映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

2018年04月06日 | 実話系

監督ジョー・ライト
ナチスの侵攻が激化する中で発足した英国の新内閣、
その首相となったウィンストン・チャーチルは徹底抗戦派であったが、
閣僚は和平派、なおかつ兄王退位の件で遺恨の残った
国王ジョージ6世の態度は冷たく、孤立無援の状態だった。
ヨーロッパ各国がナチスに降伏していく状況で、
ダンケルクの撤退作戦を敢行するチャーチルだが、
ナチスとの和平か、内閣崩壊かの選択を迫られる。

アカデミー主演男優賞をとったゲイリー・オールドマンの演技、
とくに演説を聴くために字幕版をおすすめします。
チャーチルはスピーチが巧みだったそうで、
強弱とか緩急とかよく練られているのが分かります(英語ができなくても)。
メイクもすごくて、目と口はゲイリー・オールドマンなんだけど、
他は全然違うので、ちょっと気持ち悪いくらいでした。

ノーラン監督の「ダンケルク」とつながりが強い内容ですが、
両方を見ると神の視点みたいで面白いです。
(ダンケルク後の市民の暮らしは「人生はシネマティック!」で)
といっても、この映画は戦争の犠牲に涙を流す乙女とか、
チャーチルを母のように励まし叱咤する美しい妻、
祖国を侵略せんとするナチスへの怒りで一丸となる市民などの
一種甘さがあるのに対し、「ダンケルク」は無糖だったので、
映画のカラーはかなり違いますけど。

内容ばれ

しかしダイナモ作戦進行中でもまだ
和平と抗戦で英国政府内がもめてたとは知りませんでした。
あと、40万人を助けるために死んでくれと
言っているに等しいカレーへの命令も。えぐいな。
現在の時点からはチャーチルの判断は正しいと言えますけど
一歩間違えたら国民を皆殺しにした首相という
最悪の汚名を受けていた可能性もありますね。
あとペンタゴン・ペーパーズを見たばかりなので、
正しい戦況を隠して国民の戦意を高揚させるのは
うーん、当時の倫理としてはギリOKか?などと考えたり。

政治家ではない人間としてのチャーチルですが、
短気ですぐ怒鳴って失礼なんだけど、でも妻には弱く
動物好きで、落ち込むと弱気になって引きこもってしまう、
しかしスピーチになると鬼神の憑いたように言葉を操るという、
妙に魅力的なキャラクター造形でした。
そのへんはさすがゲイリー・オールドマン、隙がないです。
余談ですが、
坊ちゃん育ちのチャーチルが、裏ピースの意味が下品なものである事を知らず
ビクトリーサインだと思って新聞の写真でやってしまうというエピソードがありましたが、
この裏ピース、一体西暦何年頃からあるんでしょうね。


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「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」

2018年04月05日 | 実話系

スティーヴン・スピルバーグ監督
1967年。国防長官は軍事アナリストを戦地に派遣して
ベトナム戦争の状況を詳細に分析させた膨大な文書を作成させた。
多くの武器人員を投入しても戦況は全く好転していない旨を文書は指摘していたが、
敗戦の選挙への影響を恐れた政治家たちによって、それは闇に葬られた。
1971年、文書の作成者の1人がニューヨークタイムズに機密文書のコピーを流し、
またワシントン・ポストも独自のルートから文書を入手するが、
先に記事を掲載したタイムズが政府から記事差し止めの訴訟を受け…というあらすじ。

当時のワシントン・ポストは社主が女性で、メリル・ストリープが演じます。
新聞社は社主であった父親から彼女の夫が受け継ぎ、
その夫が亡くなってメリルがその地位につきますが、
家庭のことと社交は得意でも、経営は不慣れな彼女は
練習してきた発言も勇気がなくて結局無言で会議を終えたりします。

社主メリル・ストリープと編集部責任者トム・ハンクスの
やり取りがメインなので、超安定感あります。
お互いの芝居をアシストするキャッチボールが上手い。

ラストばれ

報道機関は政府広報に成り下がってはいけない、
国家安全保障を侵害したとしても
国民の知る権利は守られるべきである、というカタルシスと
政治も経営も何も知らないお飾りの女社主と一部から侮られていたメリルが
最後に社運を賭けた、そして正しい決断を下すという2重のカタルシスがあります。

