オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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半世紀を経て正体が明らかになったゲーム「ジャンパー」(三共遊園設備)

2024年08月04日 19時52分51秒 | ピンボール・メカ

1960年代から1970年代に作られ、ワタシが小中学生の頃に商業施設の屋上や遊園地などで遊んだ国産AM機を今調べようと思っても、この時代の資料は極めて乏しく、いまだにタイトルやメーカーが特定できないものが少なくありません。

ワタシは拙ブログを始めて間もない2016年9月にアップした記事、「商業施設の屋上の記憶(2) 目黒近辺」の中で、1972年~74年ころに遊んだ、名称不明のゲーム機の特徴を以下のように述べています。

手前のボール発射装置からボールを発射し、奥にセットされている人の顔の形をした的の目または口に入れるというもので、キャビネットには『これはオモシロイ!』という煽り文句と、『実用新案申請中』と言う掲示があった

ワタシは、間接情報は覚えているのに肝心のタイトルがまるで思い出せないことが悔しくて、このゲーム機に関する資料を探し続けてきました。そうして現在までに唯一見つかっていたものが、1971年9月に刊行された「’72コインマシン名鑑」でした。その66ページに掲載されている「ジャンパー(三共精機)」は、その筐体の形状やボールの発射ボタンが3個ある点はワタシの記憶に一致しますが、しかし標的の形状はワタシが探しているものとは明らかに異なります。一方で、「これはオモシロイ!」の煽り文句の一部と思しき文字が見えており、全く無関係というわけでもなさそうです。

’72コインマシン名鑑の66ページに記載されている「ジャンパー」と称するゲーム。標的の形状がワタシの記憶と明らかに異なるが、記憶にあるゲーム機と重なる部分が多い。

おそらく、コインマシン名鑑の編集時にメーカーが提出した写真が製品版とは異なっていた可能性が考えられますが、これはあくまでも推測に留まり確定した事実とは言えないので、これで結論とする事には不満が残ります。

ところが先週、まさにワタシが追い求めていた機械の画像が見つかりました。今はSNSが発達し、同じ趣味を持つ方々の投稿から新たな知識や資料を得る機会も増えました。その画像もX(旧ツイッター)に投稿されたものです。ワタシは投稿者にメッセージを送りブログへの使用の可否を尋ねたところ、ありがたくも快諾いただきました。

SNSにアップされていた「ジャンパー」のフライヤー画像。


フライヤーの部分拡大。ワタシの記憶と違って、「これはオモシロイ」には「!」は付いていなかった。また、「実用新案申請中」と記憶していた部分には「特許」と記されている。

ほぼ半世紀にわたって謎だった機種は、おかげで三共遊園設備の「ジャンパー」であることが判明しました。ただ、「'72コインマシン名鑑」の「ジャンパー」は「三共精機」製とされています。「三共精機」は、1971年に「三共遊園設備」から分離独立したもの(関連記事:「三共」についての備忘録(1) 三共以前の三共)であることから、「72コインマシン名鑑」が刊行された1971年9月20日時点で「三共精機」は既に分離独立を果たしており、三共遊園設備時代に開発販売が開始された「ジャンパー」の扱いが移管されていたことがわかります。

「ジャンパー」の画像をご提供くださったのは「ぜくう(@Area51_zek)」さんと言う方で、ワタシは面識はありませんが、これまでにもSNSを通じてたびたび資料をご提供いただいています。AMゲームの歴史研究家の間ではよく知られており、共著を含んで著書もいくつもありますので、オールドゲームに関心がある方は是非ご注目されることをお勧めいたします。なお、ぜくうさんの著書はAMAZONからも購入できます