データイーストのメダルゲームのセンスには疑問を覚えます。
「オーシャンツウオーシャン」は、いくらかのロケーションで見られる程度には普及したように思いますが、データイーストがその後も継続してメダルゲームを開発するという事はありませんでした。
(注)ひょっとしてデータイーストは、「ジャックロット」(関連記事:メダルゲーム「TV21」(ジャトレ・1977)の謎)というメダルゲームを扱っていたような覚えも無きにしもあらずなのですが、確信が持てません。どなたかご存知の方がいらっしゃいましたらご教示いただけますようお願い申し上げます。