最後、裁判所から出たところでメリルがスピーチをしたりすると
ものすごくエンタメ的だったでしょうけど、盛るのをやめて現実に沿ったのでしょう。
観衆の女性たちから感謝の視線を送られるのにとどめた。上品な演出だと思います。

ラスト、正直に言うと私はウォーターゲートより
ベトナム戦争があとだと思いこんでいたので、
あのドアのガムテを見て、突然タイムリープものになったと思って軽く混乱しました。
これでちゃんと覚えられました。恥ずかしい…。


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「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」

2018年04月04日 | SF映画

監督脚本リュック・ベッソン。
原作はフランスのコミック「Valerian et Laureline」。
「フィフス・エレメント」的な、懐かしいような新しいような、
いかにもベッソン節のSF映像美が楽しめます。
様々な種族が共存する2740年の宇宙で
ヴァレリアン少佐とローレリーヌ軍曹は
要人警護の任務中、守護対象を誘拐されてしまう。
要人を追跡した彼等はとある種族の計画に巻き込まれ…というあらすじ。

冒頭が最高です。
あとヒロインが物凄くかわいい。
顔が綺麗なだけではなく、鬼瓦みたいな表情も厭わないのが素敵でした。
2人で武器を振り上げて突進するところ好きです。

しかし女の子好きでナンパな少佐と、
気が強いけど真面目でキュートな女軍曹が、
喧嘩しながらもピンチの時は女の子が助けられて
やっぱり大スッキ…みたいな感じといい、
ゲストキャラクタの扱いとか、
ものすごく20世紀終わり頃のスペースオペラっぽい。
ベッソン監督、ここ数年くらいエンタメ新作映画をご覧になってないんじゃ…。

内容ばれ

いや本当、バブルさんが唐突に出てきて用が済んだら唐突に死ぬの、
マジカルニグロ問題(有色人種や同性愛者など少数者が
主人公のためにひたすら尽くしまくる都合のいい存在としてしか物語に参加できない)
で議論している人々が気絶するような物凄さだった。

ヴァレリアン役のデハーンさんはものすごく若者に見える大熱演でした。
いつの間にか32歳になっていらっしゃったけど、20代初めに見えたよ!
エリザベス・デビッキさん(声)とかイーサン・ホークさんとか豪華役者さんが
比較的意味なく使われているのは贅沢な遊びだなと思いました。

邦題は、やや盛り気味。



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「トレイン・ミッション」

2018年04月03日 | サスペンス映画

リーアム・ニーソン主演のサスペンスです。
長年勤めた保険会社を定年前にクビになってしまった主人公は
失意のままいつもの通勤電車に乗るが、
その電車に乗っていた見知らぬ女から、
普段この電車で見掛けない客で、終着駅が目的地の人物を探し出してほしい。
報酬は25000ドルプラス75000ドル、という話を持ちかけられて
つい依頼を受けてしまう。
しかし調査の邪魔になる人間は殺され、家族を人質にとられるに至り、
リーアムは事態の異常さに気付き、反撃を始めるというあらすじ。

昨日の「レッド・スパロー」と同じく、失業したら変な人が来て、
変な仕事やらされたプロットその2です。
リーアム・ニーソンがエロエロ学校にやられて性技を仕込まれ、
性接待をやらされるニーズもあると思いますがそれはまあいいとして
アメリカの人もロシアの人も貯金をすると爆発して死ぬのだろうか…。
「レッド・スパロー」のバレリーナは母の医療費が嵩んだかもだけど、
この映画のリーアムは2008年のリーマンショックで
資産を吹っ飛ばしたという設定で、おそらく投機には懲りただろうから
それから妻と必死に働いたお金はどうなったのだ。
失業した途端翌月の教育費の支払いが滞るというのは一体どういう。
生活レベルを落として貯蓄に励んではだめなのか…?
アメリカの大手企業は落ち度がなくても社員を即座にクビにできるの…?
退職金が現物支給って、規定とかはないのか…?失業保険は…?

それにしてもリーアム・ニーソンの家族を人質にとるとは、
映画とか見た事ないのかあの悪役は…!
このリーアム・ニーソンも元刑事なので、駄目だろこれという気しかしない。

冒頭、この主人公は家族のこととても大切にしてますよー
って映像が流れるのですが、わりとセンス良くて好きです。
喧嘩しているシーンもちゃんとあったり。
主人公が「愛してる」って言って、妻が「うーん、好きかも?」って
ふざけて返事してたり。

犯人ばれ

リーアムの元同僚の人、どこかで見た顔だと思ったら
死霊館のウォーレン夫さんかあ!
そしてリーアムの妻役の人はウォーレン妻なので、なんだか死霊館ですね。

悪の組織も、できるだけ人間を殺したくなくて予算数千万円かけたけど、
リーアムが言う事聞かなかったので、新聞おじさんとかFBIの人とか、
関係ない人がわりと死んだ。でも仕方ないね。人選ミスだもの。

あの裏切り男は、7年一緒にいて
真相を知ったリーアムがどういう行動をとる性格なのかまるで分かってなかったし、
リーアムはリーアムで、
裏切り男が実はどういう性格なのかまったく知らなかったという、
ちょっとしょっぱい結末。

脱線してからが結構長くてびっくりした。





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「レッド・スパロー」

2018年04月02日 | サスペンス映画

ボリショイのプリマを務める才能あるバレリーナであるヒロインは、
公演中の負傷により、バレエの道を断たれる。
住居や病身の母親の治療費などをバレエ団に頼っていた彼女は
突然生活に困窮することになるが、役人である叔父から、
とある高官を籠絡する仕事を頼まれる…というあらすじ。

ジェニファー・ローレンス主演です。
ロシアの話ですが、お約束により全員英語で会話します。
普通に暮らしていた美女があれよあれよといううちに転落して、
ハニトラ要員育成学校のようなところに放り込まれますが、
そこがすごい。
生徒たちの前で全裸になれと命令されたり、
犯罪者(小児性愛者?)を連れてきて口淫しろと命令されたり、
兵士たちを性接待しろと命令されたり、
またその翌日に各人の接待の映像をみんなで見て反省会をしたり。
性技を仕込まれる場であると同時に自尊心を折る場でもあるんですよね。
性暴力シーン、血の出る拷問シーンもあるので平気な人向け。
暴力と性と支配をミックスしたやつに興奮する人は大好物かもです。
もうちょっとアクション要素と、頭脳攻防多めだと思ってたけど違ったので
私向きじゃなかった…。

オチばれ
もぐらは火サス方式で分かりますが、
CIAのひとたちがものすごくドジっ子で、
そのCIAの人をヒロインが、特に根拠なく超信頼しちゃうので
大丈夫!?って心配になりました。
(まあ作者さんがCIAの人らしいのでどうしてもそうなるかな…)

でも美しい姪を、叔父が子供の頃から支配したいと狙っていたとか、
最初の仕事でいきなり暴力的に挿入されたり、
学校のシャワーブースで同級生に襲われたり、
現場に出たら現場の責任者のオッサンが
「報告書に悪口書かれたくなかったら分かってるな?」って身体を要求されたり、
うーん、なんかネットのエロ漫画広告みたいだな…?っていうか、
仕事のハニトラより内部のエロエロセクハラの方が多くない?
ロシアの諜報組織効率悪くない?
(ヒロインもエロとんちで切り抜けますが…)

全裸の女性が衆人環視の中で大股を開いて
「とっとと入れなよ。まだなの?グズ?役立たず?」
って煽ってくると、それがどんな美しい人でも
人種に関係なく多くの男性は元気がなくなってしまうものなのかな…
それってどういう理由による本能なんだろうって考えてました。
気性の荒いメスを孕ませても、子が成長する前に殺してしまうからとか…?
あれたぶんヒロインが怯えたり泣いてたりしたら全員に見られていても
お元気だったと思うんですよ。

ラストの逆襲はさすがにちゃんとしてました。
すごい親切に過去シーンのフラッシュバックも入ってて分かり易かったです。



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